インフレの高騰で中央銀行が困難な道のりに直面
IMF Blog, August 2, 2022
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- インフレの高騰で中央銀行が困難な道のりに直面
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Bibliographic details
- Authors: Tobias Adrian, Christopher Erceg, Fabio Natalucci
- Published: August 2, 2022
概要
- 著者: トビアス・エイドリアン, クリストファー・エルセグ, ファビオ・マッシモ・ナタルッチ
- 日付: 2022年8月2日
- 主旨: パンデミックとロシアのウクライナ侵攻による供給ショック等でインフレ率が数十年ぶりの高水準に上昇。中央銀行はインフレ期待の急上昇や信認の損失を避けるため、より早急かつ断固とした行動が必要であるとの分析。
国債の実質金利(インフレ調整後金利)の上昇と市場見通し
- 国債の実質金利は年初来、大幅に上昇。
- 短期実質金利は依然としてマイナス。
- 米国の実質金利フォワードカーブ(市場価格が示唆する1年先における1―10年後の実質金利の道筋)は、曲線全体に渡り0.5%から1%上昇。
- FRB の四半期見通しは実質中立金利を0.5%程度と示唆。
- FRB の見通しで今年と来年のGDPは共に1.7%増と予想。
- ユーロ圏(ドイツ国債を代表)の実質金利フォワードカーブは依然大幅なマイナスだが上方シフトしている。
インフレ低下を想定する合理的なベースラインシナリオの要因
- 金融と財政の引き締めがエネルギーと非エネルギーのモノ双方の需要を冷やす。
- 金利に敏感な耐久消費財の需要が特に抑制されることでモノの価格上昇ペースが鈍化し、一次産品市場に混乱がなければエネルギー価格を押し下げうる。
- パンデミック影響の和らぎにより供給側圧力が緩和される見込み。
- 経済成長の鈍化がサービス部門のインフレを押し下げ、賃金伸びを抑制する。
上振れリスクが高いとの評価(重大なインフレリスク)
- インフレ率の上昇は中央銀行や市場の予想を超えた。
- インフレは中央銀行の想定よりも早く低下する可能性もあるが、現状では上振れリスクが大きく傾いているとの指摘。
- サービス(住宅の家賃から個人サービスまで)のインフレ率は高止まりしており、すぐには下がりにくい。
- 名目賃金の急速な伸びが続くと、単位労働コストの増加が価格に転嫁される「影響の第2弾」が発生し、持続的インフレと期待インフレ率の上昇につながるリスク。
- エネルギー価格の再急上昇や地政学的緊張の悪化があれば、より長期に高インフレが続く可能性。
- 市場ベースのデータは、米国とユーロ圏、英国で今後数年間にわたり3%を超えるインフレ率が持続する可能性が高いことを示唆。
- 家計調査(米国とドイツ)では、国民は向こう1年間で高いインフレ率を予想しており、今後5年間で目標をはるかに上回る可能性がかなり高いと認識している。
より強力な引き締めが必要になるシナリオとその影響
- 上振れリスクが顕在化し高インフレが定着すると、インフレを引き下げるコストは著しく高くなる。
- その場合、中央銀行は断固とした行動で経済を冷やすためにより積極的に引き締め、失業率は大幅に上昇する可能性。
- 流動性が乏しい兆しがある中で政策金利の引き締めが加速すると、リスク資産価格がさらに急落し、株式や信用、新興国資産へ影響が及ぶ可能性が高い。
- 金融環境のタイト化が無秩序となりうる点、金融システムの強靭性試験となり、新興国市場に特に大きな負担をかけるリスク。
- 現時点では物価の安定回復に対する国民の支持は強いが、経済コストと雇用コストの上昇により支持が弱くなる可能性もある。
政策的示唆(結論)
- 物価の安定を回復することは極めて重要であり、持続的な経済成長の必要条件である。
- 1960年代と1970年代の高インフレ期の教訓:物価抑制の措置が遅れると、インフレ期待を再安定化させ政策の信頼性を回復するための引き締めははるかに痛手を伴うものになる。
- 中央銀行は過去の経験を念頭に置き、インフレ期待の抑制と中央銀行の信頼性維持のために断固たる行動を取ることが重要。
出典: トビアス・エイドリアン、クリストファー・エルセグ、ファビオ・マッシモ・ナタルッチ(2022年8月2日)