人工知能がもたらしうる富裕国と貧困国の格差拡大
IMF Blog, December 3, 2020
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- 人工知能がもたらしうる富裕国と貧困国の格差拡大
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Bibliographic details
- Authors: Cristian Alonso, Siddharth Kothari, Sidra Rehman
- Published: December 3, 2020
概要
- 人工知能(AI)や機械学習、ロボット工学、ビッグデータ、ネットワークといった新技術は生産プロセスに革命をもたらすと見られているが、発展途上国に大きな影響を与える可能性がある。
- IMF職員による最近の研究は、新技術の導入に伴う自動化がすでに確立している先進国へと投資がさらにシフトし、富裕国と貧困国の格差が拡大する恐れがあることを示している。
- 発展途上国では従来、労働人口の増加が強みであったが、ロボット等が労働力を代替することにより、その強みが損なわれる可能性がある。
モデルと主要仮定
- モデルは労働力と資本、そして「ロボット」という3つの生産要素を用いて財の生産を行う2つの国(先進国と発展途上国)に着目している。
- 「ロボット」は広義に解され、AIや機械学習、ロボット工学、ビッグデータ、ネットワーク等の新技術を含む。
- 主な仮定は、ロボットが労働者を代替することであり、AI革命はロボットの生産性向上を意味する。
格差拡大が起こりうる3つの経路
- 生産への寄与
- 先進国では全要素生産性が高く、賃金がより高いため、企業はロボットをより多く活用しようとする。
- ロボットによる労働力の代替が容易な場合、ロボットの生産性向上は先進国に長期的な利益をもたらし、より多くのロボットが労働者に取って代わる。
- 投資フロー
- ロボットの生産性が高まると、ロボットと伝統的資本への強い需要が喚起される。
- こうした需要はロボットをより多く活用する先進国でより大きくなり、発展途上国向けの投資が転用される結果、発展途上国ではGDPが一時的に落ち込むことになる。
- 交易条件
- 発展途上国は先進国よりも大きな非熟練労働力を抱え、非熟練労働力への依存度が高い部門に特化しがちである。
- ロボットが非熟練労働力を代替し熟練労働者を補完すると仮定すると、ロボット革命後に発展途上国の交易条件が恒久的に悪化する可能性がある。
- 非熟練労働者の相対賃金低下と、非熟練労働集約財の価格下落が投資インセンティブを低下させ、GDPが相対的かつ絶対的に減少する可能性がある。
ロボットと賃金に関する知見
- 研究結果は、ロボットが実際に労働者を代替するかどうかに決定的に依存している。
- 代替が将来的にどの程度起こるかを予測するのは時期尚早であるが、代替が起こることを示唆する証拠がある。
- 特に賃金が高い場合にロボットの利用が著しく多い点が判明しており、これは労働コスト上昇への対応として企業が労働者をロボットで代替するという見方と一致する。
意味と政策含意
- ロボットの生産性向上は、ロボットによる労働者の代替が容易な場合、先進国と発展途上国の間の格差拡大を引き起こす。
- 生産性向上は所得の増加をもたらす傾向があるが、先進国と発展途上国双方の一部の労働者にとっては、少なくとも移行期の間、おそらくは長期にわたって所得格差を拡大させる可能性がある。
- 格差拡大を防ぐための政策的焦点(示唆)
- 発展途上国はロボットが労働力を代替するのではなく補完するように、経済全体の生産性と技能水準の向上に向けた投資を急ぐ必要がある。
- 全要素生産性の向上は、ロボットや物的資本の蓄積にインセンティブを与える点で特に有益である。
- 人的資本の蓄積(教育と技能育成)の重要性が強調されており、発展途上国間でも技能水準の違いが成長ダイナミクスを左右する可能性がある。
- 若年人口の増加という期待された人口転換を活かすためには、速やかに生産性を向上させ、教育と技能育成に投資するための思い切った転換が必要である。
著者
- クリスチャン・アロンソ(IMF財政局エコノミスト)
- シッダート・コタリ(IMFアジア太平洋局エコノミスト)
- シドラ・レーマン(IMF中東中央アジア局エコノミスト)
出典: 人工知能がもたらしうる富裕国と貧困国の格差拡大(IMF 職員による研究概要)