「より高くより長く」の金利環境でひっ迫する借り手 増える
IMF Blog, October 10, 2023
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- Authors: Tobias Adrian
- Published: October 10, 2023
金利上昇の現状
- 世界の中央銀行は、2年に及ぶインフレ抑制キャンペーンを通じて数十年ぶりとなる一連の大幅な利上げを実施。
- 2021年末以降、先進国では平均約400ベーシスポイント、新興市場国では約650ベーシスポイント金利を引き上げた。
- 一部の国(米国や欧州の一部)ではコアインフレ率が高止まりしており、主要中央銀行は「金利をより高い水準でより長期にわたって維持する」可能性がある。
借り手の債務返済能力(信用リスク)の悪化
- 借入コスト上昇はインフレ抑制の意図された結果だが、既に財務的に不安定な借り手の脆弱性を増幅させ、デフォルトの急増につながるリスクがある。
- 企業、個人ともに「バッファーの侵食」が進行中。
企業の状況とリスク要因
- パンデミック中の財政支援により現金バッファーを保ってきた企業も、長期的な高金利下で利益の減少と債務返済コスト上昇によりバッファーを取り崩している。
- 先進国と新興市場国の双方で「かろうじて利払いを行うだけの現金しかない中小企業」の割合が増加。
- 財務が脆弱な企業のいるレバレッジド・ローン市場でのデフォルトも増加傾向。
- 来年、5.5兆ドル以上の企業債務が返済期限を迎えることが、リスクを悪化させる可能性が高い。
家計・不動産・政府への影響
- 家計:
- 先進国では、過剰貯蓄が昨年初頭のピーク水準(対GDP比4~8%)から着実に低下。
- クレジットカードや自動車ローンの延滞が増えている兆候。
- 住宅・商業不動産:
- 住宅ローン金利が大幅上昇し、貯蓄を侵食して住宅市場を圧迫。
- 変動金利ローンが主流の国ほど、金利上昇の影響で住宅価格下落幅がより大きい傾向。
- 商業用不動産は資金調達源の枯渇、取引の減少、デフォルト増加によりストレス。
- 政府:
- フロンティア市場国や低所得国はハードカレンシー建て借入が困難化。ハードカレンシー建て債券の表面利率が以前よりかなり高くなっている。
- 最近の先進国での長期金利高騰は、政府債務懸念が低所得国に限定されないことを示す。
- 主要新興市場国はファンダメンタルズと財務状況が比較的良好だが、外国からのポートフォリオ投資は鈍化。中国では不動産部門の問題で数か月間に相当量の外国投資が流出。
波及効果と市場の反応
- 多くの投資家はソフトランディングを見込んでおり、概して健全な株式・債券市場とともに金融環境が緩和されている様子。
- 楽観論のリスク:
- 緩和的な金融環境がインフレを再燃させる可能性。
- 外的ショック(ウクライナ戦争の激化、中国不動産市場のストレスなど)が発生した場合、金利が急激に引き締められる恐れ。
- 急激な金融環境の引き締めは、信用リスク上昇に直面している脆弱な銀行を圧迫する。
- いくつかの国の調査は、借り手リスク上昇を主因として銀行貸出が既に減速していることを示唆。
- 高インフレ・高金利下で世界経済が景気後退に陥るシナリオでは、多くの銀行がかなりの自己資本を失う可能性がある。
- 銀行の時価総額がバランスシート価値を下回る場合、投資家と預金者が銀行の将来性を精査し、脆弱な銀行の資金調達問題が生じる懸念。
- ノンバンク金融仲介(ヘッジファンド、年金基金など)でも脆弱性が現れている。
政策的示唆・推奨行動
- 中央銀行は断固としてインフレ率を目標に戻す取り組みを継続すべきである(持続的な経済成長と金融の安定は物価の安定なしには実現不可能)。
- 金融の安定性が脅かされる場合、政策当局者は迅速に流動性支援制度やその他のツールを活用し、急性ストレスの軽減と市場の信頼回復を図る必要がある。
- 世界経済にとっての健全な銀行の重要性を踏まえ、金融セクターの規制・監督を一層強化することが必要である。
出典: https://www.imf.org/ja/blogs/articles/2023/10/10/higher-for-longer-interest-rate-environment-is-squeezing-more-borrowers