分断された世界における繁栄
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Bibliographic details
- Authors: BEN BLAND
- Published: September 24, 2026
概要
- 著者: ベン・ブランド(Chatham House、アジア太平洋プログラム責任者)
- 公表: 2026年9月
- 主題: 東南アジアは、ASEANを強化し、開放度のバランスを取り、新たなパートナーシップを構築することで、地政学ショックに適応する必要がある。
歴史的背景と現状認識
- 冷戦終結とアジア金融危機以降の20年間、東南アジアは平和・安定とグローバル統合の下で繁栄。
- 同地域のGDPは1998年以降、約9倍に増加して4.5兆米ドルに達した。
- 人口は約7億人で、世界第4位の経済規模を有する11か国で構成。
- ASEANは地域統合を強化し、欧州連合に次ぐ結束力ある組織へ発展。
- 最近のペルシャ湾の戦争は、エネルギーと肥料の重要な輸入先への依存を含め、東南アジアの外的ショックに対する脆弱性を示した。
- 世界は「分断された世界」へ向かう兆候を示しており、保護主義の台頭と多国間体制への圧力が予想される。
課題と脆弱性の整理
- 保護主義と経済ナショナリズムが根強く存在し、特にインドネシアやフィリピンで顕著。
- 正式な貿易統合策は、非関税障壁、脆弱なガバナンス、相互補完性の乏しさにより実効性が損なわれている。
- ASEANの貿易総額に占める域内貿易の割合は、過去20年間を通じて約20%にとどまっている。
- 域内直接投資はASEANが掲げる目標に沿って加速していない。
- 米国と欧州の産業政策・保護主義、中国の国家主導型経済モデルにより、東南アジアが経済ナショナリズムを放棄することは困難。
ASEANにとっての4つの実行事項(主要提言)
- 第1に: 保護主義と開放度のバランスを取る
- 各国(特にインドネシアとフィリピン)は、自国の目標を取り入れた明確な産業政策を策定する必要がある。
- 産業政策は、成長、雇用創出、技術向上に必要なグリーンフィールド投資に資金を提供するため、投資家が求める長期的な確実性を提供すべきである。
- ASEANおよび各国関係を通じて産業政策の調和と相乗効果を図ること。
- 統合と開放度の両立を説きながら障壁を設けるよりも、ASEANとして共通の産業政策を目指す方向が効果的である可能性。
- 第2に: AIなどの新たなテクノロジーの導入と規制でより緊密に協力する
- スマートフォン普及により域内のデジタル経済は過去10年間で11倍以上に拡大し、2025年には1,350億米ドルの収益に達した(Google、Temasek、Bain & Companyのレポート)。
- 域内にはすでに700社を超えるAIスタートアップ企業が存在する。
- 中国と米国がAI分野で大きく先行しているため、競争は猛烈なスピードで進展し、東南アジアは域内協力を通じて開発を拡大しつつ他国のテクノロジーを活用する必要がある。
- 新技術導入に際しては、賢明かつ迅速、そして柔軟に対応し、大規模市場の強みを活かしてテクノロジーを規制すべきである。
- インドのデジタル公共インフラ導入の成功事例からの学びを推奨。
- 第3に: より機敏なASEANを構築する
- 多国間機関に共通する「集団行動」の課題に対応する必要がある。
- ASEANは合意形成と協力を重視してきたが、分断の世界ではこのアプローチだけでは不十分になる可能性がある。
- ASEANが最も動きの遅い加盟国のペースに合わせ続けることは地域全体の停滞を招く恐れがある。
- ASEAN事務局に調整権限を与え、事務局の資金を増やすことを提言(毎年交代する議長国のリーダーシップに依存しない体制へ)。
- 加盟国間の非公式コミュニケーションチャネルを強化し、秘密を守りつつ率直に話し合える仕組みを構築すること。
- 「マルチスピードASEAN」を導入して発展度や規模の差を考慮しつつ結束を維持すること。
- ASEANはすでにデジタル経済枠組協定(DEFA)について、国ごとに異なる形で段階的導入を検討している点を評価。
- 第4に: アジアや欧州の他の中規模国とのパートナーシップを拡大する
- 東南アジアは中国と米国の地政学的競争の最前線に位置しているため、選択を迫られる場面が多い。
- 米国も中国も、東南アジア諸国に特定の課題で歩調を合わせるよう圧力をかけている(インフラ、テクノロジープラットフォーム、防衛装備、軍事演習等)。
- オーストラリア、日本、韓国は東南アジアとの協力を拡大しており、欧州各国やEUも関与を強化しようとしている。
- ASEAN加盟国と欧州・アジアの中規模国との間には、世界の貿易体制支援、サプライチェーン強靭化、エネルギー安全保障、気候変動対応といった多くの共通利益がある。
- EUとCPTPP締約国との間で活発化しつつある協議は、中規模国による集団行動の新たな機運の一例である。
- CPTPPにはASEAN加盟国4か国が加入し、さらに3か国が加入を希望している。
主要数値・統計(原文のまま)
- GDP: 1998年以降、約9倍に増加して4.5兆米ドル。
- 人口: 約7億人。
- ASEAN域内貿易の割合: 過去20年間を通じて約20%。
- デジタル経済の拡大: 過去10年間で11倍以上。
- デジタル経済の収益(予測): 2025年には1,350億米ドル。
- AIスタートアップ数: 域内に700社を超える。
- CPTPPとASEAN: CPTPPにはASEAN加盟国4か国が加入、さらに3か国が加入を希望。
政策的含意と推奨アクション
- ASEANの制度的強化: ASEAN事務局への資金拡充と調整権限付与により、迅速な意思決定と実行を可能にする。
- 産業政策の明確化と協調: 各国が自国目標を組み込んだ産業政策を策定し、ASEANレベルで調和・相乗効果を図る。
- 投資環境の確実性提供: グリーンフィールド投資を誘引するため、投資家に対する長期的確実性を担保する政策を実施する。
- テクノロジー戦略: AIを含む先端技術の導入・規制で域内協力を強化し、インドの事例に学ぶデジタル公共インフラ構築の模索。
- マルチスピード統合の導入: 発展度の差を踏まえた段階的・柔軟な統合を推進する(DEFAの段階的導入の例を踏襲)。
- 中規模国との戦略的連携: オーストラリア、日本、韓国、欧州諸国との協力を拡大し、貿易体制やサプライチェーン、エネルギー安全保障、気候対策での連携を深化させる。
結論
- 東南アジアは、地理的近接性、経済的結びつき、共有文化により、分断された世界で自らの運命を切り開く能力を有する。
- 地域組織の活性化と強化、慎重な長期産業政策、新技術の思慮深い導入、中規模国とのパートナーシップ加速を通じて、大きなチャンスをつかむ可能性がある。
- 何もしないことのリスクは大きく、積極的役割の履行が求められる。
分断された世界における繁栄 — ベン・ブランド, ファイナンス&ディベロップメント, 2026年9月