ノンバンクの資金を引き付ける新興市場、流入増加に伴って新たな課題も
ノンバンク金融仲介機関は新興市場の資金へのアクセスを拡大するが、その資本フローはグローバルなリスクセンチメントの変化に対して非常に敏感である。
サリ・フェンドール、マフヴァシュ・S・クレシ、フェリックス・サンタイム
海外から資金を調達しようとする新興市場の企業や政府は、銀行以外に、ますますノンバンク資金に目を向けるようになっている。最新の「国際金融安定性報告書(GFSR)」の分析章で論じているように、こうした傾向は大きな便益をもたらす一方で、新たなリスクの原因ともなる。特に、世界的なショックが発生した場合に、資本フローの急激な反転に対する脆弱性が高まる。
世界金融危機以降、新興市場に対する証券投資フローは累積ベースで8倍に拡大し、約4兆ドルに達している。これに対して、銀行資金フローの増加は小幅にとどまっている。資本流入の大半を占めているのが債券投資であり、新興市場の証券投資債務は平均で2006年の対GDP比約9%から現在では約15%へと増加している。こうした資本の80%は、投資ファンドやヘッジファンド、年金基金、保険会社などのノンバンク金融仲介機関が提供しており、そのシェアはこの20年間で2倍に拡大した。
新興市場の借り手にとっては、場合によって利点がかなり大きい。潤沢な資本は資金調達コストを引き下げ、投資拡大と生産性の伸びの加速を下支えし得る。市場ベースの資金調達は、貿易や運転資本、生産能力を増強するためのその他のニーズに必要な資金へのアクセスを容易にすることで、輸出の主な推進力であるグローバル・バリュー・チェーンへの企業の統合を助ける。長い目で見れば、国際資本市場への持続的なアクセスは、国内の金融システムの深化を促し、長期的な金融発展を支えることにもなる。
その一方で、われわれの分析によると、新興市場に対する証券投資フローは銀行資金フローよりも変動しやすい傾向があり、グローバルなリスク環境に対してますます敏感になっている。フローが急激に縮小すれば、対外資金調達圧力が増大し、借入コストが上がり、大幅な通貨安となり、ひいては経済成長の重しとなる金融のひっ迫につながりかねない。中東での戦争を受けて、こうしたリスクが表面化している。いくつかの新興市場において、外国のノンバンク金融仲介機関からの資本フローの逆流が見られている。
こうした影響を測定するために、われわれは世界的なリスク選好の指標として広く使用されているCBOEボラティリティ指数(VIX)の1標準偏差分の上昇を用いた。これは、2022年初頭に米連邦準備制度理事会が利上げを行った際のVIXの上昇に概ね匹敵する。そのような急上昇は、平均で四半期GDPの約1%に相当する新興市場からの債券投資流出と関連している(対GDP比資本フローの0.3標準偏差減少に相当)。投資ファンドの資金流出は、その約2倍である。こうした影響は、公的債務負担が大きい、外貨準備バッファーが十分にない、制度の質が低いといった、ファンダメンタルズがより脆弱な国においてより大きいと考えられる。

なぜ、ノンバンク金融仲介機関による債券投資フローのボラティリティがそれほど高いのだろうか。理由は投資家のタイプによって異なる。
新興市場に対する証券投資の大部分を占める投資ファンドは、突然の償還圧力にさらされる可能性があり、資産の迅速な売却を強いられることがある。パッシブファンドや多くの上場投資信託が採用しているベンチマーク連動型戦略は、指数の構成比率が変化すると自動的にポートフォリオの調整を行うため、資産の一斉売却のリスクを高める。一部の新興市場において重要性が高まりつつある投資家グループであるヘッジファンドは、リターンを高めるためにレバレッジを活用することが多い。
そうした戦略は脆弱性を生む可能性がある。市場のボラティリティが高まると、マージンコールやリスク制限につながり、資産売却を強いられたり、価格圧力が増幅したりする可能性があるからだ。さらに、2008年以降の規制改革によって、グローバル銀行のリスクテイク能力が制約されたことが、よりリスクの高い借り手をノンバンク金融の方に向かわせたと考えられる。その結果、銀行ベースの資本のグローバルリスクに対する感応度は低下したのに対して、市場ベースのノンバンクの資本の感応度は高まった。
ノンバンク金融仲介機関の中では、ヘッジファンドとミューチュアルファンドがグローバルリスクの変化に対して最も敏感であり、年金基金や保険会社といったその他の機関は比較的安定している傾向がある。例えば、VIXの急上昇は、ヘッジファンドが保有する新興国証券の1.3%減少と関連している。ミューチュアルファンドも投資を縮小させるが、その規模は約0.6%と相対的に小さく、外国に拠点を置くノンバンク金融仲介機関全体の平均的な反応と概ね一致している。対照的に、保険会社と年金基金による証券保有は、同じショックに対して統計上有意な反応を示さない。

ノンバンク金融の中で急成長中かつ透明性が比較的低いセグメントであるプライベートクレジットによって、さらなる課題がもたらされている。新興市場では、プライベートクレジット(主にノンバンク金融仲介機関による企業に対する直接融資)が急速に拡大しており、運用資産は過去10年で5倍に増え、500億ドルから1000億ドルに上ったと試算されている。プライベートクレジットは資本へのアクセスを拡大し得る一方で、透明性やデータの入手可能性が不足していることにより、脆弱性や金融安定性に対する潜在的リスクを迅速に特定することが難しくなっている。
強靭性の構築
われわれの分析では、新興市場の政策当局者が金融安定性リスクの評価を行う際に、ノンバンク投資家層の構成を注意深く監視する必要性を強調している。制度の質を強化し、十分な財政バッファーと対外バッファーを維持することも、資本フローのボラティリティを緩和し、より安定的で長期的な外国投資を誘致する上で支えとなる。
さらに、金融政策と為替レートの柔軟性(必要に応じて為替介入により補完される)を含む各種措置の組み合わせとマクロプルーデンスツールは、脆弱性を抑制し、潜在的リスクに備える上で役に立つ。IMFの「統合的な政策枠組み」は、こうした政策ツールの組み合わせと順序付けの調整に関する指針を示している。
システム全体のストレステストは、深刻だが起こり得る経済的ショックの影響をシミュレーションするものであり、資本フローの急激な逆流に対する金融システムの頑健性を評価するのに役立ち、十分な資本・流動性バッファーを金融機関に維持させることに資するだろう。
最後に、規制ギャップやデータギャップを解消し、グローバルな金融ショックが国境を越えてもたらす望ましくない影響を抑えるには、国際協調の強化が不可欠である。
本ブログ記事は、2026年4月「国際金融安定性報告書(GFSR)」の第2章「 新興市場への資本フロー:グローバルなノンバンク金融仲介機関の役割」に基づいている。