コア国債市場の強靭性を高める
IMF Blog, May 23, 2025
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- コア国債市場の強靭性を高める
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- Authors: Tobias Adrian, Kleopatra Nikolaou, Jason Wu
- Published: May 23, 2025
概要・主な所見
- 国債市場の円滑な機能は、特に金融市場のボラティリティが高まる局面で、より広範な資本市場の安全性と健全性にとって重要である。
- 世界のマクロ経済環境の急激な再評価や貿易政策の不確実性に伴い、債券市場では最近、急激な調整が見られたが、国債市場は「ボラティリティは高かったものの強靭性を示した」。
- 国債は社債、住宅ローン、デリバティブ等に影響を与えるベンチマークであり、多くの金融取引で担保として使用される。
- 市場機能の劣化に伴うリスクプレミアムの上昇は、利回りをファンダメンタルズに対して過度に上昇させ、効率的な資本配分を損なう可能性がある。
- 世界の政策当局は80兆ドル規模の国債市場を支えるために進展を遂げたが、強靭性を高めるためにはさらなる取り組みが必要である。
市場メカニズムと流動性の観察
- 流動性は多面的であり、ビッド・アスクのスプレッド、取引量、市場の深さなどの取り引きレベル指標と、モデルベースの指標がある。手法の違いにより異なるシグナルが得られる。
- 一部の指標(ビッド・アスクのスプレッド)は過去数年間の流動性圧力が軽度であったことを示唆する一方で、世界最大級の債券市場の一部ではイールドカーブのフィッティングエラーが大きくなっており、流動性低下を示唆している。
- 満期が似た債券間で利回りに格差が生じる事例は、流動性に影響を与えるメカニズム理解の必要性を浮き彫りにする。
- ストレス時にはコア債券市場の流動性が急速になくなり、日々の流動性も低下しかねないとの示唆がある。
ディーラー(プライマリーディーラー)に関する所見
- プライマリーディーラーは顧客に代わってオークション入札、流通市場の流動性サポートを行う主要な仲介役であり、多くが大手銀行の子会社で大規模なバランスシートを有する。
- ディーラーの仲介業務のダイナミクスは流動性に大きな影響を与える。市場が不安定化すると、バリュー・アット・リスク手法やその他のリスク管理指標の上昇により、ディーラーの仲介機能が脅かされ得る。
- 近年、主要な銀行ディーラーは国債の保有を増やしているが、発行残高の規模拡大には比例していない。例示される数値:
- 英国では、2023年10月の「国際金融安定性報告書(GFSR)」で示されたように、英国債の発行の増加は、英国の銀行ディーラーのバランスシートの2倍の速さで伸びた。
- 米国債の発行残高は2023年までの15年間で約4倍に増加した一方で、米国の銀行ディーラーのバランスシートは拡大幅がわずか1.5倍だった。
- その結果、米国債はプライマリーディーラーが保有する有価証券の約70%を占め、過去10年超で最高のシェアとなっている。
- 債券発行による資金調達の約4分の3が米国債を担保にしている。
- ディーラーの集中は、特にストレス時に仲介活動を抑制するリスクを高める。
ノンバンク金融機関(NBFI)とマーケットメーキング
- 一部のNBFI(オープンエンド型投資信託、上場投資信託、保険会社、年金基金等)は国債の主要な買い手である。主要な商社や一部のヘッジファンドは特定の市場セグメントで重要なマーケットメーカーとなっている。
- 電子取引への移行は、技術的専門性を持つ主要な商社が市場シェアを拡大する追い風となっている。
- NBFIのマーケットメーカーは、銀行ディーラーへの依存を減らし仲介業者数を増やすことで流動性改善に貢献し得るが、銀行ディーラーに比べて「国債市場を支える使命が総じて弱い」ため、ストレス時に活動を即座に抑制する可能性がある。過去の具体例:
- 2014年の米国債市場の「フラッシュラリー」
- 2020年のパンデミック勃発時の世界的な「キャッシュへの駆け込み」
- NBFIは規制が緩くデータ報告要件も少ない傾向があり、NBFIの存在感が高まるにつれ市場の強靭性は不確実性が高く不透明になる。
政策進捗と推奨
- 中央銀行は資産買い入れや、国債を担保とする貸出制度(レポ)など、新しいツールで債券市場の安定化に貢献しているが、これらは構造的強靭性対策の代替ではない。
- 中央清算機関(CCP)はカウンターパーティおよびデフォルトリスクを軽減し、透明性を改善する。仲介業者はカウンターパーティ間でロング・ショートのポジションを相殺でき、バランスシート効率と能力を向上させる。
- 中央清算の採用状況は国により異なる例:
- 日本では現金取引とレポ取引のかなりの部分が一元的に清算される。
- 米国は最近になってこうしたマンデートを導入した。
- ドイツと英国では一部のレポ取引は一元的に清算されるが現金取引はそうではない。
- タイムリーで包括的な市場データは市場機能評価に非常に重要であり、最近のボラティリティはデータギャップや報告の遅れがリアルタイムの要因を見えにくくしていることを示している。ディーラーやヘッジファンド等について重要なデータギャップが依然存在するため、国債の流動性と機能に関するタイムリーで一貫性のあるデータ確保が必要である。
- 政策当局はマーケットメーキングの変化、特にNBFIの役割拡大についてさらに評価を行うべきである。評価項目の例:NBFIの財務健全性、サイバー攻撃などに対するオペレーショナル・レジリエンス、債券市場ストレス時の行動様式。
- 銀行ディーラーは引き続き国債市場にとって必要不可欠である可能性が高いため、ストレス下でも市場にサービスを提供するには、安定期に資本と流動性を構築し続ける必要がある。そのためには、国際的に合意された銀行向けの規制改革を完了させることが鍵となる。
出典: トビアス・エイドリアン, クレオパトラ・ニコラウ, ジェイソン・ウー(2025年5月23日)