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日本:2026年対日4条協議終了にあたっての声明
2026年2月17日
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IMFコミュニケーション局
メディア・リレーションズ
プレスオフィサー: Randa Elnagar
電話:+1 202 623-7100Eメール: MEDIA@IMF.org
「協議終了にあたっての声明」は、国際通貨基金(IMF)職員による公式訪問(大半の場合は対加盟国)の終了に伴い発表されるもので、職員による初期評価を示すものである。IMF訪問団の派遣は、国際通貨基金協定第4条に基づき定期的に(通常は年1回)行われる協議の一環として、IMF資金の利用(IMFからの借り入れ)の要請に関連して、あるいは、スタッフ・モニタリング・プログラムの協議のため、または、職員によるその他の経済情勢モニタリングの一環として行われる。
各国当局はこの声明の公表に同意している。同声明における見解はIMF職員の見解を示すもので、必ずしもIMF理事会の見解を示すものではない。同訪問の初期評価を基に、IMF職員は報告書を作成する。その報告書はマネジメントの承認を受け、IMF理事会に協議や決定のための資料として提出される。
ワシントンDC – 2026年2月17日[1]
日本経済は世界的なショックに直面する中で、目覚ましい強靭性を示してきたほか、産出量が潜在産出量を上回るペースで持続的に伸びている。内需は堅調で、失業率は低いままである。物価上昇率は、ほぼゼロだった期間が30年間続いた後、ここ3年半にわたって日本銀行の物価目標である2%を上回り続けている。名目賃金は歴史的なペースで上昇しているものの、高インフレによって家計の購買力が低下する中、生活費に関する懸念が根強く残っている。日本は引き続き、高齢化と多額の公的債務の課題に直面している。需給ギャップがプラスで、物価上昇率が目標を上回っている水準から目標に向かって収れんすると予想される中、財政政策と金融政策は、財政バッファーを再構築しつつ物価とGDPの安定を維持するように調整されるべきである。労働市場のひっ迫が、持続的な実質賃金上昇につながるように、労働市場を改革する必要がある。
最近の動向と見通し、そしてリスク
成長は底堅く、2025年前半には潜在成長率を上回る水準まで回復したが、その後、緩やかになり始めている。不確実性の高まりや米国の関税導入にもかかわらず、内需は依然として堅調で、設備投資や消費も好調である。2025年の物価上昇率は、コメ価格の高騰によって押し上げられて、予想を超え、インフレ圧力は、幅広い製品に波及している。サービス価格の上昇はより緩やかであり、2025年の輸入価格平均が下落する中、円安が総合インフレ率に与える影響は限定的であった。中期的なインフレ期待は上昇しており、日銀の目標と徐々に一致してきている。労働市場のひっ迫が一因で名目賃金の伸びがここ数十年ぶりのペースを超えたが、総合インフレ率が賃金の伸びを上回る中で、実質賃金は引き続き下がっている。
経済活動は、2026年も堅調に推移するが、外需が弱まるにつれて緩やかになる予測だ。民間投資は、金融環境が徐々にタイト化する中でも一段と増加すると見込まれ、個人消費は、労働力不足の継続とインフレの緩和による実質賃金の緩やかな上昇に支えられることになる。財政政策は、補正予算に関するこれまでの慣行が継続するという職員の試算上の仮定に基づくと、2026年は財政拡張的なスタンスが予想される。成長率が2025年から2026年にかけて潜在成長率を上回ったことで需給ギャップはプラスになっているが、金融・財政政策が中立的になるにつれて、2027年末までに需給ギャップが縮小すると予測される。物価上昇率は、世界的に石油・食料価格が落ち着き、国内のコメ価格が安定し、物価抑制のための財政措置の効果を反映して、2026年に和らぎ、2027年には日銀の目標に収れんすると予想されている。コアインフレ率は、職員が現在予測している、より緩和的な財政政策のスタンスを一部反映して、以前の予想よりも持続的に今の水準に留まる見込みだ。
経常黒字は、日本の多額の対外純資産から得られる所得収支の黒字が主な要因で、2026年も堅調に推移すると予測されている。対外資産の収益率が正常化するにつれて、中期的には若干縮小すると見込まれる。職員は、米国経済に5500億ドルを投資するという日本のコミットメントが、対外投資と二国間貿易を促進すると予測している。米国向け対外投資の規模が拡大するにつれて、他地域への投資がある程度縮小する可能性がある。対外ポジションは暫定的に、中期的なファンダメンタルズおよび望ましい政策が示唆する水準と概ね一致していると評価される。
