IMFブログ - なぜ経済成長に基礎科学が重要なのか
IMF Blog, October 6, 2021
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- IMFブログ - なぜ経済成長に基礎科学が重要なのか
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- Authors: Philip-Barrett, Niels-Jakob-Hansen, Jean-Marc-Natal, Diaa Noureldin
- Published: October 6, 2021
概要と問題意識
- 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは数十年分の経済発展を巻き戻し、財政に甚大な打撃を与えた。
- 社会を前進させる復興と気候変動対策のためには、相当な公共投資に持続的に資金を拠出する必要がある。
- 長期的成長力、ひいては税収を押し上げることが喫緊の課題であり、重要な推進力の一つは生産性(同量のインプットからより多くのアウトプットを生み出す能力)である。
- IMFの「世界経済見通し(WEO)」は、長期的な生産性伸び率を高めるうえでイノベーションの役割を指摘しているが、先進国ではR&D投資が伸びる一方で生産性伸び率は過去数十年にわたり鈍化している。
基礎研究への公共投資の価値
- IMFの分析は、成長にとって重要なのはR&Dの「構成」であることを示している。
- 基礎科学の研究は応用研究(企業における商業目的のR&D)と比べて、より多くの国の多くの産業分野に、長期にわたる影響を及ぼす。
- 新興市場国や途上国にとっては、外国の研究へのアクセスが極めて重要である。
- 技術移転の円滑化、科学分野の国際協調、基礎研究に資金を拠出する政策は、長期的成長に不可欠なイノベーションを促進する。
発明を支える基礎科学の役割(事例と引用の遅行性)
- 応用研究がイノベーションを市場に送り出す役割を果たす一方、基礎研究は画期的な科学の進歩に必要な知識基盤を拡大する。
- mRNAワクチンの開発は数十年にわたる多分野の知識蓄積の活用例であり、数百万人の命を救い、多くの国で経済再開を早め、グローバル経済に数兆ドル規模の恩恵をもたらした可能性がある。
- 基礎研究は特定の製品や国にひもづかず、予想外の組み合わせや多分野での活用が行われるため、応用研究と比べて利用のすそ野が広く、長期間にわたって有用であり続ける。
- 引用の時間軸の差:特許の引用のピークは発表の3年後であるのに対し、科学論文の引用のピークは発表のおよそ8年後である。
新興市場国と発展途上国にとってのスピルオーバー効果
- 基礎研究の大部分は先進国で行われるが、国家間の知識移転が新興市場国と発展途上国のイノベーションの重要な推進力となっている。
- 新興市場国と発展途上国は、イノベーションと成長において国内研究よりも外国の研究に依存する部分がはるかに大きい。
- 教育制度が充実し、金融市場に厚みがある国では、外国技術の採用(貿易、外国直接投資、試行錯誤を通じたもの)が生産性向上に与える影響が特に大きい。
- データによれば、外国の基礎研究への投資が1%ポイント増加することによる特許の増加は、先進国よりも新興市場国と発展途上国のほうが0.9%ポイント高い。
イノベーションと生産性の定量的関連
- 特許件数はイノベーションの測定手段となる。
- 特許のストックが1%増加すると、労働者1人あたりの生産性が0.04%上昇する可能性がある。
- ある国の自前の基礎研究のストックが恒久的に10%増加すると、生産性は0.3%上昇する。
- 外国の基礎研究のストックが同じだけ(恒久的に10%)増加した場合の生産性の伸びは0.6%であり、平均値であるため新興市場国と発展途上国での影響はさらに大きいと見込まれる。
- 基礎科学は、環境負荷の高い技術よりもグリーンイノベーション(再生可能エネルギーなど)において大きな役割を果たしている。
政策提言:より成長力のある包摂的な未来に向けて
- 民間企業は基礎研究への投資を十分に行わない傾向があり、公的介入の必要性がある。
- 研究への資金拠出のあり方は政策設計が難しい:大学や公的研究機関の基礎研究だけを援助することは非効率であり、民間との協力による相乗効果を損なう可能性がある。
- 実行可能なハイブリッド政策の例(IMFの分析):
- 民間部門の研究(基礎と応用の両方を含む)への補助金を倍増させる。
- 公共部門の研究への支出を3分の1増やす。
- これにより先進国の生産性伸び率を年0.2%ポイント高められる可能性がある。
- 補助金の照準をこれまで以上に基礎研究に合わせ、官民協力を緊密化することで、財政負担を抑えつつ伸び率をさらに高められる可能性がある。
- こうした投資はおよそ10年以内に採算がとれるようになり、国民所得に相当な好影響をもたらすだろう。
- IMFの推計によれば、1960年から2018年にかけてこのような投資が行われていたら、人口1人あたりの所得は今より約12%多かったとみられる。
- 新興市場国への知識のスピルオーバーの重要性を踏まえ、国境を超える自由なアイデアのフローと国際協力がきわめて重要である。
著者(要旨)
- フィリップ・バレット:IMF調査局エコノミスト。博士号(シカゴ大学)。調査対象は財政政策、社会不安、気候変動など。
- ニールス・ヤコブ・ハンセン:IMF調査局世界経済研究課エコノミスト。「世界経済見通し」の執筆陣の1人。博士号(ストックホルム大学国際経済研究所)、経歴にアジア太平洋局や財務局での勤務経験。
- ジーン・マーク・ネイタル:IMF調査局世界経済研究課課長代理。ジュネーブの国際・開発研究大学院で国際経済学博士号。
- ディア・ヌレルディン:IMF調査局世界経済研究課エコノミスト。「世界経済見通し」の執筆陣の1人。オックスフォード大学でのポスドク・フェローシップ、博士号(オックスフォード大学)。
出典: IMFブログ - なぜ経済成長に基礎科学が重要なのか