今こそ屋根を修理すべき時
IMF News, October 5, 2017
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- Published: October 5, 2017
現状評価と景気循環
- 世界経済の回復がようやく根付きつつある。
- IMFの7月見通し: 2017年は3.5%、2018年は3.6%。
- GDPベースで世界の4分の3近くの国々が景気上昇局面にある。
- 直近10年間で最も多くの国々で経済成長が加速している。
- ただし完全な回復ではない:
- 昨年、全世界の約4分の1に相当する47か国で1人あたりのGDPがマイナス成長だった。
- 多くの人々が回復の恩恵に与れていない。
- リスクと懸念:
- 多くの国が高水準の債務を抱えている。
- 中国で信用が急速に膨張している。
- 金融市場の過剰なリスクテイク。
- 自然災害や地政学的緊張の高まり(例:カリブ海諸国、朝鮮半島)。
政策判断のタイミング(「太陽が出ている間に屋根を修理」)
- 好機を逃すと:
- 成長の弱化、雇用不足、セーフティネットの機能不全、金融システムの脆弱化を招く可能性がある。
- IMFの調査結果:
- 経済の健全度が高い時ほど、改革で生み出せる成果が大きく、より簡単に改革を実行できる[1]。
屋根の修理に必要なツール(政策パッケージ)
- 金融政策:
- 多くの先進国はほぼ完全雇用でインフレ率は依然低い。金融政策は回復を後押しすべき。
- 同時に、緩和的環境が脆弱性(民間部門の過剰債務)を高めるリスクがあるため、中央銀行は計画を明確に説明し、正常化を円滑に実行する必要がある。
- 財政政策:
- 健全な財政と組み合わせた金融政策が長期的・持続的成長に最も効果的。
- 財政余力のある国(例:ドイツ、韓国)は投資拡大の好機。
- 公的債務が大きい国は、成長期を活用して公的債務の対GDP比率を減らし、レジリエンスを高める必要がある。
- 低所得国でも公的債務抑制は不可欠。近年、低所得国で公的債務が顕著に増加している。
- 構造改革:
- 金融・財政政策には限界があり、所得引上げ、雇用創出、人々の未来への投資といった構造改革も必要。
所得の引き上げと雇用創出(具体的事例と効果)
- 生産性の停滞:
- 経済大国での生産性全体の伸び率は危機前の平均値の約1%から0.3%へ低下。
- 生産性向上の必要施策:
- 官僚主義の是正、研究開発費の増加、インフラ投資。
- 需要喚起の重要性:
- 需要低迷が賃金停滞、失業率の高止まり、非自発的パートタイム雇用と結びつく国がある。需要を増やすことが賃金上昇を支える。
- 労働市場改革の事例:
- スペイン: 雇用の柔軟性が高まった。
- メキシコ: 規制改正により若者が保護対象の仕事に就きやすくなり、医療保険加入が促進された。
- 日本: 育児休業給付金の支給率が50%から67%に引き上げられ、100万人超の女性の労働参加を促す取り組みが進行中。
- 女性の労働参加によるGDP効果(仮定に基づく推計):
- アメリカで 5%
- インドで27%
- エジプトで 34%
人々の未来への投資(教育・再訓練・技術変化への備え)
- 教育と機会均等:
- 教育や医療への不平等が格差固定化の重要な要因。
- 事例: インドで医療アクセスが改善、韓国で成績不振校の教師へボーナス導入、アメリカでSTEM分野の女子学生増加施策。
- 生涯学習と職業訓練:
- ドイツの職業実習制度は長年の模範。
- カナダの事例ではOJTが座学より効果的である可能性が示唆されている。
- 自動化と格差:
- 自動化は技術所有者に効率を与える一方、非熟練労働者の職喪失で格差を深刻化させる可能性がある。
- 税制と再分配の議論:
- IMFはユニバーサル・ベーシックインカムなど新概念から、税制の累進度強化といった主流政策まで調査。
- 最高限界税率: 1981年に先進国平均で62%だったが、2015年には35%。
- 来週公表予定のIMF新調査では、先進国の一部は経済成長を減速させることなく、最高税率を引き上げることができる可能性が示されている[5]。
国際協力の役割(腐敗、金融規制、気候変動)
- グローバル課題にはグローバルな解決が必要。
- 腐敗:
- 贈賄のコストは毎年1.5兆ドル強、世界のGDPの2%近くと推定される[7]。
- 贈賄、公金横領、法人脱税、資金洗浄、テロ資金供与は国際的側面を含む問題。
- IMFは加盟国支援のための取り組みを強化することを約束している[6]。
- 金融規制と国際枠組み:
- 世界金融危機後、金融安定理事会などを通じて銀行資本と流動性水準が高まった。
- 規制と導入状況は見直すべき部分があるかもしれないが、達成した改革を守る必要がある。
- 貿易:
- 過去30年間で貿易は成長を支え、貧困削減に貢献した一方、影響を受けた人々もいる。
- 保護主義は非生産的だが、透明性向上やシステム改善で貿易の恩恵を広げる措置は可能。
- 気候変動:
- IMFの試算: 年間平均気温が25℃の国で気温が 1℃上昇すると、1人当たりのGDPが1.5%近く減少しかねない(バングラデッシュの例)[8]。
- 地球温暖化の人的原因を断ち切るには国際協力が不可欠。
政策提言(要点のまとめ)
- 今あるツールを総動員して早急に行動を起こすこと。
- 金融政策の正常化を透明に、各国の事情に応じて円滑に実行すること。
- 財政余力がある国は投資を拡大し、公的債務が大きい国は成長期を活用して債務比率を低減すること。
- 労働市場改革、教育・職業訓練への投資、女性の労働参加促進を通じて所得と雇用を引き上げること。
- 税制や再分配の在り方を含む構造的議論を行い、格差是正と成長の両立を目指すこと。
- 腐敗対策、金融規制の堅持・見直し、気候変動対策などで国際協力を強化すること。
- IMFは対話の場とリソースを提供し、各国のより強靭な経済構築を支援できる重要なツールの一部である。
出典: 国際通貨基金 専務理事 クリスティーヌ・ラガルド「今こそ屋根を修理すべき時」スピーチ(ハーバード大学 — ケネディ行政大学院, 2017年10月5日)
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References
- ニュース
- 中華人民共和国 とIMF
- 2017年9月世界経済見通し 第2章
- [スタッフ・ディスカッション・ノート「女性と雇用、経済 男女の機会均等とマクロ経済的利点 (Women, Work, and
the Economy: Macroeconomic Gains from Gender Equity)」](https://www.imf.org/en/Publications/Staff-Discussion-Notes/Issues/2016/12/31/Women-Work-and-the-Economy-Macroeconomic-Gains-from-Gender-Equity-40915)
- [スタッフディスカッション・ノート 「腐敗: そのコストと軽減戦略(Corruption: Costs and
Mitigating Strategies)」](http://www.imf.org/external/ns/cs.aspx?id=353)