流動する中東
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- 流動する中東
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- Authors: VALI NASR
- Published: September 14, 2023
地政学上の世代交代と地域の再編
- 地政学上の世代交代が拡大中東地域に新たな隆盛の可能性を生んでいるとする観点。
- 近年の重要な出来事として、2020年のアブラハム合意とイラン・サウジアラビアの関係正常化が、地域政治の軸転換の前兆とされる。
- 米国の中東に対する姿勢の変化が、こうした変化の大きな弾みになっている。米国は1979年のイラン革命以降、中東の安全保障アーキテクチャーの主柱を務めてきたが、対外優先課題が変化し、対テロ戦争やアフガニスタン、イラク、リビア、シリアへの介入を経て、視線を台頭する中国など世界の他地域へ向けていると論じる。
- 米国の関与低下が明らかになった事例として、アフガニスタン、イラク、リビアでの戦争の失敗や、シリアとイエメンの内戦に対する限定的な影響力が挙げられる。
地域の自立と経済統合へのシフト
- 米国の安全保障保証が「鉄壁」ではない現実の下で、中東各国は安全保障のリスク緩和手段として外交と経済関係の拡大を志向している。
- サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)によるカタールとの関係修復や、トルコ、イラク、イラン、シリアとの復交はこのアプローチの具体例である。
- 経済政策は投資とビジネスチャンスにより推進されると同時に、新たな戦略的関係を構築・維持する手段でもある。
- 中東で最も野心的な国家であるサウジアラビアとアラブ首長国連邦は、サービス産業の育成と投資誘致を通じて世界経済における重要プレイヤーになることを目指している。
- 経済的・文化的結びつきにより、従来の中東・北アフリカの枠組みが中央アジア、コーカサス、アフリカの角、南アジアへと拡張されつつある。例として、インドは現在、アラブ首長国連邦の最大の貿易相手国である。
中国・ロシアの関与と戦略地政学の再編
- 中国はサウジアラビアの最大のエネルギー・パートナーであり、同国への中国の投資は他のすべての国々の投資を上回っているとされる。
- 中国はパキスタンに対して「一帯一路」構想の一部として560億ドルを超える投資を行っている。
- 中国は拡大中東を、中国経済とヨーロッパを結ぶ大陸ユーラシア構想の重要部分と見なし、同地域の地政学的重要性は、中国国内の生産拠点の西方移転とともに増している。
- ロシアはシリア内戦介入や石油生産協定を通じて中東に深く関与してきた。ウクライナ戦争はロシアとイランの結び付き強化も促し、イラン製ドローンと軍需品がロシアによるウクライナ攻撃に使われている点が指摘される。
- ロシアはカスピ海のアストラハン港からイランを通りアラビア海のチャーバハール港まで伸びる交通回廊に関心を強めている。
新たなエネルギー回廊とインフラ計画
- 北アフリカとレバントでも、ヨーロッパのロシア産エネルギー遮断への対応としてエネルギー輸入先の多様化が進む見込みであり、アルジェリアとエジプトが影響を受ける。
- モロッコとチュニジアはヨーロッパ経済のサプライチェーン前線として恩恵を受ける可能性がある。
- トルコは将来的に、南方・東方から西ヨーロッパへと敷設されるエネルギーパイプラインの輸送拠点になることを目指している。サウジアラビアとカタールは自国およびイラクの石油とガスをトルコ経由で送るパイプラインを検討している。
- パイプライン計画の成否は、経路沿いの内戦や国家間紛争の解決に依存する。経済利益が生じれば平和維持への関心が高まる可能性がある。
- 2022年11月、イスラエルとレバノンは地中海の海洋境界の画定について合意文書に署名し、両国のガス田開発に向けた前段を整えた。
機会とリスクの総括
- 拡大中東の将来は大国の対立の影響を受け続けるが、現在の大国の動きは地域諸国を孤立化させるのではなく、経済的相互依存を拡大する方向に作用しているとの評価。
- 経済統合とインフラ連結は、長期にわたる安全保障上の懸念への一つの解決策となる可能性があるが、シリアの運命など未解決の障害も存在する。
- 米国は、インドとペルシャ湾、イスラエルを港湾、道路、鉄道ネットワークで結ぶ新秩序を支持する一方で、イランを含めることには消極的であるとの指摘。
- 経済的な波及効果と相互依存の拡大により、地域に新たな可能性の扉が開かれる可能性がある。
出典: ファイナンス&ディベロップメント「流動する中東」ヴァリ・ナスル, 2023年9月