アジア経済のレジリエンスが、エネルギーショックによって試されている
IMF Blog, April 16, 2026
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- アジア経済のレジリエンスが、エネルギーショックによって試されている
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- Authors: Andrea Pescatori, Krishna Srinivasan
- Published: April 16, 2026
主な見解
- アジアは盤石な状態で2026年を迎えたが、中東での戦争とそれに伴うエネルギー供給ショックにより、インフレ率が上昇し、対外収支が悪化し、政策の選択肢が狭まっている。
- エネルギーショックが一過性に終わると仮定した参照予測では、地域の成長率は昨年の5%から今年は4.4%、来年は4.2%へと減速すると予測されている。
- アジアの成長のうち、中国とインドが70%を占めると見られる。
- インフレ率は昨年の1.4%から今年は2.6%へと上昇し、これは1月の予測を0.4%ポイント上回っている。
- ショックが長引いたり強まったりする場合、2027年までの成長率は累積で1%から2%押し下げられる可能性がある。
現状と地域のレジリエンス
- 半導体や関連製品の需要は旺盛で、韓国やマレーシア、シンガポールなどテックサプライチェーンに深く組み込まれた国々が恩恵を受けている。
- 内需の回復は国によって差があり、投資は不確実性と各国固有のショックの下で軟調である。
- アジアは世界の原油の約38%と天然ガスの24%を消費しており、世界の精製能力の約35%を占める主要な精製地域である(その大部分は中国とインド、韓国、シンガポールに集中)。
エネルギー依存と短期的影響の程度
- アジアの原油・ガス消費量は対GDP比約4%に上り、欧州のほぼ2倍である。
- マレーシアやタイなどでは、輸送や工業が重要であり、その比率が10%を上回る国もある。
- 原油・ガスの純輸入が経済産出量の約2.5%に相当することが、短期的な見通しに暗い影を投げかけている。
- ホルムズ海峡経由で輸出されるLNGの約80%がアジア向けであり、今回の紛争は精製業者、公益事業者、工場に直接的なショックを与えている。
伝播経路(主要メカニズム)
- 交易条件の悪化:エネルギー価格高騰により、原油・ガスの純輸入国の交易条件が悪化し、所得が化石燃料輸出国へ移転する。
- 実質所得の低下:燃料・電力価格の上昇は人々の実質所得を減らす。
- 生産コストの上昇と二次的インフレ:エネルギーは輸送、工業、石油化学、肥料の投入要素であり、コスト上昇が企業利益を圧縮し、時間とともに二次的インフレ圧力を生む。
- 金融を通じた増幅:債券利回り上昇、ドル高、通貨安、リスクプレミアム上昇がショックを増幅する。
- 各国固有要因(生産の化石燃料強度、石油価格制度等)が影響度を左右する。
見通しの変化とリスクシナリオ
- 参照予測(ベースライン):成長率は1月時点から概ね変化していないが、インフレ率上昇、対外収支悪化、政策余地の縮小、下振れリスクの上昇が見られる。
- 地域別の見通し:
- アジアの新興市場国は今年に約0.5%ポイント低下して4.9%となった後、来年は横ばいで推移すると予測されている。
- 韓国は技術サイクルとの強い結びつきにより例外的に恩恵を受けている。
- 東南アジアと太平洋島嶼国も成長が減速すると見られるが、大きなばらつきがある。
- インフレの上昇:
- アジアの新興市場国では、インフレ率が2025年の1.1%から2026年は2.6%へ加速すると予測される(中国とインドの上方改定が一因)。
- 先進国ではばらつきがあり、日本ではインフレ圧力が緩和、オーストラリアでは引き続き根強い。
- 悪化シナリオ(「世界経済見通し」の悪化シナリオ):
- エネルギー供給ショックが参照シナリオより大きく、よりゆっくり収束する場合、域内主要経済国のGDP成長率は2026年に参照シナリオと比較してほぼ1%ポイント低下する。
- 輸入依存度が高く化石燃料強度の高い国では損失がより大きい。
- 深刻シナリオ:
- ショックがさらに大きく、2027年に入ってだいぶ経つまで続く場合、主要国の成長率は参照シナリオと比べて、2027年までに累積で約2%ポイント抑制される。
- 2027年の総合インフレ率は2.3%ポイント高くなる。
- 特に脆弱な国々の特徴:
- 輸入エネルギー依存度が高い、財政余地が限定的、送金や観光、肥料等で中東紛争へのエクスポージャーが大きい国が相対的に大きな影響を受ける。
- 例:スリランカは原油輸入のほか湾岸地域からの送金や観光にも依存。ラオス、ネパール、ミャンマー等の農業依存国は肥料コスト上昇で所得減・食料価格高騰のリスク。
政策対応と優先事項(推奨)
- 財政支援の設計:
- 支援は脆弱な人々や存続可能な企業に的を絞った時限的なものであるべき。
- 現金給付は個人所得を補完し得る。
- 支援は予算の優先順位の見直しで賄う必要がある。パンデミック以降財政余地が減少し、利払い費負担が増大している地域で特に重要。
- 幅広い燃料補助金や減税、一般的な価格上限設定は短期的にインフレを緩和できても、コストが大きく、多くの場合逆進的で、撤回が困難。
- 既存の燃料補助金の費用は、エネルギー価格上昇によってさらに急増する可能性がある。
- 中央銀行政策:
- 現時点では多くの国でインフレ期待は概ね安定しているため、当面の上昇を静観する余地があるが、金融政策は機動的であるべき。
- エネルギーショックが長期化すれば通貨安と持続的インフレの恐れがあるため、対応が必要。
- 国別の指摘:日本はインフレ期待が目標近くに上昇しており、中央銀行はエネルギーショックの第一段階を静観して緩和の縮小を継続できる。一方、オーストラリアはインフレ率が目標を上回り、ショックを静観する余地が限定的である。タイやフィリピンでは、インフレ率が目標を下回っているため、今後の緩和余地を確保するために利下げを一旦停止できる。
- 為替政策:
- 為替レートの柔軟性が第一の防衛策であるべきで、介入は無秩序な市場への対処に限定し、IMFの「統合的な政策枠組み」に沿うべきである。
- 支援余地の差:
- スリランカとカンボジアは支援提供が可能だが、的を絞り財政余地の再構築・維持と整合的でなければならない。
- バングラデシュのように制約がより大きい国は予算余裕が限定的で、広範な支援の余地が狭まっている。
中長期の優先事項と構造改革
- 社会的セーフティネットの強化:広範な補助金に頼らず人々を保護するための強化が重要。
- 雇用創出型の成長と内需拡大:外需依存を低下させるための政策バランス。
- 労働市場とスキル政策:多くの国で若年層の失業率が依然高く、スキルのミスマッチが生産性と包摂性を抑制している。AIの導入は不均一であれば格差を拡大しかねないが、適切なスキル政策と包摂性、がナンスに関する政策が伴えば機会を拡大する可能性がある。
- 貿易・投資統合の深化:地域の貿易とサービス、投資の統合が進めば強靭性が強化される。
- エネルギー投資:エネルギー効率、電力網、代替エネルギーへの投資は将来の燃料輸入ショックへの備えとして有用である。
出典: アジア経済のレジリエンスが、エネルギーショックによって試されている(2026年4月16日)