米国の長期金利上昇を理解する
IMF Blog, April 23, 2021
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- 米国の長期金利上昇を理解する
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Bibliographic details
- Authors: Tobias Adrian, Rohit Goel, Sheheryar Malik, Fabio Natalucci
- Published: April 23, 2021
要旨
- 米国の長期金利上昇は世界的なマクロ金融リスクとして重要性が増している。
- 米国10年債の名目金利は年初から現在までに70ベーシスポイント高まっている。
- 上昇の背景には、強力な財政支援やコロナ禍からの復興による経済見通しの改善が部分的にある一方、財政状況や経済・政策の見通しの不透明性に伴う投資家の懸念などの別要因も寄与している可能性がある。
利回りの動きを左右する要因
- 名目利回りは「実質利回り」+「ブレークイーブンインフレ率」で構成される。
- 実質利回りは期待される経済成長の代理指標であり、ブレークイーブンインフレ率は投資家が織り込む期待インフレ率を示す。
- 両者はそれぞれ、インフレリスクプレミアムおよび実質リスクプレミアム(いずれも投資家が不確実性を負う対価)を含む。これらの合算はタームプレミアムと呼ばれる。
- 利回りは短期と長期で異なる要因が働くため、時間軸を分けて分析することが有用である。特に5年利回りと「5年先スタート5年物フォワード」を区別して考える。
最近の短期・中期・長期の動向
- 5年利回りの上昇の主要因:
- 短期的なブレークイーブンインフレ率の急上昇。
- 世界経済回復の勢いと一次産品価格の上昇。
- 米連邦準備制度(FRB)が完全雇用と物価安定の両目標達成に向け緩和的スタンスを維持する意図を繰り返し表明したこと。
- 5年先スタート5年物フォワードの上昇の主要因:
- 実質利回りの急上昇が最も大きい影響。これはより長期的な成長見通しの変化を示している。
- ブレークイーブンインフレ率(5年物)は期待インフレとインフレリスクプレミアムの両方の上昇を反映。
- 長期実質利回りの急上昇は主に実質リスクプレミアムの高まりによる。これには経済・財政見通しの不透明性、中央銀行の資産買い入れ見通しとの関連、人口動態や生産性などの長期要素が含まれる。
金融政策への含意
- 現在の金融政策は依然として非常に緩和的であり、今後数年間は実質金利のマイナス幅が大きい状態が続くと見込まれている。
- オーバーナイト政策金利は実質ゼロであり、FRBはある程度の期間、物価目標をわずかに上回る物価上昇率を許容する意図を示している。
- 投資家は少なくともここ2年程度は政策金利の上昇を見込んでいない。
- 資産買い入れ(QE)はタームプレミアムを縮小させ、リスク資産価格を支え、広範な金融環境の緩和を実現する主要な非伝統的金融政策ツールである。
- 5年先スタート5年物フォワードにおける実質リスクプレミアム上昇は、米国債供給増の見込みに関連した資産買い入れ見通しおよび資産買い入れを取り巻くリスクの見直しを反映していると解釈できる。
- フォワードガイダンスは政策金利の推移と資産買い入れに関する戦略の2側面で投資家の見方を形成してきた。短期金利の理解は比較的深まっているが、資産買い入れの見通しについて市場参加者の見方には大きな幅がある。
- ポリシーメッセージ:政策正常化プロセス開始が近づいた場合、FRBは資産買い入れのペースについて明確な情報をしっかりと伝達することが重要であり、これにより金融市場における不要なボラティリティを避けることが望ましい。
リスクと国際的波及
- 米国の長期金利の段階的な上昇は米国経済の力強い回復を反映しており、健全かつ歓迎すべき面がある。
- ただし、米国の急速かつ突然な金利上昇は世界に波及し得て、新興市場での混乱を招き、これらの国の経済回復を阻害する可能性がある。
- IMFの判断:基本シナリオとして、米国の金利がさらに上昇しても緩和的な金融環境が継続すると見込んでいるが、世界の金融環境のタイト化は依然としてリスクである。
- 世界経済の回復はマルチスピードであり、速度の異なる復興が続いている点がリスクを複雑にする。
出典: トビアス・エイドリアン, ロヒト・ゴエル, シェエリャー・マリク, ファビオ・マッシモ・ナタルッチ, 2021年4月23日