世界貿易への高まる脅威
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- Authors: PINELOPI GOLDBERG, TRISTAN REED
- Published: June 13, 2023
概要と主要主張
- 保護主義は、世界的に強靭性が低下し、格差が広がり、紛争が起こりやすくなる可能性がある。
- 現時点で「国際貿易が脱グローバル化している」という決定的な証拠は存在しないが、国際統合と多国間制度への逆風は強まっている。
- 貿易の将来は政策面での選択に大きく依存する。
世界貿易の動向(証拠と解釈)
- 世界貿易の米ドル換算での伸びは、2008〜09年の世界金融危機後に鈍化し、2020年の新型コロナ危機勃発時に急速に縮小したが、その後、過去最大規模まで回復した。
- 世界貿易額を対GDP比で見ると、わずかに減少している。主要因は中国とインドの変化である。
- 中国は「双循環」戦略を推進し、国内消費重視へ。
- 両国では先立つ数十年間の異例の輸出ブームが終わり、中間財の輸入が以前より減少した。
- 中国・インド以外では、中間財輸入の対GDP比は今も伸びている。輸出についても同様。
- 米中が2018年に導入した関税は米中二国間の貿易を抑制したが、影響の大きかった製品群の貿易は両国以外で拡大した(=貿易は再配分され、縮小しなかった)。
- 2018年以降も、多国間・地域的な貿易協定の推進は続いた(例:アフリカ連合、ASEAN、CPTPPの締結国)。
脱グローバル化の3段階(著者の整理)
- 第1段階(2015年前後〜)
- 低賃金国との競争やグローバル化への不安に伴い、英国のEU離脱、米中の関税・報復関税導入、欧州での過激主義再燃等が発生。
- 貿易の分配上の影響が地域格差を拡大させ、政治的影響をもたらした。
- 第2段階(2020年、新型コロナ禍)
- 「強靭性」への要求が高まるが、その定義・尺度はショックの性質で変化する。
- 実証では、国際貿易は思われるほど脆弱ではなく、市場は強い強靭性を示した(例:マスク供給は数か月後に回復)。
- 貿易は多様化と強靭性向上に寄与する(文献:Caselli and others 2020; Bonadio and others 2021)。
- 2021年には感染症制御が進み、貿易は急成長している。
- 第3段階(2022年2月、ロシアのウクライナ侵攻以降)
- 地政学的リスクが顕在化し、単独国家への依存の落とし穴が明確化。
- 政策として中国とのデカップリングを模索する動き、先端技術やデュアルユース機器の輸出禁止措置が導入されている。
- 世界が分断化し、米中を中心とした新たな冷戦に発展するリスクが存在する。
具体的エビデンスと事例
- アンケート:シカゴ大学ブース経営大学院の調査
- 2018年3月の調査対象者全員が当初の米国関税に反対していた。
- 2022年1月の調査では、経済学者44人中2人のみが「外国の投入財に依存した結果、米国産業はショックに脆弱になった」という意見に異議を呈した。
- コロナ禍の貿易影響に関する研究引用:Bonadio, Barthélémy, Zhen Huo, Andrei Levchenko, and Nitya Pandalai-Nayar. 2021; Caselli, Francesco, Miklós Koren, Milan Lisicky, and Silvana Tenreyro. 2020。
リスク評価と影響
- 強靭性強化の代償
- 貿易制限が必ずしも強靭性を高めるとは限らない。ショックの種類に依存する。
- 「友好国」への貿易限定は、地政学的ショックに対する短期的強靭性を高める可能性がある一方、他の種類のショック(例:公衆衛生)に対する弱体化を招く可能性がある。
- 格差と開発への影響
- 保護主義は物価上昇を通じて実質賃金の低下を招き、国内での格差を悪化させる可能性がある。
- 環境基準・労働基準の強化を通じた「友好的」高所得国間の協調は、非常に貧しい国々にとって参入障壁を高め、貧困削減や開発の道を狭めるリスクがある(Goldberg and Reed 2022)。
- 平和へのリスク
- 地理経済的分断や貿易の後退は、歴史的には大規模紛争につながる例がある。最大のリスクは平和の毀損である。
可能なシナリオと帰結
- シナリオA:脱グローバル化がこれ以上進行しない
- デュアルユース疑いのある技術に限定的な介入が行われ、他製品の貿易は継続的に発展する。
- シナリオB:世界の分断化・新たな冷戦の進行
- 世界が対立する集団に分かれ、米中(とその同盟国)間で競争と排除が進む。この場合の代償は深刻。
政策上の含意(記事を通じた示唆)
- 保護主義的措置は、強靭性や格差、平和に対して逆効果をもたらすリスクがあるため、安易な貿易制限の拡大は慎重に検討されるべきである。
- 経済学者の一般的提言は、保護主義を否定し、勝者から敗者への再分配を行うことで分配上の不均衡に対処することである。
- 政策選択が貿易の将来とその影響を決定するため、政策設計においてショック別の強靭性評価と長期的な成長・平和への影響を考慮する必要がある。
ピネロピ・コウジャノウ・ゴールドバーグ、トリスタン・リード。2023年6月。「世界貿易への高まる脅威」。
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