世界経済回復の混乱
IMF Blog, January 25, 2022
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- 世界経済回復の混乱
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- Authors: Gita Gopinath
- Published: January 25, 2022
概要と現状認識
- 世界経済は回復し続けているが、パンデミックが3年目に突入した今、複数の課題に直面している。
- オミクロン株の急拡大により多くの国で再び移動制限が課され、労働力不足が生じている。供給の混乱は高インフレの一因となっている。
- 一部の課題は一過性の見込みであり、オミクロン株はデルタ株に比べて重症化率が低いと考えられ、感染者数は比較的早期に減少へ転じる見込みである。
- IMFの最新の「世界経済見通し(WEO)」では、オミクロン株が2022年第1四半期の経済活動に重くのしかかるが、第2四半期にはその影響が収束し始めると見込む。
成長見通しと主要要因
- IMFは今年の世界経済成長率が4.4%になると予測している。
- 前回予測からの引き下げ幅は0.5%ポイントであり、主な寄与は米国と中国の下方改定である。
- 米国:引き下げは「ビルド・バック・ベター(よりよき再建)」の法制化見通しの暗化、金融緩和策解除の前倒し、供給不足の継続を反映。
- 中国:不動産部門の長期低迷と民間消費の回復が予想より弱いことを反映。
- 供給の混乱はドイツなど他国でも下方改定をもたらしている。
- 世界経済成長率は2023年に3.8%まで鈍化すると見込まれている。
- 2021年10月のWEOからの修正は0.2%ポイントの上方修正であり、これは成長の足かせが解消した場合の持ち直しを大きく反映している。
物価圧力とインフレ見通し
- 物価圧力の上昇が長期化する見込みを受け、IMFは先進国と新興市場国・発展途上国の両グループにおける2022年のインフレ予想を引き上げた。
- IMFは需給の不均衡が2022年の間に緩和されると想定している。
- 想定の要因:需要が財からサービスへと徐々にバランスを取り戻すこと、異例の政策支援が解除されること、産業予測に基づく供給状況の改善。
- 先物市場からは、2022年のエネルギー・食料価格はこれまでよりも緩やかな上昇率で推移することが示唆される。
- インフレ期待が安定し続けるという想定のもとで、インフレは2023年に収束する見込み。
世界規模の取り組み(ワクチン等)
- パンデミックの収束には世界規模の取り組みが不可欠であり、ワクチン、検査、治療(新開発の抗ウイルス薬を含む)へのアクセスを広く整備する必要がある。
- 現状のワクチン接種状況:低所得国ではワクチン完全接種者が人口に占める割合が4%に過ぎず、高所得国の約70%に遠く及んでいない。
- 行動指針:
- 低所得発展途上国では予測可能なワクチン供給を図るとともに、受け入れ能力の拡大や医療インフラの改善を支援すべき。
- ACTアクセラレータ(Access to COVID-19 Tools Accelerator)の不足資金である234億ドルを拠出し、技術移転のインセンティブを高め、重要な医療ツールの世界生産分散をアフリカを中心に加速させることが急務である。
政策調整:財政と金融
- 国レベルでは、基調的なインフレ圧力と回復の程度、政策に残された余地など各国固有の事情に合わせて政策を調整すべきである。
- 財政政策と金融政策は経済目標の達成に向けて協調させる必要がある。政策は機動性をもたせ、今後の経済データに適応させるべきである。
- 多くの国では政策的余力が限られており、一部の国は力強い回復局面にあるため、今年はほとんどの国で財政赤字が縮小すると予想される。
- 財政は保健部門を優先し、給付が必要な場合には最も深刻な影響を受けている層に適宜対象を絞るべきである。
- 中期的な財政枠組みにはすべてのイニシアティブを織り込み、公的債務が持続可能であり続けるよう信頼性のある道筋を示す必要がある。
- 金融政策の指針:
- 物価圧力が広範に及んでいる場合や高インフレが定着するリスクがある場合には、異例の金融政策支援を解除すべきである。
- いくつかの中央銀行では物価圧力に備えて既に利上げが開始されている。
- コア・インフレ圧力が抑えられ、回復が不十分な場合には、緩和的な金融政策を維持してもよい。
- 政策転換に際しては市場の反応に秩序を保つため、引き締めに向けた政策転換を適切に伝えることが肝要。
新興市場国・発展途上国への特有の課題
- 金利上昇と世界的な金融引き締めに適応する必要がある。
- 大規模な外貨建借入や外部資金調達ニーズを抱える国は、可能な範囲で債務返済期限を延長し、通貨ミスマッチを抑制すべきである。
- 為替レートの柔軟性は必要なマクロ経済的調整に資する可能性がある。
- 一部の国では為替介入や一時的な資本フロー管理措置を講じる必要があるかもしれない。
- 低所得国の債務状況:低所得国では60%の国が既に過剰債務に陥っているか、今後陥るリスクが高い。
- 金利上昇は債務返済をさらに困難にする。
- G20の共通枠組みは債務再編を迅速に処理できるよう改善する必要があり、G20の債権国や民間部門の債権者は債務再編の交渉が行われている間は債務返済を一時的に猶予すべきである。
リスク要因とシナリオ
- 下向きリスクが全般的に優勢である。主なリスク要因:
- 致死率の高い変異株の出現により危機が長引く可能性。
- 中国のゼロコロナ戦略が世界の供給混乱を悪化させる可能性。
- 中国の不動産部門の金融ストレスが広く経済に波及すること。
- 米国で予想以上に高インフレが進行すれば、米連邦準備理事会による積極的な金融引き締めを誘発し、世界金融環境を急速にタイト化させる懸念。
- 地政学的な緊張や社会不安も見通しのリスク要因。
社会的損失・長期課題(貧困・教育・気候)
- 貧困:2021年に極度の貧困状態で暮らす人の数は、パンデミック前のトレンドと比較して約7000万人増加したと推定され、貧困削減の進歩を数年分後退させた。
- 死亡と経済損失:世界の累計死亡者数はパンデミックが3年目に突入した現時点で550万人に達し、それに伴う経済損失はパンデミック前の見通しと比較して2024年に13.8兆ドル近くまで膨れ上がる見込みである。
- 教育:アフリカを中心に児童が被った学習機会の大きな損失を取り戻すには政策イニシアティブが必要である。平均すると、中所得国と低所得国では高所得国よりも国全体の学校閉鎖日数が93日多かった。
- 気候:2050年までに二酸化炭素の正味排出ゼロを達成するには、カーボンプライシング、グリーンインフラへの投資、研究助成金、金融イニシアティブ等を通じてより大規模な取り組みが必須である。
政策の姿勢と国際協力
- 政策当局者は今後の経済データを幅広く注視し、不慮の事態に備えつつ、短い通知期間で政策変更を伝達・実施する準備を整えるべきである。
- 同時に、今年をパンデミック収束の年とすべく、大胆かつ効果的な国際協力を実行することが求められる。
出典: IMF 日本語ページ「世界経済回復の混乱」