世界で拡大する新興市場国の波及効果
IMF Blog, April 9, 2024
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- Authors: Nicolas Fernandez-Arias, Alberto Musso, Carolina Osorio Buitron, Adina Popescu
- Published: April 9, 2024
概要
- 主要20か国・地域(G20)の主要な新興市場国が世界経済に与える影響力が高まっている。
- 過去20年間で新興市場国の世界市場への統合が進み、世界各国に与える経済的な「波及効果」が増大している。
- 中国をはじめとする主要新興市場国の成長見通しが弱まっていることを受け、景気減速による影響の伝播を理解することは重要である。
- 本稿は、2024年4月「世界経済見通し(WEO)」第4章に基づいている。
シナリオ・モデル結果(IMFのシミュレーション)
- 多国間多部門貿易モデルを用いたIMFのシミュレーションでは、G20新興市場国の生産性が低下すると、世界の産出高の縮小幅が、2000年当時と比較して3倍となる可能性を示している。
- G20新興市場国の成長加速が世界全体で起これば、全体成長率を0.5%ポイント押し上げる可能性がある。
産業間の波及
- 2001年に中国が世界貿易機関(WTO)に加盟して以来、世界貿易や外国直接投資(FDI)に占めるG20新興市場国のシェアは倍増した。
- 現在ではG20新興市場国が世界のGDPの3分の1を占めている。
- これらの国々は、製造業や鉱業における中間財の主要な輸出国であり、最終財の主要な輸入国でもある。
- グローバル・バリュー・チェーンへの統合が進んだため、G20新興市場国の動き次第で外国企業がより大きな影響を受ける可能性がある。
- 正の成長ショックがある場合:
- 電気機器、機械類、金属製品といったG20新興市場国の需要に大きく依存する部門を扱う外国企業の収益性が増加し得る。
- インドネシアやトルコの成長加速は、安価な投入に依存する部門の外国企業にとって追い風となる。
- しかし、成長加速は同時に下流での生産力拡大(新製品の製造・輸出)を招き、低賃金国による輸入競争は繊維や化学品など外国サプライヤー依存度が高い部門に顕著な影響を与える。
- 結果として、G20新興市場国のショックにより国別・部門別で経済活動の大幅な再配分が生じることが予想される。
雇用と適応
- G20新興市場国でのプラスの生産性ショックは:
- 競争の激化と相まって、該当部門内では雇用減少につながる可能性がある。
- 一方で、グローバル・バリュー・チェーンと統合した部門に波及した場合には相補性を生み、雇用機会を増加させる傾向がある。
- IMFのモデル分析では、特にアジアにおいて生産性が広範に低下すると大半の部門が縮小する可能性が示されているが、供給減少を他国企業が活用することで繊維、金属、電子機器を中心に製造部門の大半が徐々に拡大する局面も想定される。
政策的含意(対応と推奨)
- G20新興市場国は世界や地域における波及効果の重要な源泉であり、より大きな責任を伴う存在となっている。
- マイナスの影響は特に供給サイドのショックを伴って波及し、先進国においてインフレ率が鈍化する上でリスクを生じ得る。
- その他の新興市場国や発展途上国においても、波及効果の増大は成長と所得の収斂をリスクにさらす可能性がある。
- 政策当局者への示唆:
- 労働市場や事業規制面での構造改革に取り組み、再配分が有利に働く部門を支援すること。
- 対象を絞った財政支援等、包括的な政策を展開し、各部門における効率的な雇用の再配分を促進すると共に波及から生じる再配分の悪影響を緩和すること。
- 効果的な多国間協力と国際政策に係る議論を行い、波及効果に対応すると共に、国際金融セーフティネットを強化する等分断化リスクを最小化することを優先課題とすること。
本ブログ記事は、2024年4月「世界経済見通し(WEO)」の第4章(「立場入れ替え:G20新興市場国からの波及効果がかなりのものに」)に基づいている。