日本の金融環境は、十分な流動性が維持されていることと、クレジットスプレッドの小ささ、総じて良好な市場機能に支えられ、概して中立的である。株価は、好調な企業収益とコーポレートガバナンス改革の進展を背景に、2025年に急上昇した。ソブリン債の利回りは、予想政策金利とタームプレミアムの上昇にけん引されて急騰した。タームプレミアムの上昇は、地政学的緊張の高まりや、国内政治の不確実性や財政リスクの高まりに係る認識を反映している。近年、円とドルの為替レートは概ね日米の利回り格差に連動していたが、2025年半ば以降、両者は一貫して乖離している。円先物市場で見られるポジションは、利回り格差以外の要因による円の動きに関連している。
日本における、資本取引の開放性と、多額の国債発行残高、大きな純国際投資ポジションは、国際金融市場との相互連関を生み出し、米国やユーロ圏が発端となるショックが日本市場の情勢に影響を及ぼすのと同様に、日本国債市場の情勢が海外市場に波及する伝達経路となっている。明確なコミュニケーションと、国内の安定を達成するために調整されたプルーデントな政策設定(後述)は、資産価格の負の反応と国外への波及効果を軽減することができる。
経済見通しのリスクは下方に傾いている。地経学的な分断の深刻化や貿易制限の強化(最近の日中関係の緊張など)によって、サプライチェーンがさらに混乱し、景況感が悪化しかねない。金融環境が突然悪化した場合、信頼感と内需が損われる可能性がある。国内では、実質賃金の伸びがプラスに転じない場合、消費が低迷することが依然として主なリスクである。
インフレに対するリスクは均衡している。下振れリスクとしては、賃金の伸びが予想を下回ることで物価上昇の勢いが抑制され、インフレ期待が目標水準に向かって上昇していた最近の動きが逆転する可能性がある。上振れリスクとしては、より拡張的な財政政策が需要圧力とコアインフレ率を押し上げる可能性がある。また、総合インフレ率が予想よりも強い状態が継続する中で繰り返される予測の誤りは、インフレの進行プロセスがより長期化しているリスクを示唆する。
経済政策
金融政策と外国為替政策
日銀は金融緩和を適切に解除しつつあり、段階的な利上げにより政策金利が中立的な水準に移行し続けるだろう。現在の政策金利は、職員の中立金利の推定値を下回っている。ただし、日本が長期間にわたり政策金利を実効的下限付近で維持してきたことから、この推定値は大きな不確実性を伴う。日銀は、外的ショックの影響が確認された時点で利上げを一時停止し、日本経済が強靭性を示し、物価上昇率が日銀の目標水準で安定する兆しが高まる中で12月に利上げを再開するなど、職員は、日銀のここ1年間の政策金利決定を歓迎する。ベースライン予測が引き続き実現するにつれて、2027年に政策金利が中立的なスタンスに達するよう、緩和政策の解除を続けるべきである。インフレ期待は、長期にわたる日本の低インフレによって形成されているため、インフレ期待を目標水準で再度安定化するには、金融政策を徐々に正常化することが引き続き適切である。日銀が独立性と信頼性を維持することは、インフレ期待を十分に安定させることに資するだろう。外的環境や中立金利、金融政策の波及に関する不確実性の高まりを踏まえると、柔軟かつデータに依拠したアプローチが引き続き適切である。
日銀のバランスシートの縮小は順調に進んでいる。バランスシート調整のペースは、市場機能の改善と、日銀の国債市場での存在の大きさを考慮した混乱リスクの軽減との間で適切なバランスがとられている。定期的な見直しという観点から、日銀は、金融環境が望ましい金融政策スタンスと矛盾する場合には、買い入れスケジュールのペースと満期構成を変更する態勢を整えておくべきである。日銀は今後、バランスシートの長期的な規模と構成についてのアプローチを明確にすることが重要になる。
柔軟な為替相場制度に当局が引き続きコミットしていることを歓迎する。為替レートの柔軟性は引き続き、外的ショックを吸収することを助け、金融政策が物価安定に焦点を当てることを支えるべきである。同時に、それはファンダメンタルズに沿った対外ポジションの維持も助ける。
財政政策
