強いドルに対して各国が取るべき対応
IMF Blog, October 14, 2022
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- Authors: Gita Gopinath, Pierre-Olivier Gourinchas
- Published: October 14, 2022
現状と主要な事実
- ドル高は2000年以降最高の水準に達している。年初以来、円に対して22%、ユーロに対して13%、新興市場国の通貨に対して6%それぞれ上昇している。
- 2000年以降、世界の商品輸出における米国のシェアは12%から8%に減少した一方、世界の輸出に使われる通貨におけるドルのシェアは40%前後で推移している。
- 平均して、ドル相場が10%上昇したとき、物価への転嫁によるインフレ率の上昇は1%程度である。
- 新興市場国と発展途上国が保有する合計外貨準備高は、今年の上半期に6%超減った。
伝播経路と脆弱性
- 為替を通じた輸入物価上昇はインフレを押し上げる。インフレ圧力は輸入依存度が高く、輸入品のインボイス通貨がドル建てである国で特に強い。
- バランスシート経路:すべてのクロスボーダー融資と国際債券の約半分は米ドル建てである。新興国では民間企業部門のドル建て債務の水準が高い。世界的な金利上昇は金融情勢のタイト化を招き、ドル高はこれを悪化させる。
- 市場混乱の兆候として、為替ヘッジプレミアの上昇や現地通貨建て調達プレミアの上昇が観察される。厚みのない通貨市場でプレミアムが大きく変動すると、マクロ経済や金融の不安定化につながる可能性がある。
ドル高の主因(ファンダメンタルズ)
- 第1の要因:米金利が急速に上昇していること。
- 第2の要因:エネルギー危機により、米国の交易条件が相対的に有利になったこと。
- ロシアのウクライナ侵攻による大規模な交易条件ショックが、特にユーロ圏に深刻な影響を与えている(ガス価格の高騰で交易条件はユーロ圏が誕生して以来、最悪の水準に低迷)。
- 一次産品輸出国の新興市場・発展途上国はプラスの交易条件ショックを受け、為替圧力が弱い国もある(例:ブラジルレアル、メキシコペソなど上昇している通貨)。
政策対応の基本線
- 基本方針:金融政策でインフレ率を目標に近づけつつ、為替レートの調整を許容する。為替介入がマクロ経済政策の適切な調整に取って代わってはならない。
- 財政政策:インフレ目標を犠牲にすることなく、最も脆弱な人々の支援に資する形で活用すべきである。
- 為替介入が適切な局面:為替変動が金融安定性リスクを著しく増大させ、または物価安定を維持する中央銀行の能力を大いに損なう場合には一時的な介入が必要となり得る。介入は金融政策の補助手段として扱う。
強靭性強化の勧め
- 十分な外貨準備を維持すること。可能であれば、先進国の中央銀行とのスワップ・ラインを復活させるべきである。
- 中程度の脆弱性にある健全な経済政策国は、将来の流動性ニーズに対応するためIMFの予防枠を積極的に活用すべきである。
- 多額の外貨建て債務を抱える国は、キャッシュフロー管理やマクロプルーデンス政策で外貨のミスマッチを減らし、債務管理オペレーションで満期構成を調整すべきである。
- 新興市場国の中央銀行は外貨準備を慎重に使用し、脆弱性に備えるべきである。
米国と国際協調の役割
- 米国の立場:米国のインフレ率が目標をはるかに上回る中では、金融引き締めが引き続き適切である。引き締めを怠ると、中央銀行の信頼性が損なわれ、インフレ期待の不安定化を招き、結果的に世界への波及が増大するリスクがある。
- しかしながら、FRBは大きな波及効果が米国経済に跳ね返ってくる可能性を肝に銘じるべきである。
- グローバルな安全資産プロバイダーとして、米国は適格な国との通貨スワップ・ラインの復活を検討しても良い。これらはFRBのFIMAレポファシリティーによるドル供給を有効に補完する可能性がある。
IMFの支援態勢
- IMFは加盟国と緊密に協力し、統合的な政策枠組み(IPF)を活用して、混乱期に適したマクロ経済政策の策定を支援する。
- 適格な国を対象とした予防的融資枠の提供に加え、国際収支上の問題を抱える加盟国に融資リソースを提供する態勢を整えている。
出典: ギータ・ゴピナート, ピエール・オリヴィエ・グランシャ, 2022年10月14日