インフレが加速する中、戦争が世界経済の見通しを曇らせる
IMF Blog, April 19, 2022
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- インフレが加速する中、戦争が世界経済の見通しを曇らせる
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- Authors: Pierre-Olivier Gourinchas
- Published: April 19, 2022
要旨
- ロシアによるウクライナ侵攻を主因として、世界経済の見通しは大幅に下方改定された。
- 戦争は物価圧力を高め、成長を減速させ、政策トレードオフを一層困難にする。
- 中期的には、供給ショックの拡大、金融条件のタイト化、財政余地の縮小、地政学的分断のリスクが見られる。
成長見通しと下方修正
- IMFは世界経済の成長率予測を1月時点から下方改定し、2022年、2023年ともに3.6%とした。
- 欧州連合(EU)の今年の成長見通しは戦争の間接的影響により1.1%ポイント下方改定され、世界全体の下方改定幅への寄与度は2番目に大きい。
- ロシアとウクライナでは経済の急激な収縮が見込まれている。
- 先進国はパンデミック前のトレンド回復により多くの時間を要する見込みで、2021年に生じた先進国と新興市場国・発展途上国の間の格差が持続すると見られる。
インフレ、金融、市場伝播
- 戦争前から一次産品価格の高騰と需給不均衡によりインフレが加速していた。
- 米国と一部の欧州諸国では、労働市場が逼迫する中、インフレが40年以上ぶりの高水準に達している。
- インフレ期待が中央銀行の物価目標から逸脱するリスクが高まり、より積極的な金融引き締めが促される可能性がある。
- 侵攻直後に新興市場国と発展途上国で金融環境のタイト化が見られ、国際金融環境の急激なタイト化と資本流出の可能性が高まっている。
- 供給ショックは一次産品市場、貿易、金融リンケージを通じて広範囲に波及する。
一次産品、地域的影響、人道面
- ロシアは石油やガス、金属の主要供給国であり、ウクライナとともに小麦やトウモロコシの主要供給国でもある。
- 欧州やコーカサス・中央アジア、中東・北アフリカ、サブサハラアフリカの一次産品輸入国が最も影響を受ける。
- 食料・燃料価格の高騰は南北アメリカ大陸やその他のアジアを含む世界各地の低所得世帯に打撃を与える。
- 約500万人のウクライナ国民がポーランドやルーマニア、モルドバ、ハンガリーなど近隣諸国に避難しており、当該地域における経済的圧力を高めている。
財政・政策余地と国際制度リスク
- パンデミックで既に狭まった政策余地は、一次産品価格高騰と世界的な金利上昇によりさらに縮小する。特に石油や食料を輸入する新興市場国・発展途上国が影響を受ける。
- 戦争はテクノロジー基準、国際決済制度、準備通貨などで地政学的ブロック間の分断が進むリスクを高める。これにより長期的な効率性低下とボラティリティ増大が懸念される。
- 国際金融セーフティネットの機能強化が必要であり、短期的な流動性支援の確保や、包括的なソブリン債務再編が求められる国もある。G20の「債務措置に係る共通枠組み」はガイダンスを提供しているが、まだ成果を上げていない。
主な不確実性とシナリオ要因
- 制裁がロシアのエネルギー輸出にも拡大されれば、成長はさらに減速し、物価上昇率は予測を上回る可能性がある。
- 新たなウイルス変異株の出現やロックダウンの再発は、追加的な生産混乱を引き起こし得る。
- 地政学的分断が進むと、気候移行投資や財政持続性に関するトレードオフが悪化し、紛争と経済の変動性のリスクが高まる。
政策の優先事項と推奨措置
- 最も差し迫った優先事項は、戦争を終結させることである。
- 中央銀行は中長期的なインフレ期待の安定を維持できるよう、果断に政策を調整する必要がある。
- 金融政策見通しに関する明確なコミュニケーションとフォワードガイダンスが不可欠。
- 一部の国では財政収支を健全化する必要があるが、エネルギー・食料価格が高騰する中で脆弱層向けの的を絞った支援を妨げてはならない。
- 公的債務の安定化に向けた中期的枠組みに、必要な支援策を組み込むことが望ましい。
- 気候対応では、表明された野心と実際の政策措置の隔たりを埋める必要がある。各国の所得水準に応じた差異化された炭素価格の国際的下限設定が一手段として示唆される。
- 新型コロナ対策ツールを含む保健上の優先課題について、世界が公平にアクセスできるようにする多国間協調が重要である。
- 国際金融セーフティネットの強化と、効果的で迅速なソブリン債務再編の枠組みが求められる。
相互作用と長期的リスク
- 金利上昇と脆弱層保護の必要性が同時に存在することで、財政の持続可能性維持が困難になる。
- 財政余地の縮小は気候移行への投資を阻害し、気候危機対応が遅れると一次産品ショックに対する脆弱性が高まり、インフレと経済不安定化を助長する。
- 地政学的分断によりこれらのトレードオフが悪化し、長期的な効率性低下とボラティリティ増大のリスクが高まる。
著者
- ピエール・オリヴィエ・グランシャ(IMF経済顧問兼調査局長)。経歴の要点:
- IMF Economic Review 編集長(2009年から2016年)。
- Journal of International Economics マネージング・エディター(2017年から2019年)。
- American Economic Review 共同編集者(2019年から2022年)。
- Bernàcer Prize 受賞(2007年)。
- Prix du Meilleur Jeune Economiste 受賞(2008年)。
- フランス首相府経済分析会議(CAE)メンバー(2012年から2013年)。
- エコール・ポリテクニーク卒業、1996年にマサチューセッツ工科大学で経済学博士号取得、2003年よりカリフォルニア大学バークレー校経済学部に勤務。
出典: IMF ブログ「インフレが加速する中、戦争が世界経済の見通しを曇らせる」