潤沢から枯渇へ
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- Authors: ANDREA PESCATORI, MARTIN STUERMER
- Published: December 14, 2022
概要
- 過去10年間の炭化水素と再生可能エネルギーの生産急増を経て、エネルギーが豊富で安価だった時代から、エネルギーが不足し価格が急騰する時代へ急変した。
- 主要要因は、投資の低迷、ウクライナでの戦争、再生可能エネルギーの出力変動、天然ガスへの依存増大である。
価格動向とマクロ影響
- 欧州のガス価格は2022年第3四半期に前例のない水準に達し、2019年第3四半期から約14倍に上昇。
- 米国のガス価格は3倍に上昇。
- 世界の原油価格は約40%上昇。
- 2022年第3四半期以降、価格上昇はやや減速したが、エネルギー価格の高騰は高インフレの主要因のひとつであり、世界の経済成長の大きな足かせとなっている。
- 2022年の第3四半期、戦争開始から6か月で欧州におけるガス価格はさらに75%上昇。原油価格の上昇は侵攻以降、わずか15%だった。
投資動向と供給構造
- 石油・ガス投資は今世紀初頭から急増し、2014年にピークを付けた。
- 投資ブームの要因には、新興国の需要増と米国のシェールオイル・ガス革命(フラッキング技術)がある。
- 2014年の価格暴落後、世界的に石油・ガスへの投資は大幅に減少した。
- 同時に、IEAによると、再生可能エネルギーへの投資は、2050年までに排出量実質ゼロというUNの目標を達成するのに必要な年間約1兆ドルを下回っている。
- 電化の進展に伴い、石炭火力の代替および再生可能エネルギーの補完として天然ガス需要が増加。一次エネルギー総生産量に占めるガスの世界シェアは、2010年の16%から2021年には22%に増加。
- OECD加盟国の発電におけるガスの割合は、同期間に23%から30%に増加(IEA)。
ウクライナでの戦争の影響(ガス市場の脆弱性)
- 2021年、寒冬や再生可能発電の低迷、パンデミック後のガス消費の早期回復により、ガス市場は不均衡な状態にあった。
- 2021年半ば頃からロシアが欧州への輸出を減らし、ガスプロムが中央ヨーロッパの貯蔵施設へ供給しない決定をした。
- 世界のLNG市場に連動する欧州とアジアのガス価格は、2019年第4四半期に100万BTUあたり4.90ドルだったが、2021年第4四半期には33ドルと、ほぼ7倍に上昇。
- 同期間の原油価格は1バレル78ドルで、8四半期前よりわずか18ドル上昇にとどまった。
- 石炭は同期間に、1トンあたり73ドルから182ドルに倍増。
ガス市場と原油市場の差異
- 天然ガス市場はパイプライン依存が強く、世界的に分断化されている。現在、世界のガス市場で統合されているのは4分の1にとどまる。
- ロシアは欧州向けパイプライン輸出の代替ルートやガス液化設備が十分でなく、流量減少は「真の供給ショック」となった。これは欧州のガス消費量の約17%と欧州以外のLNG輸入を合わせた分量が市場から消えたことに相当する。
- 価格弾力性が低いため、価格調整を促すにはガス価格が数倍上がる必要があり、補助金など価格信号を歪める政策は有効ではない。市場で調整できない場合、配給が唯一の選択肢となり、経済へのダメージが大きくなる。
- 原油市場は世界的に統合されており、国境を越えた裁定取引が可能なため、需給ショックの緩和余地が大きい。
- ロシアの原油輸出は2022年に安定。制裁や企業の撤退により市場混乱が生じたが、ブレントとロシア産原油価格のスプレッド拡大で部分的に吸収された。ロシア産原油は割安で販売され、インドや中国への振替が進む。
- 戦略的原油埋蔵量の放出や世界経済活動の減速(例: 中国)が原油価格の下押し圧力となっている。
電力市場への波及
- 欧州では電力価格が最高の限界生産コストによって決定され、現在はガス発電所が最も高コストの生産者であるため、卸売電力価格はガス価格と並行して変動。
- その結果、電力価格は非常に不安定になっている。再生可能エネルギーの比率が比較的低い国々を含め、最近は2021年初頭の7倍でピークに達した国もある(例: スペインやポルトガル)。
- 欧州内でもインフラのボトルネック、発電源構成、補助金や価格上限政策の差異により、エネルギー卸売価格に大きな乖離が生じている。
政策提言
- 各国政府は、世界の天然ガスと地域の電力市場の統合を促進すべきである。
- 再生可能エネルギーへの支援に加えて、以下を支援する必要がある:
- ガス液化と貿易インフラの構築
- より高密度の送電ネットワークの整備
- これらの対策を迅速に実行することで、ロシアのエネルギー供給の代替手段を確保するとともに、再生可能エネルギーの出力中断に対処するのに役立つ。
- 政府は脆弱な世帯を一時金やその他のメカニズムで保護できるが、価格シグナルは機能させ続けるべきである。
主要数値(抜粋)
- 欧州のガス価格: 2019年第3四半期から約14倍(2022年第3四半期で前例のない水準)
- 米国のガス価格: 3倍に上昇
- 世界の原油価格: 約40%上昇
- ガス価格(地域・時期別): 2019年第4四半期 100万BTUあたり4.90ドル → 2021年第4四半期 33ドル(ほぼ7倍)
- 原油価格(2021年第4四半期): 1バレル78ドル(2019年第4四半期比で18ドル上昇)
- 石炭価格(同期間): 1トンあたり73ドル → 182ドル
- 一次エネルギーに占めるガスの世界シェア: 2010年 16% → 2021年 22%
- OECDの発電におけるガスの割合: 23% → 30%(2010年→2021年)
- 欧州のガス消費市場から消えた相当量: 欧州のガス消費量の約17%と欧州以外のLNG輸入を合わせた量
- 電力価格ピーク例: 最近は2021年初頭の7倍に達した国がある
出典: 潤沢から枯渇へ — アンドリア・ペスカトーリ, マルティン・ストューマー, 2022年12月
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- 潤沢から枯渇へ ファイナンス&ディベロップメント 2022年12月