新興市場国ではクライメート・トランジションのためにもっと多くの民間資金が必要
IMF Blog, October 3, 2023
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- 新興市場国ではクライメート・トランジションのためにもっと多くの民間資金が必要
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- Authors: Prasad Ananthakrishnan, Torsten Ehlers, Charlotte Gardes-Landolfini, Fabio Natalucci
- Published: October 3, 2023
主要な所見
- 2050年までに排出量実質ゼロへの移行を実現するには、新興市場国と発展途上国(現在温室効果ガス排出の約3分の2を占める)で相当の気候変動緩和投資が必要である。
- 国際エネルギー機関(IEA)によれば、新興市場国・発展途上国ではこの目標を達成するために2030年までに年間約2兆ドルが必要となる。
- 現在予定されている今後7年間の気候投資額の4,000億ドルは、必要な規模の5分の1に相当する。
- 公的投資には限界があるため、民間部門が重要な役割を果たす必要があり、必要な投資の約80%を民間部門が供給することが必要である(中国を除くとその割合は90%に達する)。
- 石炭火力発電所は世界の温室効果ガス排出の約20%を占め、特に新興市場国・発展途上国の発電所は比較的新しいものが多く、段階的廃止には多額の民間投資と公的支援を要する。
資金ギャップと数値
- 必要資金(新興市場国・発展途上国、2030年までの年間):約2兆ドル。
- 直近予定の投資(今後7年間の合計):4,000億ドル。
- 必要投資に対する民間部門の供給目標:約80%(中国を除くと90%)。
- 石炭火力による世界の排出割合:約20%。
- IMFの強靭性・持続可能性制度(RSF)の規模:総額で400億ドル。
課題と障害
- 多くの新興市場国・発展途上国は、機関投資家が要求する投資適格の信用格付けを欠いており、十分に整備された金融市場も欠如している。
- 高リスクを受容できる国際投資家や、新興市場国での経験を有する投資家は少ない。
- 金融機関の気候関連ポリシーやコミットメントは、排出実質ゼロの目標と整合していない場合が多い。
- 持続可能性を優先する投資ファンドは増えているが、気候にプラスの影響を明示的に目的とする投資ファンドは一部にすぎない。ESGスコアは必ずしも気候インパクトを反映するように設計されていない。
- 信用格付機関の評価は、低中所得国・低所得国における低炭素移行への備えや座礁資産リスクを十分に反映していないため、適切な評価が得られにくい。
- カーボンプライシングは有効な価格シグナルを提供し得るが、広範な導入には政治的ハードルがある。
政策の提言(必要な政策ミックス)
- 幅広い政策ミックスを実施し、新興市場国・発展途上国における魅力的な投資環境を創出すること。
- マクロ経済ファンダメンタルズの強化、資本市場の深化、ガバナンスの改善を目的とする構造政策を推進し、信用格付けを改善して資本コストを引き下げること。
- 投資家が投資判断を行うために、より良い気候関連データを提供すること。
- 管理された形での石炭火力発電の段階的廃止に向けて、ブレンド・ファイナンスや証券化商品といった革新的な資金調達ソリューションを活用すること。
- 移行タクソノミーは、鉄鋼、セメント、化学、重輸送など炭素集約度が高い部門を含め、各部門で長期的に大幅な排出改善の可能性がある事業を考慮する設計とすること。移行タクソノミーの排出削減目標と基準は各国のNDCや長期戦略、特定産業向け脱炭素目標と結びつけること。
- 持続可能性ラベルの利用を促進するため、規制当局と監督当局が明確なルールを設定し、情報開示とラベルの執行を厳格化すること。これにより市場の透明性と健全性を高め、気候目標との整合性を確保すること。
- 官民のリスク分担を拡大し、国際開発金融機関(MDBs)とドナーによる保証の活用などを通じてブレンド・ファイナンス支援を強化すること。
- 多くの政策は実施と効果の発現に時間を要するため、短期から中期にかけての補完措置や国際的な支援を並行して行うこと。
IMFの役割と支援
- IMFの強靭性・持続可能性制度(RSF)は、気候投資の資金調達を促進するために、政府やMDBs、民間部門の結集を通じた貢献が可能である。
- RSFの規模は総額で400億ドルと、世界の気候投資ニーズに比べれば小さいが、RSFの支援を受けた改革はより多くの民間気候資金を呼び込む助けとなる。
本ブログ記事は、2023年10月「国際金融安定性報告書(GFSR)」の第3章に基づく。