新時代に突入する世界経済
IMF Blog, April 22, 2025
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- 新時代に突入する世界経済
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- Authors: Pierre-Olivier Gourinchas
- Published: April 22, 2025
概要と現状認識
- 大半の国が過去80年にわたって身を置いてきた世界経済システムがリセットされつつあり、新たな時代に移行している。
- 既存のルールに異議が唱えられる一方で、新しいルールはまだ明らかになっていない。
- 1月下旬以降、米国は立て続けに関税を発表。対象は当初カナダや中国、メキシコ、重要セクターだったが、4月2日にはほぼすべての国が対象となった。
- 米国の実効関税率は大恐慌下で記録した水準を超えて急上昇し、主要貿易相手国の対抗措置によって世界の関税率も大幅に押し上げられた。
主な経済見通しと数値(予測・改定)
- WEOの参照予測(2月1日から4月4日までに米国が発表した関税と他国による対抗措置を含む):
- 今年の世界経済成長率予測:2.8%
- 来年の世界経済成長率予測:3%
- 2025年1月の「WEO改訂版」からの累計下方改定幅:0.8%ポイント
- 代替経路(「4月2日前の予測」:4月2日の関税を除いた場合):
- 世界経済の成長率予測(2025年、2026年):3.2%(両年)
- 下方改定幅の累計:0.2%ポイント
- モデルベースの予測(4月4日以降の発表を織り込んだ想定):
- 米国は大半の関税を一時的に停止し、中国に対しては関税を法外な水準に引き上げたが、この停止が無期限に延長されたとしても、参照予測と比較して世界経済の見通しを実質的に変えないと判断。
- 物価・貿易:
- 世界のインフレ率は各年について0.1%ポイント上方改定されているが、ディスインフレーションの勢いは続いている。
- 世界貿易の伸びはGDP以上に落ち込み、2025年は1.7%と予測(2025年1月のWEO改訂版から大幅な下方改定)。
- 地域別・国別の影響:
- 米国:
- 今年の成長率予測:1.8%
- 1月の予測に比べて下方改定幅:0.9%ポイント(そのうち0.4%ポイントは関税による影響で説明)
- インフレ予測は約1%ポイント引き上げ(基準としていた2%から約1%ポイントの上方改定)
- 中国:
- 今年の成長率予測:4%
- 成長率下方改定幅:0.6%ポイント
- インフレ予測は約0.8%ポイント下方改定
- ユーロ圏:
- 成長率予測:0.8%
- 下方改定幅:0.2%ポイント
- 多くの新興市場国:
- 成長率予測:3.7%
- 下方改定幅:0.5%ポイント
リスクと伝播メカニズム
- 認識論的不確実性(policy unpredictability)と政策の予測不可能性が景気見通しを左右する主因。
- 関税は発動法域にとって負の供給ショック:
- 競争力が低い品目への資源再配分 → 総生産性低下、生産価格上昇。
- 中期的には競争力・イノベーションの低下、レントシーキングの助長 → 見通しのさらなる悪化。
- 緊密なグローバル・サプライチェーンは関税の影響と不確実性を増幅させる可能性がある:
- 貿易財は多くが最終製品となる前に何度も国境を越える中間投入財であり、混乱は上流から下流へ乗数効果を伴って伝播。
- 企業は不確実な市場アクセス下で投資と支出を削減し、金融機関は借り手のエクスポージャーを評価し直す。
- 金融環境の悪化リスク:
- 成長見通しの低下と不確実性の高まりに応じて市場が否定的反応 → 金融環境のさらなる厳格化が生じ得る。
- 銀行は概して資本が充実しているが、金融市場はさらに深刻な試練に直面する可能性。
- 為替の影響は複雑:
- 関税発動国(米国)では通貨が上昇する可能性もあるが、政策不確実性の高まりや米国の成長見通し低下はドルの重しとなり得る。
- 中期的には米国の貿易財部門の生産性が他国より低下する場合、ドルは実質ベースで下落する可能性。
- 実際の市場反応として原油価格の急落が観察されている。
政策的含意と勧告
- 最優先課題:貿易政策の安定性を回復し、互恵的な取り決めを実現すること。
- 世界経済は、非関税障壁やその他の貿易歪曲措置の利用の広がりを含む長年にわたる国際貿易ルールの欠陥に対処する明確で予測可能な貿易制度を必要としている。
- 協調の改善が不可欠。
- 金融政策:
- 機動性を維持することが求められる。
- 一部の国はインフレとGDPの間でより厳しいトレードオフに直面する可能性があり、別の国では負の需要ショックによって政策金利の引き下げが正当化される場合がある。
- 物価圧力の再燃に直面する国では強硬な金融引き締めが必要。
- いかなる場合でも金融政策の信頼性と中央銀行の独立性が重要。
- 新興市場国向けの助言:
- 対外ボラティリティと長期化するリスク回避環境により舵取りが難しくなる可能性。
- IMFの「統合的な政策枠組み(IPF)」は、通貨の調整をファンダメンタルズ主導で進める重要性と、介入が賢明となる特定条件を詳述。
- 財政政策:
- 多くの国が高債務、低成長、資金調達コストの上昇というより厳しいトレードオフに直面。
- 大半の国は財政余力が乏しく、段階的で信頼性のある健全化計画を実施する必要がある。
- 最貧国の一部は公的援助削減の影響で過剰債務に陥る恐れ。
- 新たな支出ニーズに対する支援は、対象を絞り、自動的なサンセット条項を組み込むべきである。
- 防衛関連支出の取扱い(欧州中心):
- 財政余力が十分な国:追加支出のうち一時的なもののみを債務で賄うべき(例:新しい環境への適応のための一時的支援、当初の防衛能力再構築のための支出増大)。
- その他の国:新たな支出ニーズは歳出削減または新たな歳入で相殺するべき。
- 成長促進への取り組み:
- 民間のリソース動員を促し、不適切な資源配分を抑制する財政・構造改革を継続すること。
- 人工知能などの新技術の恩恵を享受するために、デジタルインフラや訓練への投資を行うこと。
社会的・構造的論点
- 世界の統合は目的ではなく手段であり、生活水準の向上を支える限り重要である。
- 製造業雇用の減少に関する誤解:
- 多くの先進国で製造業雇用のシェアは長期的に低下しているが、背後の主因は技術進歩と自動化であり、グローバル化だけが原因ではない。
- GDPに占める製造業の割合はドイツや米国で安定的に推移している。
- 技術進歩と自動化は最終的に有益だが、個人とコミュニティに対しては破壊的になり得るため、進歩とその混乱への対処とのバランスが集団的責任となる。
- 政策当局は「勝者」と「敗者」の間の単純な移転補償を超えて思考する必要がある:
- 根本的な原因をより良く理解し、より多くの機会をもたらす改良された貿易システムを構築することが重要。
- これは国際通貨基金協定の目的とも一致している(「国際貿易の拡大及び均衡のとれた増大を促進し、これにより高水準の雇用と実質所得の促進及び維持に寄与する」)。
出典:IMF ウェブページ「新時代に突入する世界経済」