気候変動緩和 EUが野心的な目標を達成するには
IMF Blog, September 24, 2020
Source details
- Canonical URL
- 気候変動緩和 EUが野心的な目標を達成するには
Other formats
Bibliographic details
- Authors: Dora Iakova, Alfred Kammer, James Roaf
- Published: September 24, 2020
概要と目標
- EUは、2030年までに温室効果ガス排出量を1990年比で少なくとも55%削減することを目指す。
- 最終目標は、2050年までの気候中立(温室効果ガスの正味排出ゼロ)である。
- 気候専門家は、地球温暖化を産業革命前と比べて摂氏1.5度の上昇幅に抑えるには、2050年までに世界で気候中立を実現する必要があると考えている。
- EUは世界の排出量の10%を占めている。
今後の道のり(構造転換の要点)
- 大幅な排出削減には、欧州経済の大きな構造転換、再生可能エネルギーへの依存拡大、エネルギー効率の向上が必要。
- IMFの2本のペーパーは、政策パッケージを入念に設計すれば、ダイナミックな成長を維持しつつ排出削減目標を達成可能であることを示唆している。
- 政策の慎重な順序付けは、新型コロナ関連の不況からの回復を下支えする。
気候に配慮した成長戦略 — 主要要素と推奨政策
- 炭素価格の段階的引き上げ
- あらゆる排出を対象とし、時間をかけて徐々に上昇する炭素価格が最も効率的。
- 炭素価格はエネルギー消費削減とクリーンエネルギーへの移行のインセンティブとなる。
- EUの排出量取引制度(ETS)は発電所や大規模事業所で成功しているが、対象をあらゆる部門に拡大する必要がある。
- 排出権の最低価格を徐々に引き上げる仕組みは価格シグナルの予見可能性を高める。
- 現在の一次産品価格の低下は、残存する化石燃料関連の補助金や免税措置の段階的廃止に好機を与える。
- 持続可能な成長の支援に向けたカーボンプライシング収入の活用
- 収入は、労働税やその他の歪みをもたらす税の軽減(またはその上昇の回避)、生産的なグリーン投資の刺激、グリーンへの移行によって影響を受ける人々への支援に用いることができる。
- 研究は、財源を効率的に活用することで、気候政策の経済的コストを短期的にも非常に低く抑えられることを示している。
- 長期的には、汚染減少、大気質の改善、環境破壊回避による経済・健康の利益が短期的コストを大きく上回る。
- グリーン投資と対象を絞った非価格政策の支援
- カーボンプライシングだけでは不十分な部門(運輸、建築など)には補完的政策が必要。
- 政府は電気自動車充電ステーションや送電網などネットワークインフラへの資本支出で電化やクリーンエネルギー生成を支援可能。
- 水素発電や新しい二酸化炭素回収・貯留方法など先端技術の革新促進を支援可能。
- 建築物の省エネ改修を対象とする低利融資などで資金調達上の制約を緩和。
- フィーベート(製品の排出率に応じてスライドする税金・払戻金)や基準、規制といった非価格政策が特定領域で重要。
- 公正な移行の確保
- 炭素集約度の高い活動からの移行で最も負の影響を受ける世帯や労働者への支援が必要。
- 支援策には、低所得世帯に対する直接給付、労働者に対する訓練や就職支援が含まれる可能性がある。
- 炭素価格の対象拡大に伴い、排出価格上昇の影響を最も受ける低所得加盟国も支援を必要とする。
- 国際協調による炭素リーケージの防止
- EU単独では地球温暖化を止められないため、主要排出国間で炭素価格の下限に合意することが最善。
- 合意がない場合は、原産国に関係なく同一製品に同一の炭素価格を適用することでリーケージを防止しうる。
機会と結論
- 新型コロナ危機からの回復に動員されている前例のない公的資金は、持続可能でより強靭な経済構築に活用されるべきである。
- グリーン技術やデジタル技術への投資優先は短期的に多くの雇用を創出する。
- 回復が確実になれば、炭素価格の段階的引き上げにより必要な収入を確保し、クリーン技術やエネルギー効率への投資を促進できる。
- EUはこの機会を活かして目標を達成し、低炭素経済モデルへの移行がもたらす利益を世界に示すことができると確信している。
出典: IMF ブログ記事「気候変動緩和 EUが野心的な目標を達成するには」