貿易摩擦が激化する中、アジアには経済の強靭性を高める機会がある
IMF Blog, April 24, 2025
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- 貿易摩擦が激化する中、アジアには経済の強靭性を高める機会がある
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- Authors: Thomas Helbling, Andrea Pescatori, Krishna Srinivasan
- Published: April 24, 2025
要旨と現状認識
- 世界の経済システムがリセットされる中、米国の関税は100年来の高水準に達しており、最も高い関税のいくつかはアジアを対象としている。
- アジアは世界貿易をけん引し、2024年の世界経済成長の60%近くを占めた。
- アジアの成長モデルは貿易の自由化とバリューチェーンへの参画を基盤として成功してきたが、貿易摩擦と政策不確実性の高まりに直面している。
成長見通しと主要数値
- IMFの参照予測では、今年の成長率が昨年の4.6%から3.9%に減速するとされる。
- IMFの予測におけるパンデミック以降最も急な0.5%ポイントの下方改定は、世界的な需要の減速、貿易の減少、金融環境の厳格化、不確実性の高まりを反映している。
- 2026年の成長率予測は4%だが、これも前回予測から下方改定された。
- 域内の先進国の今年の成長率は1.2%となる可能性が高く、1月時点から0.7%ポイント下方改定された。
- 日本の成長率は昨年の0.1%から0.6%へとやや加速する予測。
- 新興市場国と発展途上国では、今年の成長率が4.5%と、0.5%ポイント下方改定された。
- 中国の成長率は今年と来年ともに4%前後に下方改定された。
- インドは2025年と2026年の成長率がそれぞれ6.2%と6.3%へと小幅に減速する予測。
- ASEANの2025年の成長率予測は4.1%となった。
リスク要因とダウンサイド・ショック
- 貿易摩擦の激化、金融市場環境の厳格化、不確実性の高まりが下振れリスクを高めている。
- 輸出依存の高い国々では、関税上昇が世界経済の重石となり、パンデミック後の域内経済の勢いを弱める。
- 家計債務の増加は個人消費を圧迫し、過度な借り入れと債務返済負担が消費回復を妨げる。
- 米国やその他の先進国向けのハイテク製品輸出は、AIによる需要増で堅調だったが、米国の需要変動と保護主義台頭の影響で脆弱性が高まっている。
上振れシナリオと機会
- 輸出市場の多様化や新たな貿易協定により貿易の新しい機会が生まれる可能性がある。
- 構造改革を改めて強めることで成長を押し上げ得る。
- 地域統合(例:RCEP)やデジタル能力の活用は、財やサービス、デジタル経済、規制の調和で協力関係を深めることでリスク緩和に資する。
政策の方向性(推奨措置)
- 財政政策の柔軟かつ状況に応じた運用:
- 財政バッファーの再構築が強靭性にとって非常に重要。
- 短期的に外需の大きなショックを緩和するための財政対応も必要。
- インフレ率が目標付近か目標を下回っている状態を維持する金融緩和や、為替相場がショックを吸収する機能の保持を支持。
- 対象を絞った期限付き支援と公共投資:
- 打撃が大きい輸出セクター中心に脆弱な人々や企業へ対象を絞った期限付きの支援を提供。
- 需要を維持するために公共投資を慎重に選択。
- 中期的財政健全化戦略:
- 今後数年間の財政健全化に向けた信頼できる戦略(明確に定義された中期的枠組みに基づく段階的な財政調整)を策定。
- 公共支出の効率改善と歳入を増やすための税制改革を実施。
- 社会的セーフティネットと家計債務対策:
- より効果的な社会的セーフティネットは貯蓄抑制と信頼醸成に有益。
- 家計債務が大きい国では、債務再編の協調的措置、金融リテラシー向上、過剰な借り入れの防止が消費下支えに役立つ。
- 供給側・構造政策:
- 労働市場改革、ビジネス環境の改善、医療や教育への投資を通じた人的資本構築で民間投資を促進。
- 人工知能や先端技術導入を支えるスキルとインフラ、規制枠組みを整備。
構造改革と地域統合の重要分野
- デジタル化と生産性向上:
- デジタル化はサービス業を中心に生産性向上と新たな雇用創出に貢献し得る。
- シンガポールはデジタル分野で競争力が高く、韓国とインドはデジタル政府サービスをけん引している。
- 資本市場深化・金融包摂・ガバナンス改善:
- 構造的財政改革と地域統合はこれらとともに進める必要がある。
- 太平洋島嶼国の気候脆弱性:
- 自然災害や気候変動に対する強靭性が最重要であり、気候資金へのアクセスが非常に重要。
国別の取り組み事例
- インド:
- 債務を一定水準まで抑制する新政策の導入。
- 税務行政の効率性向上で歳入を増やしつつ社会支出を維持。
- モンゴル:
- 透明性や説明責任、長期的な財政のアンカー強化のため財政規則を強化。
- 韓国:
- 財政政策の指針として正式な財政規則の導入を目指している(同法案は議会で審議中)。
- スリランカ:
- IMF支援プログラムの下で大幅な歳入動員と赤字削減を実施し、税収増と財政赤字の著しい縮小を達成。
- タイ:
- 当局が返済支援や債務再編プログラムの導入などの措置を講じている。
戦略的選択の要点
- 今後5年間で財政赤字の削減にコミットしつつ、短期的な成長支援のために財政政策を慎重に活用すること。
- 国内市場の潜在力を改革で引き出し、国同士の絆を強めて地域全体の強靭性を構築すること。
- これは試練であると同時に、アジアが「工場」であるだけでなく、ダイナミックで強靭で統合された経済力のある地域として成長ストーリーの次の章を描く機会でもある。
出典:トーマス・ヘルブリング、アンドリア・ペスカトーリ、クリシュナ・スリニバーサン、2025年4月24日(記事本文)。
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