インフレ対策に資する財政の引き締め
IMF Blog, November 21, 2022
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- インフレ対策に資する財政の引き締め
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Bibliographic details
- Authors: Tobias Adrian, Vitor Gaspar
- Published: November 21, 2022
要点
- 財政政策は、金融安定性リスクを軽減しつつ、インフレ抑制における金融政策の負担を和らげることができる。
- 多くの政府はすでにパンデミック中の支援策を縮小している(10月のIMF「財政モニター」)。
- インフレが高止まりする現状では、全面的な財政支援策は正当化できないが、最も脆弱な人々への支援は継続して優先すべきである。
財政健全化と債務抑制
- 中央銀行は需要を鈍化させインフレを抑制するために利上げを実施している。インフレ率は多くの国で1980年代以来の高水準で推移している。
- 赤字が小さくなれば総需要とインフレが抑制され、中央銀行はそれほど利上げを行う必要がなくなる。
- 公的債務の比率がパンデミック前の水準を上回る中で、財政赤字の削減は債務脆弱性への対応につながる。
- 財政刺激策を講じると、中央銀行がより強い利上げを迫られ、金融システムリスクが高まる可能性がある(10月のIMF「国際金融安定性報告書(GFSR)」参照)。
研究モデルによる比較(様式化した2国モデル)
- モデルは「自国経済」が米国または先進国グループであるケースを検討。
- 比較したアプローチ:
- 金融引き締めのみに依存するアプローチ
- 財政健全化を含むアプローチ
- 主な結果:
- 両アプローチは成長に対して同様の影響を与え、インフレ抑制に有効である。
- 金融引き締めのみの場合:金利上昇と成長鈍化が公的債務の増大につながり、利回り上昇が投資家を引き付け、通貨が上昇する。
- 財政引き締めを含む場合:需要が抑制されることで金利上昇を必要とせず、実質為替レートは低下し、公的債務は減少する。金融政策が引き締められる中で実効為替レートが上昇することは、インフレ率の下落幅が若干大きくなることを意味するが、その差は多くの国が同様の政策を追求すれば小さくなると考えられる。
支援の適正化と供給ショックへの対応
- 食料・エネルギー価格の高騰に直面する中での勧め:
- 広範な支援を止め、対象を絞った現金給付を通じた最も脆弱な層への支援に移行する。
- 価格統制や補助金、減税による一時的な価格抑制は、予算負担が大きく長期的には効果がない可能性が高い。
- 省エネ促進や再生可能エネルギーへの民間投資を奨励するために価格シグナルは重要である。
- 財政再建は中期財政枠組みの下で継続されるのが望ましく、債務持続可能性への圧力(高齢化、将来の危機や景気後退時のバッファー再構築の必要性など)に対処する助けとなる。
- 望ましい財政スタンスは、足元のインフレ率、債務水準、開発ニーズなど各国固有の事情に左右される。
国際的側面と歴史的教訓
- 1980年代初頭の米国(ポール・ボルカー元FRB議長下)のディスインフレは、インフレが高水準で定着している状況で財政が拡張的であった場合、中央銀行が急激な利上げを余儀なくされるリスクを示した。結果として住宅投資の急減、歴史的なドル高、製造業への打撃、貿易保護主義の高まりが生じた。
- 財政引き締めを含めたバランスのとれた景気刺激策の撤廃は、金利や通貨変動に起因するリスクや貿易摩擦のリスクを軽減する可能性がある。
- 世界的には、利上げの急激さが和らげられれば金融安定性リスクは緩和され、新興市場国への負の波及や政府の過剰債務リスクの軽減につながる。急激な主要通貨の上昇を避けることは、その通貨建てで借入を行う新興市場国への圧力を和らげる。
政策的含意(推奨)
- 困窮している人々への強力で的を絞った保護を維持しつつ、他の分野では支出削減や追加的な歳入確保で全体として赤字を削減する責任を果たす。
- 財政再建と責任ある財政運営は、政策当局者がインフレ対策で足並みをそろえていることを示す手段となる。
- 多くの国で、インフレ上昇に伴い財政引き締めを行う論拠が強まり、歳入確保や成長促進型投資(社会的保護と人的・物的資本を維持する支出)の優先が必要となる。
- 政策ミックスの重要性:財政引き締めは、金融政策単独よりもインフレを素早く目標水準に戻すコストを低減できる。
出典: インフレ対策に資する財政の引き締め(ページ概要)