インフレ期待の管理がいかにソフトランディングの達成に役立つか
IMF Blog, October 4, 2023
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- Authors: Silvia Albrizio, John Bluedorn
- Published: October 4, 2023
概要
- 次第にインフレ期待がインフレ・ダイナミクスの原動力となりつつある。
- 金融政策枠組みの改善により、インフレ期待を形成する情報提供を向上し、それによってコストを抑えつつインフレ抑制を実現することに貢献できる。
- 昨年、インフレ率は世界中で数十年ぶりの高水準に達した。総合インフレ率は着実に低下しつつある一方、食料とエネルギーを除いたコア指標は多くの国でより粘着的であることが判明しつつあり、賃金の伸びも上向いている。
インフレ期待の動向と重要性
- 専門家予測調査は、12か月先のインフレ期待(短期期待)が先進国でも新興市場国でも2021年に着実に上昇し始め、その後、現下の物価上昇が勢いを増す中で、昨年加速したことを示している。
- 5年先のインフレ期待は安定的に推移しており、平均水準は中央銀行の目標付近にアンカーされている。
- 直近では、短期のインフレ期待も峠を越え、緩やかな下降軌道へのシフトを開始したように見える。
- IMFの最新の統計分析によれば、2021年および2022年初頭のインフレショックが昨年末に解消し始めてからは、インフレは短期の期待によってますます説明されるようになっている。
先進国と新興市場の差異(定量的所見)
- 先進国では、短期インフレ期待が1%ポイント上昇するごとにインフレ率が0.8%ポイント上昇する。
- 新興市場国では、転嫁は0.4%ポイントにとどまる。
- 平均的な先進国では現在、短期期待がインフレ・ダイナミクスの主要な原動力となっている。
- 平均的な新興市場国では期待の重要性が増しているものの、過去のインフレの方が依然として関連性が大きい。
学習様式(前向き学習者と後ろ向き学習者)の政策的含意
- 人々が将来を判断する際に過去の経験を重視する場合(後ろ向きの学習者)、インフレ見通しに関する情報が乏しく、中央銀行のコミュニケーションの明確さや信頼性が低いことが影響する。
- 新たなモデルを用いたシミュレーションの示すところ:
- ある経済において後ろ向きの学習者の割合が大きい場合、政策引き締めが短期のインフレ期待とインフレ率に与える抑制効果は小さくなる。
- その結果、中央銀行はインフレ率を同程度引き下げるためにより大幅な引き締めを余儀なくされる。
- 後ろ向きの学習者の割合が大きい場合には、インフレ期待とインフレ率の引き下げを実現するコストが高くなる。
金融政策枠組みとコミュニケーション改善の役割
- 中央銀行は、金融政策の独立性・透明性・信頼性の向上を通じて、また、より明確かつ効果的なコミュニケーションを行うことにより、インフレ期待がより前向きになるよう働きかけることが可能である。
- そうした改革は、人々が中央銀行の政策対応とその経済的影響を理解するのに役立ち、経済における前向きの学習者の割合を高める。
- 新モデルによるシミュレーションは、金融政策の枠組みとコミュニケーションの改善がインフレ率とインフレ期待の低下に必要なコストの削減にいかに役立ち、中央銀行によるソフトランディング達成の可能性が高まるかを示している。
- 中央銀行がコミュニケーションを改善する具体策の一つは、自らの目標と行動に関して、関係する受け手に合わせた簡潔なメッセージを繰り返し発信することである。
実務上の結論
- 金融政策枠組みの改良と対象に合った新しいコミュニケーション戦略の策定は、インフレ・ダイナミクスの改善を助けるが、時間がかかるか実施が難しい可能性がある。
- これらはより伝統的な金融引き締め対応を補完するものであり、インフレ率を適時に目標に戻す上では引き締め対応が引き続き鍵となる。
シルビア・アルブリジオ, ジョン・ブルードーン, 2023年10月4日