アジアにおける景気回復軌道の分岐 軌道修正は可能
IMF Blog, February 24, 2021
Source details
- Canonical URL
- アジアにおける景気回復軌道の分岐 軌道修正は可能
Other formats
Bibliographic details
- Authors: Davide Furceri, Jonathan D Ostry, Anthony CK Tan
- Published: February 24, 2021
概要と主要統計
- IMFの「世界経済見通し(WEO)改訂見通し」によると、アジア地域の2020年の成長率は前回予測から0.7%ポイント上方修正され、マイナス1.5%と推定されている。
- 2021年の成長率予測は7.3%。
- 2022年の成長率予測は5.3%。
- GDP損失の地域内格差の例:
- 中国・台湾や日本では損失がゼロに近い。
- フィリピンでは20%ポイントを上回る。
- 東ティモールでは30%ポイントに達する。
- 第4四半期の成長率実績値と工業生産・貿易・小売業に関する高頻度経済指標からは景気回復の加速が示唆される。
景気回復の格差を生む4つの主要要因
- 保健要因:感染拡大防止措置の有効性や新型コロナの人的犠牲。早期の厳格な措置や検査・追跡体制の確立が回復の基盤形成に重要(オーストラリア、ベトナム、中国、韓国の事例)。
- 政策支援の規模と有効性:金融政策・財政政策による大規模な支援が経済的打撃を緩和(日本、ニュージーランドの顕著な例)。脆弱な世帯を対象にした措置(韓国の消費クーポン、オーストラリアの臨時労働者向け現金給付)が所得支援と感染抑制に寄与。
- 経済構造:観光業や対人接触の多いサービス業への依存が高い国ほど打撃が大きい。インフォーマル労働者や移民労働者、女性や若者が不均衡に被害を受ける(太平洋島嶼国、カンボジア、フィリピン、タイ)。
- インフォーマル性などの構造的要因:マニラ首都圏への高度集中、交通インフラの脆弱さ、医療部門能力の低さ、貧困、インフォーマル経済の割合の大きさが対策実施やターゲット支援を困難にし回復を圧迫(フィリピンの事例)。
今後の政策上の4つの優先事項
- ワクチンの広範な行き渡らせ:パンデミック終息に不可欠。発展途上国を資金・ロジスティクス・行政面で支援することが、回復軌道の分岐に対処し格差縮小に重要。
- 悪影響を受けた労働者や企業への継続的支援:民間国内需要の自立的回復が明確になるまで支援を続ける。高水準の不確実性の下で債務の持続可能性や金融セクターのリスクに注意を払いながら支援終了を遅らせることが求められる。
- 経済の転換:感染拡大防止措置の緩和に伴い民間需要喚起政策の有効性が高まると、広範な業界支援に代えて、より環境にやさしく、より包摂的かつ強靭で、デジタルな経済の構築を中核に据えるべき。労働力再配置を促すため、セーフティネットに加え就職カウンセリングや再訓練などの「トランポリン政策」を活用。
- 国際的資金支援の強化:太平洋島嶼国を含む低所得国は政策余地が限られており当面資金援助を必要とする。G20の共通枠組みを通じた国際協力は持続不可能な債務の再編と成長回復を支える可能性がある。
留意点と結論
- アジア太平洋地域は他地域に先駆けて危機を迎え、いくつかの国は非常に効果的に対応したと評価される一方で、GDP損失は依然未曾有の規模である。
- 女性や若者の労働参加率の低下と雇用見通しの悪化は深刻な長期的影響を残す可能性が高い。
- 今後も政策のリーダーシップが決定的に重要であり、ワクチン普及、継続的支援、構造転換、国際協力が分岐した回復軌道を修正する鍵となる。
出典: ジョナサン・D・オストリー、ダビデ・フルチェリ、アンソニー・C・K・タン(2021年2月24日)