パンデミック後の日本の財政健全化は、堅調な歳入実績と、さらに重要な点として、歳出の抑制によって、支えられてきた。2025年の一般政府の基礎的財政赤字は、パンデミック前の2019年よりも小さいと推定され、G7諸国の中で最も低い部類に入る。名目賃金が底堅く伸び、企業収益が堅調な中で、税収が好調だったことが歳入の底堅さを支えた。歳出は、建設部門における供給のボトルネックが一因となって、またパンデミック関連の支援が段階的に縮小されたこともあって、抑制され、緩やかな伸びにとどまった。2025年12月、当局は生活費の上昇に対処するためのいくつかの措置を含む大規模な補正予算を承認した。名目成長率が実効金利を上回ると、公的債務対GDP比が低下する一因となるが、日本の総債務は高止まりし(主要国の中で最も高い水準)、歳出圧力が高まるにつれて増加する見込みだ。
短期的には財政政策のさらなる緩和は控えるべきであり、最近の財政健全化の成果を保持するべきである。経済が潜在成長率を上回っているため、短期的には、景気循環的な圧力を助長することを避けるために、より中立的な財政スタンスが推奨される。日本には財政余地がある程度あるものの、バッファーを損なわず、ショックに対応する能力を維持するためには、財政規律が必要であり、これは安定した日本国債市場の状況にも寄与するだろう。政府当局は消費税の減税を避けるべきである。的を絞らないこうした措置は財政余地を狭め、財政リスクを高める。生活費の上昇や大規模な外的ショックの影響を最も受ける脆弱な世帯や企業への支援は、予算に中立的で、一時的かつこれらのグループに的を絞ったものでなければならない。当局は、飲食料品に対する消費税を2年間停止する案について、追加の国債発行を必要としない財源確保策と併せて議論を進めている。消費税の減税を生活必需品に限定し、かつ時限的な措置とすることは、財政コストの抑制に資するだろう。限られた公的資源を踏まえると、2年間の停止措置後の導入を当局が議論している給付付き税額控除は、適切に設計されれば、日本の最も脆弱な世帯により的を絞った支援を提供できるだろう。
長期的には、一般政府の基礎的財政赤字が拡大し、歳出圧力が増大し、債務の増加につながると予測されている。利払い費は、債務がより高い金利で借り換えられるにつれて増加し、2025年から2031年にかけて倍増すると予測されている。医療技術の高度化や介護費の上昇、高齢化による人口動態上の圧力を反映して、医療・介護支出は増加すると予測されている。債務水準の高止まりと財政収支の悪化とが相まって、日本経済はさまざまなショックにさらされることとなる。
歳出圧力を相殺し、財政バッファーを再構築し、債務対GDP比を着実に引き下げるために、職員は、日本が2026年から成長に配慮した形で財政調整を行うことを提言している。歳出合理化は効率性を向上させ、人的資本と物的資本への質の高い投資を維持する必要がある。現在の歳出は、パンデミック前と比較して高止まりしており、エネルギー補助金などの、よく的が絞られていない補助金を廃止する必要性が浮き彫りになっている。
信頼性のある中期的な財政枠組みが必要であり、それには明確に定義された財政アンカーを含めなければならず、各年度の予算と中期的な計画の間に強力なリンクを確立し、財政に関する意思決定がそのアンカーによって導かれるようにする必要がある。補正予算の編成は、自動安定化装置を超えるような予期せぬ大きなショックへの対応に限定すべきである。これは平時に正当化されない景気刺激を行うことも防ぐほか、日本国債市場における乱高下を避けることにも資する。地方政府は、一般政府支出の大きな割合を占めており、裁量的な財政政策の実施において重要な役割を果たすことから、地方レベルでの財政枠組みの強化が引き続き優先事項である。国の基金のガバナンスを改善することも、歳出管理と予算規律を守るために不可欠である。
金融安定性
日本の金融システムは、銀行・保険部門全体における豊富な資本と流動性に支えられ、総じて強靭性を維持している。政策金利の段階的な引上げにより純金利マージンが上昇し、収益性が下支えされている。資本バッファーは、国際的に業務展開する銀行と国内銀行の双方において依然として底堅い。大手銀行は引き続き、ポートフォリオのリバランスと資金調達源の多様化を通じて、金利リスクを積極的に管理している。保険部門も同様に資本を十分に有し、収益性が高い。国内金利の上昇により投資マージンが向上し、市場のボラティリティがある中でも評価損益は全体として管理可能な水準にある。
