関税への執着というヴェールの裏側
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- Authors: MICHAEL PETTIS
- Published: September 22, 2025
概要と主張
- 著者: マイケル・ぺティス(カーネギー国際平和基金のシニアアソシエイト、北京大学講師)。
- 掲載: ファイナンス&ディベロップメント - セレクト記事、2025年9月。
- 中核的主張: 関税だけに注目すると、貿易不均衡の根本要因である国内の所得分配や経済構造の影響が見えなくなる。関税は数ある手段の一つに過ぎず、通貨政策、金融抑圧、規制、労働政策、制度的規範などが同様に貿易の結果を左右する。
関税の役割と限界
- 関税は輸入品に課せられる税であり、消費者から生産者への所得移転をもたらす。
- 関税の特徴:
- 数値化しやすく、可視性が高い。
- 政治的に武器として使いやすく、元に戻しやすい。
- 単純で分かりやすいが、貿易政策の優れた代替手段とは限らない。
- 結果として:
- 家計から企業への所得移転が発生し、家計のGDPに占める割合が減少し、消費対生産の比率が低下する。
所得移転と他の政策ツール
- 消費と生産の国内不均衡は対外不均衡と一貫しているため、国内に影響する政策は対外的影響をもたらす。
- 通貨政策:
- 為替介入で自国通貨を割安に維持すると、輸入が高く輸出が相対的に有利になり、関税と同様に消費者から生産者への所得移転を招く。
- 金融抑圧:
- 銀行システムが供給側向けに機能する場合、金利抑制は純貯蓄者(家計)の所得に対する課税であり、純債務者(生産部門)への信用助成となる。結果として関税や為替操作と同様に純輸出の増加をもたらす可能性がある。
- 戦略的助成・規制・税制:
- 政府が特定産業にインフラ等で助成することは、国際ルールに抵触しない場合でも生産志向のインセンティブを作り出し、貿易介入と同様の国内シフトを誘発する。
- 労働市場構造・社会制度:
- 例として、中国の戸口(フーコウ)制度は賃金を抑制し、家計消費を抑えることで貿易収支に直接的影響を与えてきた。
- 医療費を犠牲にする政策、労働者の組織化制限、最低賃金抑制、交渉権の弱体化などは賃金抑制を通じて消費を抑え、目立ちにくい形で関税と同様の不均衡を生む。
解釈と示唆
- 低い関税率にもかかわらず持続的貿易黒字を計上する国の存在は、制度構造や貯蓄インセンティブ、輸出志向産業政策などを通じた生産優先の国内選択の結果で説明できる。
- 貿易不均衡は国際取引だけの問題ではなく、国内における「誰が何を得るか」という所得分配の問題である。
- 1944年のブレトンウッズでジョン・メイナード・ケインズが指摘したように、多様化した経済で持続的貿易黒字がある場合、それは通常、貿易を歪める介入がある十分な証拠である。歪みが関税によるか否かは本質的ではない。
政策的含意と提言
- 表層的に関税を非難するのではなく、貿易政策をより幅広く捉える必要がある。
- 対応策の方向性(列挙):
- 各国の所得分配の在り方に注目する。
- 二国間交渉や保護主義的な対応だけでは不十分であると認識する。
- 各国の経済構造を変革し、持続可能な需要をけん引する部門へパワーやリソースをシフトすることを目指す。
出典: 関税への執着というヴェールの裏側, マイケル・ぺティス, ファイナンス&ディベロップメント, 2025年9月.