中国と米国の貿易収支を主に左右しているのは国内のマクロ経済要因
IMF Blog, September 12, 2024
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- 中国と米国の貿易収支を主に左右しているのは国内のマクロ経済要因
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- Authors: Pierre-Olivier Gourinchas, Ceyla Pazarbasioglu, Krishna Srinivasan, Rodrigo Valdes
- Published: September 12, 2024
要旨
- 中国の対外黒字拡大と米国の対外赤字拡大は、主として国内のマクロ経済ファンダメンタルズによって説明される。
- 貿易・産業政策だけで対外収支の動きを説明する見方は不完全であり、両国の経常収支の約3分の1を占めるという事実も踏まえ、米国における望ましい投資対貯蓄率などマクロ要因の理解が必要である。
マクロ経済的要因(観察とモデル結果)
- パンデミック期の需要変化(医療機器の輸出増、サービスから財への消費シフト)とその後の中国の内需低迷(不動産市場の調整、2022年のロックダウンによる消費者信頼感の低下)が中国の貿易黒字拡大の構図に寄与した。
- 中国では家計貯蓄率が上昇し、投資が縮小した一方、世界(特に米国)では大幅な貯蓄取り崩しが発生した。米国では財政赤字がパンデミック前に比べて大きく拡大し、家計貯蓄率が半分に低下した。
- 現在の中国の貿易収支は、方法論によるが対GDP比2~4%の黒字である。
- 中国の輸出のGDP比は、2000年代のピーク時には約10%に達していたが、今日では自国GDPに対する比率は小さいものの、世界経済に占める中国の規模拡大により対世界GDP比では長期にわたり安定的に推移している。
- IMFのG20モデルを用いた様式化シミュレーションの結果:
- 中国の内需の弱さが主因となり、中国の経常収支黒字は約1.5%ポイント押し上げられる(パンデミック前の水準と比較した上昇幅に近い)。
- 米国では力強い内需により米国の経常収支は本モデルにおいて約1%ポイント悪化する(パンデミック前の水準と比較した下げ幅に近い)。
- 中国の国内貯蓄率の持続的上昇は実質実効為替レートの大幅な低下をもたらし、輸出の伸びを支え輸入需要を圧迫する。これは2021年以降のデータと整合的である。
- 米国の貯蓄率の持続的低下は米国の実質金利上昇につながるが、中国の貯蓄率上昇が世界金利に与える負の影響によって概ね相殺される。
補助金と産業政策(事実と効果推計)
- グローバル・トレード・アラートのデータでは、中国で2009年から2022年にかけて約5,400件の補助金政策が実施された。これは、G20の先進国が導入した措置を合計した数の約3分の2に相当する。
- 中国の補助金はソフトウェア、自動車、輸送、半導体、より最近ではグリーン技術といった優先部門に集中している。
- 電気自動車(EV)に関する事実:
- 中国は2023年にEVの最大生産国となり、890万台を生産した(世界全体の年間生産台数の約3分の2に当たる)。
- 2023年に中国は120万台を輸出した。
- 現在のところ、EVの輸出は中国の財輸出の約1%を占めるにすぎない。
- IMFスタッフの分析の推計:
- 補助金導入後、中国による補助金対象製品の輸出は対象外の製品よりも1%多くなった。
- 補助金対象製品の輸入は減少しており、国内代替が一定程度進んだことを示している。
- ただし、推定される効果は小さく、産業政策が対外収支全体に与える影響は限定的であることを示唆している。
- データ制約の指摘:
- 過去からの補助金、補助金の貨幣価値、補助金の財源確保や導入方法に関するデータが不足しており、総合的評価は困難である。
- WTOの対中貿易政策検討が指摘するように、中国の補助金政策に関する透明性の欠如は、グローバルな影響評価を難しくしている。
重要な教訓
- 2000年代のアジア新興市場発の過剰貯蓄による世界的貯蓄過剰とは異なり、今回は世界的な貯蓄過剰は見られない。中国を除いた世界の実質金利は上昇しており、低下していない。
- 米国の対外収支に対する中国の貯蓄ショックの寄与度は小さく、中国の貿易収支に対する米国の貯蓄取り崩しショックの寄与度も小さい。両国の対外黒字・赤字は大部分が国内由来である。
- 国内に原因がある経常収支の不均衡には、国内由来の解決策を講じることが必要であり、マクロ調節の適切な設定が求められる。
政策提言
- 中国向け(国内対策)
- 包括的なマクロ経済改革および構造改革を通じた経済のリバランスが必要。
- 不動産部門の調整コストを小さくするための政策パッケージ。
- 家計に焦点を当てた需要刺激策。
- セーフティネットの構造的強化と所得格差是正。
- 資源配分の改善を目的とした改革の実施。
- 輸出を通じた成長刺激の依存は限界があり、輸出主導型の成長モデルは中期的な青写真ではないとの評価が示されている。
- 米国向け(財政・税制)
- 大幅な財政調整は対外収支にとってプラスとなる可能性がある。
- 間接税の引き上げや所得税の漸次引き上げ、一連の租税支出の廃止、給付金制度の改革などを通じて実現可能。
- 産業政策と国際対応
- 産業政策は外部性や市場の失敗が存在する狭い目的に限定され、国際的義務と整合的であるべきである。
- 産業政策が公平な競争環境を歪める場合は何らかの是正が適切であり、WTOと整合的なツールを通じて達成すべきである。
- 多国間貿易ルールは補助金に関するガードレールを定めており、多国間紛争解決または相殺関税を通じた解決策が可能である。
- 関税や非関税障壁、国内調達規定を通じた一方的な対応は誤った解決策となり得るため、各国政府はWTOのルール・規範を強化するために団結すべきである。
出典:IMF記事「中国と米国の貿易収支を主に左右しているのは国内のマクロ経済要因」
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