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しかし、持続的な生産性の向上は、AIに関する測定、資金調達、管理方法をどれだけ早く習得できるかにかかっている
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記事やその他書物の見解は著者のものであり、必ずしもIMFの方針を反映しているとは限りません。
人工知能は、世界経済をめぐる議論の原動力となっている。そして経済成長そのものの原動力ともなりつつある。米国では今、AI関連の投資がGDP成長の大きなシェアを占めており、サーバーとデータセンター、ソフトウェア、電力インフラの新たな需要をかき立てている。政策当局者は、これが何を意味するのかを理解しようと奔走している。世界は、一時的な投資バブルを経験しているのか、それとも1990年代のIT革命に匹敵するような、永続的な生産性ブームを目の当たりにしているのだろうか。
現在も世界最大かつ世界の景気循環の中心にある米国経済は、成長スピードが二種類に分かれている。AI集約型産業が躍進する一方で、建設業や製造業、そして金利に敏感な産業は、後れを取っている。米経済分析局によると、情報処理機器とソフトウェアへの投資は、2025年の第3四半期に前年比16.5%増加した。AIを除くと、GDPはずっと弱かった。
この傾向は、世界的に見られる。欧州と日本の成長は安定したが、依然として、緩和的な金融政策に依存している。新興市場国は、利回り低下とドル安の恩恵を受けたが、成長の勢いは、テクノロジー関連の投資と資本流入にますます依存している。世界経済の成長は急減したわけではないが、ますます絞られた部門や地域に集中している。
現在のAIの波の特徴は、資本の集約度だ。大規模言語モデルのトレーニングと生成システムの展開には、膨大な計算能力と物理的なインフラが必要である。AIは、既存の通信ネットワークを基盤として成長したソーシャルメディアや電子商取引などの、他の最近のイノベーションよりも、電力(電力系統、ハードウェア、補完的な資源への継続的な投資を必要とし、ほかの技術を実現するもの)に似ている。世界的な需要に対応するために、世界中のデータセンターは、2030年までに6.7兆ドルの設備投資を必要とする可能性があると 推定されている。
この投資ブームは、経済の構造を変えると同時に、今日の測定の仕方が、無形資産を捉える上でいかに不十分であるかを明らかにしている。国民経済計算は、工場と機械が支配的だった産業時代に設計された。今日、価値はますますデータやアルゴリズム、独自のモデル、クラウドインフラストラクチャにある。
公式統計は、ソフトウェアや研究開発など、この移り変わりを一部は捉えているが、生産性を促進する要素の多くが見落とされている。大規模なモデルのトレーニング、データセットの改良、新しいアプリケーションの作成にかかるコストは、多くの場合、資産ではなく経費として計上される。AIのエコシステムの中核を成す半導体でさえ、そこに高度な知的財産が組み込まれているにもかかわらず、単なる中間投入財として扱われている。
その結果、GDPデータは、AIの直近の貢献を(巨額の資本支出を算出することで)過大評価すると同時に、その広範な経済的影響を(生産性への波及効果を見逃すことで)過小評価している。これは、IT革命の初期に見られた生産性向上を覆い隠した経緯と同じ統計的パラドックスだ。統計が現実の変化に追いつかないと、政策当局者は経済に関して誤解する危険がある。つまり、一見スラックが小さいようであるがゆえに引き締めすぎたり、インフレが構造変化を反映しているかもしれないのに、需要主導型に見えるために緩和が早すぎたりする。
例えば、連邦準備制度理事会(FRB)は現在、これまで以上に複雑な政策判断を迫られている。AIの導入が気づかれない形で潜在成長力を押し上げているのであれば、表面的な経済指標が示すほど経済は過熱していない可能性がある。一方で、電力需要の急増やインフラの制約は、インフレ率の下限を押し上げる要因となり得る。いずれの側面を見誤っても、政策は引き締めと緩和の両方向で間違いかねない。
AIの台頭により、貿易と資本フローの傾向も変わりつつある。コンピューター、サーバー、半導体の輸出入が急増しており、サプライチェーンが世界的に再編成されていることを示唆している。製造と組み立ては、東南アジアやインドのほか、テキサス州やガルフコーストなどの米国の専門ハブにシフトしている。