全体的なシステミックリスクは、2025年の4条協議から大きな変化はないが、その発生源に変化が生じている。国際金融環境がタイト化すれば、日本国債の利回りが一段と上昇したり、高水準にある資産価格が調整されたりして、評価損や資金調達コストの上昇を招き、一部の金融機関や企業に負担をかける可能性がある。2024年の金融セクター評価プログラム(FSAP)で特定された構造的な脆弱性は依然として残っている。これには、銀行や保険会社のバランスシートの相当部分を占める時価評価証券、外貨やクロスカレンシー資金調達のエクスポージャー、一部の商業用不動産の脆弱性が含まれる。保険会社は十分な資本を有しているものの、予想よりも早く利回りが上昇すれば、保有資産の評価損が顕在化し、流動性ニーズが高まる可能性がある。 地方銀行は総じて強靭性を維持しているが、ショック吸収能力がより限られていること、有価証券の含み損が大きいこと、地方の与信需要が構造的に弱いこと、人口動態による逆風があることを反映し、大手銀行よりも脆弱性が高い。
2024年のFSAPにおける主要な提言を踏まえ、金融システムの強靭性を強化しリスクを軽減するためには、システミックリスクの監視と、マクロプルーデンス枠組み、金融セーフティネット、金融部門の監督の強化が引き続き不可欠である。加えて、日本の金融部門の外貨エクスポージャーが大きく、外国のノンバンク金融仲介機関との相互連関性が高まっていることを踏まえると、特に為替デリバティブのポジションや外国投資家のレバレッジをかけた投資活動に関して、残存するデータギャップを埋めることが極めて重要である。
日銀がバランスシートの規模を縮小する中で、利回りのボラティリティが高まり、投資家の需要がシフトしていることを踏まえると、日本国債市場における流動性と投資家のポジショニングを注視する必要がある。生命保険会社は、新たなソルベンシー規制を控え、デュレーションギャップを大幅に縮小しており、超長期国債の購入を減らしている。外国投資家が日本国債市場で果たす役割は増大しており、市場機能の向上に貢献しているが、財政ニュースや世界的な動向に対する日本国債の感度が高まっている可能性がある。ボラティリティの高まりが市場の流動性を損なう場合には、日銀は一時的な日本国債買い入れなど、的を絞った例外的介入を行う態勢を整えておくべきであり、市場機能が損なわれないよう明確なコミュニケーションを取るべきである。長期国債の需要が一段と弱まった場合には、国債発行をより短期の年限に向け更にリバランスできるよう、柔軟性を維持する必要がある。
構造政策
人手不足が深刻化する中でも、国内消費を支える重要な要素である実質賃金は、伸び悩んでいる。1996年以降、生産性と賃金の差が大幅に拡大してきた。この動きを止めるには、労働移動を高めるための労働市場改革が必要となる。労働移動が少ないと、企業間のスキル獲得競争が欠け、労働者にとって選択肢が乏しくなり、結果として労働者の交渉力が低下する。ジョブ型雇用と能力給へ移行することで、労働移動を促進し、生産性を改善し、賃金の伸びを支えられるであろう。近年、若い労働者がけん引する形で、労働移動が加速し始めていることを示す初期の兆しがある。
人口動態上の逆風に直面する中、労働供給を制限するような政策の歪みを取り除くことが潜在成長率を支える可能性がある。例えば、社会保険料の免除は、女性労働者が免除資格を維持するために労働時間を制限する動きにつながる。さらに、週20時間労働者における健康保険及び年金保険の適用拡大が、パートタイム労働者が労働時間を抑制するという思わぬ結果を招いた可能性もある。
積極的な労働市場政策は、AIの潜在的な生産性を活かしながら、AIによる失業に対処するような労働移動を支援する内容でなければならない。労働者のリスキリングとスキルアップのための助成付き研修プログラムを実施することによって、効果的で包摂的な労働移動を支えられるだろう。
産業政策が世界的に再興する中、日本も、特に半導体投資の促進やグリーン・トランスフォーメーションの奨励などのために、産業政策をますます採用している。このような産業政策の活用にあたっては、期限付きで、明確なサンセット条項を備え、包括的な費用便益分析に服するべきである。産業政策は、歪みを最小限に抑えるため、外部性や市場の失敗により市場メカニズムでの効果的な解決が困難な特定の目的に絞って実施されるべきである。
IMF訪問団は日本当局および日本の協議参加者による率直かつオープンな協議に感謝します。
日本:主な経済指標(2022ー2027)
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[1]Rahul Anandを団長とし、Yan Carrière-SwallowとAndrea Deghi、Rahul Giri、Parisa Kamali、Shujaat Ali Khan、Akihiro Matsuura、Haruki Seitani、Ken Teohを含むIMF訪問団は、2026年1月22日から2月5日まで日本で面会を実施した。訪問団は、財務省、日本銀行、その他の省庁並びに政府機関、労働組合、経済界、金融業界、学界と面会した。