平和と安定のための資金調達
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- Authors: Franck Bousquet
- Published: June 27, 2023
文脈と主要な課題
- 4月に勃発したスーダン危機は、統合されたグローバル経済における暴力的紛争の広範な波及効果を示している。
- 隣接国(中央アフリカ共和国、チャド、エチオピア、リビア、南スーダンなど)は既に紛争や社会不安、食料不安に直面している。
- この10年間でアフリカと中東全域で紛争動向が激化している。敵対勢力には暴力的過激派、地域民兵、民間傭兵(ワグナー・グループ等)が含まれる。
- サヘル地域では、2022年に死者を伴う暴力がピークに達し、260万人の人々が避難を余儀なくされた。紛争により何千もの学校や保健センターが閉鎖されている。
- 過去のIMF分析によれば、サヘル地域では紛争や治安悪化によって最大20%経済が収縮する可能性がある。
- サブサハラアフリカ全体では、30%の国が紛争の影響を受けていると考えられ、ある研究では平和な国に比べて年間成長率が2.5%ポイント低くなるとされる。
- ロシアのウクライナ侵攻により脆弱性と紛争の悪化に拍車がかかる中、スーダンはその引火点の一つにすぎない。
- このまま続けば、2030年までに世界の貧困層の60%以上が脆弱国・紛争被害国で暮らすことになる。
「負の国際公共財」としての紛争
- 紛争や脆弱性は「国際公共悪(global public bads)」であり、複数世代・多数の国々に損害を与える。
- 脆弱国の典型的特徴:低い経済パフォーマンス、低能力の諸制度、貧弱なガバナンス、極度の貧困、限定的な公共サービス—これらが暴力の前触れとなる。
- 外的ショック(食料価格高騰、パンデミック、気候関連リスク)は脆弱国を一層脆弱にする。
- 難民の流入は短期的な財政圧力のみならず長期的な経済影響をもたらす場合がある。若者(特に若い女性)は教育・就労機会を欠き、ジェンダーに基づく暴力の対象となることが多い。
- 国連は、紛争や自然災害の影響を受けた世界の3億3,900万人の人々を支援するために、510億ドルの人道援助が必要になると試算している。
平和と安定のアジェンダ(有効な介入の方向性)
- 紛争は平均で30年続く(1990年代に比べて2倍の長さ)。交渉による解決だけでは根本原因が残ることが多い。
- 介入ではまず予防のプログラムやプロジェクトに焦点を当て、諸制度や各国経済、地域社会を強化する必要がある。
- 従来型の貧困削減・開発プログラムは、権力や経済的機会、安全へのアクセスから排除が固定化している環境では十分でない。
- 必要な施策の例:
- 医療や教育などの公共サービスを遅れている地域に拡大し、国家への不信感を和らげる。
- 天然資源の管理改善と公的資金の配分により信頼を再構築し、国内歳入を確保する。
- 紛争リスクが高い場合の対象を絞った社会保護や脆弱層向け経済政策で社会不安を回避する。
- 大規模な暴力発生時には、国際金融機関(IFI)は国家の崩壊を防ぎ、紛争の経済的影響を軽減するため関与を継続すべきである。具体的には、基本サービス支援や中央銀行・決済システムの維持に向けた低レベルの技術的能力開発が挙げられる。
- 難民受入国(大きな難民人口を抱える国のうち4分の3を低・中所得国が占める)には、受入国側の統合支援と国際的なドナーのコスト分担が必要。UNHCRによれば、避難を強いられた人々の数は2022年末に過去最高水準の1億800万人に達した。
- 社会的統合のために雇用創出が最も効果的な手段のひとつである。
触媒的な資金メカニズム(GCFFの教訓と他の事例)
- グローバル譲許的資金ファシリティ(GCFF、2016年設置)はシリア難民増加に対応するためにヨルダンとレバノンを支援するために設立された。設立にはカナダ、デンマーク、ドイツ、日本、オランダ、ノルウェー、スウェーデン、英国、米国、EUの支援があった。
- GCFFの仕組みと成果:
- ドナーの無償資金1ドルにつき、7ドルの譲許的融資が可能になった。
- これまでに譲許的融資に8億ドルの資金が提供され、それを元手として、難民と受入コミュニティを支援するために約55億ドルの融資が可能になった。
- コロンビアとエクアドルはベネズエラからの強制移住に、モルドバはウクライナからの難民受入にGCFFを活用した。
- GCFFの重要な特徴(教訓):
1. 人道援助と開発援助の橋渡しをする。 2. 受入国のレジリエンス向上と受入コミュニティ支援を目的とする(UNHCRの参加により労働権やサービスアクセスの詳細な見直しが可能)。 3. EBRDやIsDB等の開発銀行向けプラットフォームを構築し、国レベルでの連携を強化する。
- 他の資金事例:
- イラク(2016年):英国とカナダからの5億ドルのドナー保証により世界銀行は15億ドルの融資を実施できた。
- G7諸国、EU、その他ドナーの資金保証はウクライナ支援(国際収支問題対応と対外的健全性回復を目的とするIMF支援)に活用された。
- MIGAが2023年1月にソマリアに提供した保証は、再生可能エネルギーへの投資促進の一例である。
- 譲許的資金やドナー保証は、脆弱国・紛争被害国に対する民間部門投資を可能にするうえで重要である。
今後に向けた提言(予防の強化とIFIの役割)
- 国際金融機関は各自のマンデート内で以下を促進し、平和と安定を国際公共財アジェンダの中核に据えるべきである:
- 予防に特に焦点を当てた国際社会による支援の強化。
- 例:AfDBは脆弱国戦略を改訂、EIBは初めて独自の戦略を採択。世界銀行とADBも2020年以降類似措置を講じている。
- IMFの戦略は、経済の安定達成、レジリエンス強化、包摂的成長促進に焦点を当てた脆弱国・紛争被害国支援を含む。
- ドナーのアプローチは、米国の「Global Fragility Act」のような平和構築能力強化・予防志向を参考にすべきである。
- 譲許的融資の拡大。
- IMFはパンデミック以降、24か国の脆弱国・紛争被害国に対して390億ドルの融資を約束してきた。
- 低所得国支援のために貧困削減・成長トラスト(PRGT)への十分な資金拠出を確保する取り組みが進行中。
- 低所得国支援には予防へのインセンティブを伴う無償資金も必要であり、GCFFの教訓を生かした革新的メカニズムの拡充が可能である。
- 人道支援、開発、和平のアクター間の広範な連合の構築(コロナ対応や気候変動対応、強制移動への対応での実績を拡大)。
- 外交、安全保障、人道援助に加え、脆弱国・紛争被害国には予防とレジリエンスのための調整された経済政策助言やプログラム、支援の拡大とコスト引き下げが必要。
- 脆弱国・紛争被害国の支援と国際公共財アジェンダの推進は相互に補強し合う。貧困削減と成長のための永続的基盤の構築は国際公共財そのものである。
出典: フランク・ブスケ「平和と安定のための資金調達」(分析シリーズ、ファイナンス&ディベロップメント)