欧州のインフレ見通しは、企業利益がどれだけ賃金上昇を吸収するかに左右される
IMF Blog, June 26, 2023
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- Authors: Niels-Jakob-Hansen, Frederik Toscani, Jing Zhou
- Published: June 26, 2023
現状の評価:インフレ上昇の要因配分
- 2022年初めからのインフレ上昇は企業利益と輸入価格の増大が大きな要因であり、企業利益は物価上昇の45%に寄与している。
- 輸入コストはインフレの約40%を占めている。
- 労働コストの寄与は25%である。
- 税はわずかにデフレ効果をもたらしている。
- ユーロ圏ではエネルギー輸入コストの高騰により、2022年10月にインフレ率が10.6%でピークに達したが、その後5月に6.1%まで低下した。
- コアインフレ率は依然として高止まりしており、ECBは政策金利を6月の利上げで3.5%に引き上げた(22年ぶりの高水準)。
労働所得と企業収益の動向
- 今年の第1四半期の実績では、利益率(インフレ調整後)はパンデミック前の水準を約1%上回った。
- 同時期の従業員の賃金(インフレ調整後)はトレンドを約2%下回っていた。
- 2022年の実質賃金は約5%低下しており、労働者は賃上げ要求に乗り出している。
- 賃金は物価に対して反応が遅れる性質があり、賃金交渉頻度の低さが遅れの一因となっている。
将来シナリオと試算(主要前提と結論)
- 前提:今後2年間に名目賃金が4.5%程度のペースで上昇し(2023年第1四半期の成長率をやや下回る水準)、同時期の労働生産性が広範にわたって横ばいに推移する。
- この仮定の下では、2025年中頃にECBの目標値(「2025年に2%」)までインフレ率を引き下げるには、企業利益率をパンデミック前の水準に戻す必要がある。
- 試算は、4月のWEOと同様に一次産品価格の下落が続くことを前提としている。
- 別の目標:2024年末までにパンデミック前の水準まで実質賃金を回復させるには賃金を5.5%上昇させる必要がある。
- もし賃金がこの5.5%まで上昇するならば、1990年代中頃以来最低水準まで利益率を引き下げなければ、インフレ率は目標値まで低下しないだろう(生産性が予想外に向上した場合は除く)。
政策含意と推奨される対応
- マクロ経済政策はインフレ期待の安定化と需要抑制の継続を図るために引き締めを維持する必要がある。
- 引き締めを維持することで、企業に利益率の圧迫を受け入れさせ、計画的なペースで実質賃金が回復することが期待される。
- 鍵となる問いは、どの程度迅速に賃上げが行われるか、そして企業が追加の値上げを行わずに賃上げを吸収できるか、である。
出典:IMF(ワーキングペーパーおよび世界経済見通しの分析を要約)