2020年10月 財政モニター
Fiscal Monitor, October 2020
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- 2020年10月 財政モニター
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- Published: October 13, 2020
第1章:新型コロナウイルスのパンデミックに対処するための財政政策 — 主な所見
- 2020年9月11日現在でとられた財政措置の総額は11.7兆ドル。対世界GDP比で12%近くに上る。
- 財政措置の構成:半分は追加支出あるいは一時的な減税を含む歳入の逸失、残りの半分は公的部門による融資や保証、資本注入などの流動性支援。
- 2020年に財政赤字は対GDP比で平均9%拡大する見込み。世界の公的債務は同100%に迫り、過去最高に達すると予測。
- 2021年見通し(ベースライン:景気が順調に回復し、金利が低く安定的に推移する場合):世界の公的債務比率は中国と米国を除き概して頭打ちになる見込み。
- 貧困影響:1人あたり所得の落ち込みの予測を踏まえると、世界全体で1億~1億1,000万人が極度の貧困に陥ると見られ、過去数十年の貧困削減傾向が反転する可能性。
- 追加的な社会扶助による貧困抑制の限界:一部の国の支援の限界や能力上の制約を踏まえ、貧困層の増加を8,000~9,000万人に抑えられるにすぎないと見積もられている。
- 財政余地の格差:多くの先進国と一部の新興市場国は中央銀行による大規模な流動性供給と資産買い入れにより財政拡大が容易になった一方で、多くの新興市場国や低所得途上国(半数以上が過剰債務のリスクが高いか過剰債務に陥っている)では資金調達上の制約が重大な制限となっている。公的支援は資金ニーズに追いついていない。
- 短期的有効性と長期的トレードオフ:
- 対象を絞った現金給付は生活必需品の購入に充てられ、貧困層にとってきわめて重要。
- 失業給付は必需的消費を下支え。
- 賃金補助は雇用関係を維持する一方、労働市場の再配分を遅らせる可能性。
- 一時的な納税猶予や減税は流動性支援だが、恒久化すれば政府歳入を損なう恐れ。
- 資本注入は倒産防止に有用だが、産業間再配分を遅らせるリスク。
- 直接融資や保証付き融資は利用が限定的で、行政制約やコンディショナリティ、過剰な民間債務を伴う。
- 財政リスクの不確実性要因:パンデミックの推移、景気回復の形状、危機の爪痕と資源再配分の必要度、一次産品価格と国際金融環境、暗黙の保証と明示的保証に伴う偶発債務など。
- ガバナンスと透明性の重要性:あらゆる財政措置に関して、規模や例外的性質、展開のスピードを踏まえ、十分な透明性と良い統治(グッド・ガバナンス)および原価計算を確保することが非常に重要。
第2章:復興のための公共投資 — 主な所見と政策提言
- 危機初期対応の焦点は保健上の緊急事態対処と脆弱な世帯・企業向けライフライン供給にあったが、今後は以下が必要:安全かつ滞りない経済再開の準備、雇用創出と景気浮揚、より強靭かつ包摂的でグリーンな経済への転換促進。
- 優先投資分野:医療システムの強化、デジタルインフラの拡充、気候変動と環境保護への対応。デジタルギャップ解消は情報・教育・就労機会へのアクセス格差抑制に不可欠。
- 公共投資の対GDP比はパンデミック前から低下しており、インフラ供給はニーズに追いついていなかった。
- 金利環境別の示唆:
- 先進国と一部新興市場国では、金利が実効下限制約に近く、質の高い公共投資を拡大することが雇用と景気に強力な影響を及ぼし、民間投資を誘発し、借入コストを上昇させることなく民間部門の貯蓄超過を吸収できる。
- 多くの低所得国や外貨建て借入を行う一部新興市場国では、投資は資金調達環境によって大きく制約され、持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けたニーズと資金のギャップが大きい。
- 公共投資の実行可能性と迅速性:公共投資は社会的距離を確保しながらでも実行可能で迅速に実施できる。政府が踏むべき4つのステップ:
- (1)今すぐにメンテナンスに投資する、
- (2)準備や実施が遅れている有望案件の見直しを行い再開する、
- (3)進行中の案件を加速させ今後2年以内に完了する、
- (4)危機後の優先事項に沿う新規案件の計画を直ちに開始する。
- 公共投資管理とガバナンス強化の必要性:遅延やコスト超過、期待外れの案件は頻発しやすく、投資拡大期にはその頻度が高まる可能性がある。ある国で公共投資の水準が高まる時には、個別案件のコストが10%上昇する可能性がある。
- 資金調達制約が小さい国では、質の高い公共投資を借入で賄うことは効果的。世界的に金利が低下しており、投資案件が利益を生むためのハードルが下がっている。資金調達上の制約を抱える国では、限られた財源の中で他支出との優先順位付けが必要となるためハードルは高くなる。
- 経済効果(経験的推定):国別データセットと企業40万社のサンプルに基づく推定によれば、不確実性の高い時期には公共投資がGDP成長と雇用に強力な影響を及ぼしうる。先進国と新興市場国では、財政乗数が2年後に2を上回ってピークに達する。
- 雇用創出効果の数値:公共投資を対GDP比1%拡大することによって、700万件の雇用が直接創出され、間接的なマクロ経済効果も考慮すると全体で2,000万から3,300万件の雇用が創出される見込み。
- 民間投資誘発の分野特性:通信や運輸(保健危機解決に重要)、建設や製造業(景気回復に重要)において誘発効果が大きい。だが、民間企業の高いレバレッジと流動性制約に対応する補完的政策が必要。
- 気候変動適応投資の収益性:適応投資の収益率は100%を上回ることが多く、適応のための公的援助は公的資金の有効活用となる。
- 低所得国向け気候資金ニーズ:低所得国における気候変動への適応に必要な公共投資を賄うため、公的援助は現在配分されている100億ドルから2倍以上に増額して約250億ドルとする必要があるとされる。
出典:2020年10月 財政モニター(IMF 日本語ページ)
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