気候変動 アジア太平洋という巨大なドミノ
IMF Blog, March 25, 2021
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- 気候変動 アジア太平洋という巨大なドミノ
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- Authors: Vitor Gaspar, Chang Yong Rhee
- Published: March 25, 2021
概要
- アジア太平洋地域は世界最大の人口を抱え、二酸化炭素排出量が最大であり、「世界の二酸化炭素の約半分」を排出している。
- アジアには排出量が多い中国(世界第1位)とインド(世界第3位)が含まれ、同地域の気候対策は世界的影響力を持つ。
- コロナ禍からの「グリーンな復興」は、持続可能な雇用と経済成長を促進する機会であり、短期的な追加支出は雇用を拡大し、長期的には持続可能性と強靭性を高める。
炭素税と補償の活用(主要提言)
- 炭素課税は排出量削減に有効だが、アジア太平洋地域ではほとんど活用されていない。
- 「比較的控えめな1トンあたり25ドルの炭素税を段階的に導入」した場合でも、パリ協定におけるアジア太平洋地域の全体目標を達成できる可能性があるとの指摘。
- ただし、パリ協定の目標は依然として不足であり、気温上昇を2℃未満に抑えるには「世界全体で1トンあたり50ドルから100ドルの炭素税が必要」とするモデルがある。
- 石炭など「最も汚染度の高い燃料に的を絞る」課税は、中国、インド、モンゴルで特に有効であり、大気汚染軽減の付加的利益として「2030年までに中国だけでも300万人の命を救える可能性」がある。
- 炭素税導入に伴い特に影響を受ける世帯・労働者・企業への補償が必要であり、補償は一律給付でもよいが「的を絞った給付」が理想的。
- 補償財源や政策手段の例:
- 炭素税収を最低所得保障スキームの増大、グリーン投資の財源、他の税の引下げに活用すること。
- 排出権取引制度で対象セクターを拡大すること。
- 電気自動車など大気汚染度の低い代替物への金銭的インセンティブを与えること。
- 大気質規制の厳格化。
気候変動への適応能力の強化(主要提言)
- 既往の排出量を踏まえると、ある程度の温暖化と気候変動は不可避であり、適応は喫緊の課題。
- 海面上昇の影響:今世紀半ばまでに「10億人が直接的影響を受けかねない」、多くの都市の浸水や国の消滅の恐れがある。
- 脆弱な地域・国の優先投資例:
- インフラ保全への投資
- 水資源の強靭化
- 乾燥地農業への順応
- マングローブ林の再生
- 自然災害の早期警報システムの改善
- 必要な投資規模の目安:適応には「平均で毎年対GDP比約3%の公共投資強化」が必要。
- 小規模・低排出国の負担例:IMFと世界銀行の評価では「トンガは10年間にわたり毎年6,700万ドルを気候変動への適応に支出」する必要があり、これは同国の「GDPの14%」に相当する。
コロナ禍からのグリーンな復興(主要提言)
- 復興資金を「より環境に配慮した活動」に確実に配分することで、コロナ禍を気候対策の好機とする。
- カーボンニュートラル移行のための投資例:
- 再生可能エネルギー
- 建物の改修
- 送電網の改良
- 電気自動車の推進
- 研究の奨励
- 適応が主要課題の国に対する投資例:
- インフラ事業の改良
- 既存資産の改修
- 海岸保全の推進
- 国際協力の強化策:
- 環境分野での技術移転の推進と資金供給
- 気候変動対策のための多国間基金の拡大
- IMFによる各国の経済評価への気候考慮の組み込みと能力開発支援により、政府職員が必要なスキルを備えられるよう支援
結語(メタファー)
- レイ・ブラッドベリの短編の例えを用い、「些細なこと」の連鎖が「巨大なドミノ」を倒し得ることを指摘し、アジア太平洋地域は「決して倒れることがあってはならない巨大なドミノ」であると強調。
- 世界がコロナ禍から復興する今が、より良い未来を実現するチャンスである、との結論。
出典: ヴィトール・ガスパール、李昌鏞(イ・チャンヨン), 2021年3月25日