高インフレも、賃金・物価スパイラルのリスクは抑制されているもよう
IMF Blog, October 5, 2022
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- 高インフレも、賃金・物価スパイラルのリスクは抑制されているもよう
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- Authors: John Bluedorn
- Published: October 5, 2022
主な分析結果
- 最近の賃金動向と賃金・物価スパイラルの発生可能性を分析した結果、現時点ではスパイラルのリスクは概ね限定的であると示された。
- リスクが抑制されている要因として、次の3点が同時に作用していると結論付けられている。
- インフレに対する基調的なショックが労働市場以外に由来すること。
- 実質賃金の低下が物価圧力の抑制に貢献していること。
- 中央銀行が金融政策の積極的な引き締めを行っていること。
歴史的検証(過去の事例)
- 過去50年間をさかのぼり、先進国で2021年と同様の状況が見られた「21の事例」を特定した。該当条件は次のとおり。
- 物価上昇率が上がり、賃金の伸びがプラスである。
- 実質賃金と失業率が横ばいもしくは低下している。
- これらの事例では概して賃金・物価スパイラルの発生には至らなかった。むしろ、インフレ率はその後数四半期で低下し、名目賃金が緩やかに上昇して実質賃金の回復を支えた。
- ただし事例間の差異は存在し、より悪い経過をたどったケースもある。例として、米国では1979年以降の原油価格の高騰の影響でインフレ率がしばらく上昇し続け、実質賃金が低下した。インフレの軌道は連邦準備制度理事会が急激な利上げを行うまで変わらなかった。
インフレ期待が果たす役割(期待形成のシナリオ)
- インフレ期待の形成様式により、賃金・物価の将来動向は大きく変わる。考察された期待形成の類型は以下の通り。
- 完全適応的期待形成:将来のインフレ率が現在と同じ水準で推移すると見なす場合。インフレショック後に将来インフレ率が上がると認識され、労働者が賃金上昇を強く求める可能性がある。この場合、インフレ率は長期にわたり中央銀行のインフレ目標を上回ることがあり得る。
- 合理的期待形成:入手可能な経済情報をすべて反映する場合。企業や家計がショックを一時的と見なし、賃金の伸びとインフレ率は短期間で目標の水準に戻る。
- 適応的学習(現実は両極の中間):過去に起こったことを検証し(より最近の四半期に重きを置く)、経済の構造について学習するプロセス。期待の調整に合理的期待より時間がかかるが、完全適応的よりは早く目標回帰する。
- いずれのケースでも、インフレ率が賃金の伸びを上回る局面では実質賃金が当初低下する傾向がある。これはコストプッシュ・ショックを部分的に相殺し、スパイラル形成に反する効果を持つ。
- ただし、物価スライド制賃金の予期せぬ急激な上昇など、インフレショックが労働市場自体に端を発する場合には、実質賃金低下の緩和効果が弱まり、賃金と物価の両方をより長期にわたって押し上げる可能性がある。
金融政策当局への含意と推奨行動
- 期待形成プロセスを理解することは金融政策当局にとって極めて重要である。期待がより後ろ向き(適応的寄り)である場合、インフレショックへの対応として求められる政策は以下の通り。
- 中央銀行による明確なコミュニケーションを含めた金融政策の引き締めを強化すること。
- 引き締めはより前倒しで行うべきである。
- 多くの中央銀行が各国固有の状況に合わせて行った最近の引き締めは、高インフレが定着し、インフレ率が長期間目標から逸脱するのを阻止するうえで心強いと評価されている。
補足
- 本記事は、2022年10月の「世界経済見通し(WEO)」第2章「新型コロナ後の賃金動向と賃金・物価スパイラルのリスク」に基づいている。
出典:IMFブログ「高インフレも、賃金・物価スパイラルのリスクは抑制されているもよう」