Credit: Tamara Merino/IMF Photos

気候変動対策に支持を集めるためには、一般市民の政策理解が不可欠

新たな調査によって、一般市民の気候変動に対する懸念、緩和策に対する見解、そして気候変動対策の支持の源が明らかに

気候変動は世界各地で危惧されているが、その懸念だけでは、気候緩和政策への支持につながらない。 

これは最近実施された調査に基づく所見である。同調査は、気候変動関連リスクに対する一般市民の認識、そして政府による気候変動対応の支持状況を正確に把握するべく考案されたものだ。

調査の回答によれば、気候変動に大きな懸念を示す人は女性、高学歴の人、そして時事に明るい人に多く、経済を規制する政府の役割に寛容であることも明らかになった。また、公共交通機関の利用者や自動車への依存度が低い人々も、気候変動を大きく憂慮していることがデータによって示された。

調査は、市場調査会社ユーガブ(YouGov)が20227月から8月に、28か国の約3万人を対象に実施した。先進国と新興国を対象とし、温室効果ガス排出量の上位25か国のうち20か国、そして気候変動に最も晒されている25か国のうち9か国を対象に含んだ。

気候緩和策に対する市民の意見を取り上げたこの新調査は、喫緊の課題である気候変動への対処方法について、政策当局者たちが理解を深めるための一助となるだろう。各国政府は野心的な目標を掲げているものの、世界は地球温暖化を1.5から2に抑えるための軌道に乗れずにいる。科学者によると、2030年までに炭素排出量を適切な軌道に乗せられなければ、地球温暖化は2を超え、気候変動が不可逆的に進行する破滅的な転換点(ティッピング・ポイント)を過ぎてしまうかもしれない。

調査では、政策の有効性や利益(例えば空気の質の向上や健康改善などの共益)について僅かな情報を提示するだけでも、大きな支持を得られることが示された。ただし、こうした支持は政策上のトレードオフが明示されていないと短命に終わる可能性があり、選択可能な政策オプションの相対的な代償と利益が市民の間で理解されていることの重要性を裏付けている。

経済的な有効性が高い政策のうち、燃料の炭素含有量や排出量に基づくカーボンプライシングなどは、しばし政治的な抵抗に直面する。重要なことに、気候変動への懸念だけでは、炭素税や排出量取引制度などのカーボンプライシング政策に幅広い支持が集まらないことが同調査によって浮き彫りになった。

カーボンプライシングは、気候変動の影響や、価格付けの仕組み、そして発生した収入の使途も合わせて説明されている場合に受容されやすい。特に、対策から発生する収入が、気候政策の悪影響から脆弱なグループを経済的に保護する目的で活用される場合、人々は政策に支持的な態度を示す。

グリーン投資への支援はあらゆる国で大きな支持を集めている。反対者が腐敗や政策の無効性に関する懸念をしばし引き合いに出す一方で、支持者は政策に伴う公的予算上の犠牲を見落とす場合がある。これは、経済のグリーン化への支持を強化する上で、公的支出・投資の有効性が重要であることを示唆している。

多国間の取り組みへの支持

調査は、集団行動に対する支持や国際協定を策定するための共通基盤が、予想以上に幅広く存在することを示している。どの国の回答者も大部分は、多数の国が二酸化炭素排出量の削減措置を採用して初めて気候変動政策が効果を発揮すると考えている。

さらに、先進国と新興市場国のどちらの回答者においても、富裕国のみならず、すべての国が気候変動への取り組みに尽力すべきだと考える者がほとんどだ。加えて、殆どの国において、大部分の回答者が、過去ではなく現在の排出量に基づき負担を分担すべきだと述べている。一般の人々は、他国が犠牲を払っても気候政策を支援するのであれば、自身も同じ行動に出る見込みが大きい。それは、排出量ネットゼロ目標を達成できる公算が大きくなるだけでなく、こうした努力が公平に感じられるからである。

気候緩和政策に関する知識は依然として断片的であり、自国での気候変動対策を支持すべきか否か今も意見を決めかねている人は多い。グリーン移行の切迫したニーズを効果的に支えるために、各国政府は以下の取り組みが行えるだろう。