この地域的再編成は脱グローバル化ではない。これは相互依存の新しい地理の形である。米国と中国が依然として支配的なプレーヤーであり、欧州が、産業政策と投資のインセンティブを通じて追いつこうとしている。多くの新興市場国にとって、AIの需要はすでに輸出や外国直接投資(特にエネルギーや部品製造)につながっているが、技術的・地政学的ショックに対する脆弱性も高まる要因となっている。
資本はますます、AIインフラがあるところに流れている。株式市場はハイパースケーラー(グローバルなコンピューティング基盤の構築、資金調達を担っている一握りの企業)を高く評価し、バリュエーションとキャッシュフローがドットコム時代以来の高水準となっている。その結果、現在、世界のAI関連の設備投資と生産性向上への期待は、一握りの大手ハイテク企業に偏っている。
国際金融協会(IIF)の調査は、デジタル使用(輸入されたデジタルツールの使用)とデジタルの厚み(デジタルの財やサービスを生産および輸出し、国内のバリューチェーンに組み込む能力)の違いを明らかにしている。デジタルの厚みを備えた新興市場国(中国、インド、韓国、そして少数の特化型拠点)は、AI時代の生産に結びつく、安定的な海外直接投資を惹きつけている。これらの国々の輸出構成を見ると、情報通信技術サービス、(知的財産使用料)収入、デジタルコンテンツの比率が上昇していることが分かる。ほかの国々は、主に輸入技術の利用に留まり、したがって、世界的な流動性サイクルに左右される不安定なポートフォリオフローに大きく依存している。
AIが経済活動の中心となるにつれ、デジタルの厚みは、財政の信頼性や、為替相場制度に匹敵する形で、資本フローの動向を左右する要因となる可能性がある。デジタルの厚みの資本フローへの影響は、これまで十分に注目されてこなかったが、世界の政策当局は注意深く監視する必要がある。
AIのトレーニングと推論に必要な計算能力の規模により 、発電とグリッドの容量 が、重要なマクロ経済的変数になっている。
そのマクロ経済的な含意はきわめて大きい。エネルギー面の制約によって、AIの普及が遅れるだけでなく、コアインフレ率が高水準で定着し、他の部門が低迷する中でも、局所的な過熱を引き起こしかねない。グリッドへの投資は供給側の主要な制約となりつつあり、産業政策とマクロ経済政策の境界線が曖昧になっている。
より根本的な問いは、AIブームが経済全体に広く生産性向上をもたらすのか、それとも限られた企業や産業にとどまるのかという点だ。歴史が示すように 、汎用技術がもたらす成果は、技能や経営慣行、制度的適応など、補完的な投資を何年にもわたって行って初めて得られる。電力やITも、総生産性を高めるほど広く普及するまでには数十年を要した。
AIの導入が、ハイパースケーラーや特定のサービス事業者に集中したままであれば、その収益は早期に頭打ちとなり、投資サイクルが一巡した後、経済の脆弱性が露呈することになるだろう。しかし、AIの活用がさまざまな産業に広がれば、潜在成長率が持続的に上昇する可能性が現実的となる。企業調査によると、AIの普及は進みつつあるものの、ばらつきがある。多くの企業がAIを試行しているが、大規模に導入している企業はまだ一部に限られている。
リスクは、この普及が、不十分なインフラや時代遅れの統計制度と衝突するリスクがあることだ。急速な技術革新と、政策対応の遅れとのミスマッチによって、今後数年間は異常に不安定な経済になりかねない。投資の急増と調整のための停滞期に成長率が変動する可能性があり、政策当局者は統計の意味を読み解くのに苦労するだろう。
AIブームは、世界的な不確実性を背景に進行している。関税をめぐる対立や移民制限、財政不均衡により、世界経済は、分断化が進み、予測が難しくなっている。このような環境において、AIは、単なる技術的な話題にとどまらず、マクロ経済の安定化要因としても際立っており、追加的な需要と希望の、数少ない原動力のひとつとなっている。
しかし、この限られた原動力では、世界経済全体をいつまでも支え続けることはできない。米国の景気拡大は依然として資本集約的で、雇用も少ない。欧州は産業政策とデジタル政策を改革しない限り、この潮流に乗り遅れるリスクがある。新興市場国は、機会と慎重さの均衡を図りつつ、安価なエネルギーや有利な規制環境が、長期的な競争力の代替となってしまわないよう注意しなければならない。
政策当局者と統計学者は、より迅速に対応しなければならない。無形資産を適切に捉えるために、統計・計測の枠組みは進化する必要がある。また、財政・金融政策ツールは、部門間の格差と新たな供給制約を織り込まなければならない。さらに、AIの普及による恩恵が一部の国にとどまらないよう、国際協調も求められている。