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アジア太平洋地域経済見通し 

2006年5月

アジア太平洋地域経済見通しのPDFファイルはこちらをご覧下さい。(ただし、第3章及び第4章は除く)

要旨
    定義 
第1章 最近の進展及び見通し
第2章 新興アジア諸国の金融動向
Box 1 日本の再生
Box 2 オーストラリア及びニュージーランド
Box 3 ASEAN4カ国と電子機器サイクル
Box 4 石油が成長に与える影響
Box 5 活況を呈す消費者金融
Box 6 鳥インフルエンザへの対応
Box 7 日本の量的緩和解除
Box 8 アジアの対外社債の活況

要旨

• 2006年もアジア経済は好調を維持するものと予測される。地域成長率は昨年と同じ7%と予測されるが、これは昨年9月の「アジア太平洋地域経済見通し」の予測6%を上回っている。

• 日本では、堅調な企業設備投資に加えて労働市場の安定化が家計所得及び消費を刺激し国内需要を拡大しており、順調に回復している。

• 一方、新興アジア諸国経済は、電子機器を中心に当地域の製品に対する外需の高まりの恩恵を受けており、この状況は当面続くものと予測される。また、中国とインドを除き、国内需要は長らく停滞していたが、2005年初めから好転している。

• アジア経済は、幾つかの世界的リスクの影響を受ける可能性がある。

• 原油高:これまでのところ原油価格の高騰はアジアの成長に若干の影響を与える程度であったが、予期せぬ需要増というよりは、むしろ将来の供給懸念が価格の主な変動要因になったことから、今後の状況は変わる可能性がある。

• 金融市場引き締め:世界的に流動性が引き締まるなか、当地域の金融市場が試されよう。アジアの銀行部門の健全性は改善したが、家計への信用供与が急増した国々もあり、緊密な監督が求められる。また、アジアは、新興市場の株価高騰の恩恵も享受してきたが、世界的にリスク回避が高まるなかで、外国人投資家が資金を引き上げることがあれば、他の地域と同様に株価下落を経験するであろう。だが全般的に見て、経済の基礎条件が改善して脆弱性が軽減した当地域では、これらのリスクは概して対処可能なはずである。

• 世界的な経常収支不均衡:無秩序に不均衡の解消が進み、米国需要が急激に減速すると依然として外需に依存するアジア経済に重大な影響がもたらされよう。

• 鳥インフルエンザ:流行のリスクを数値で表すのは極めて困難であるが、他のリスクより壊滅的な影響を与える可能性をはらんでいる。その影響はある程度危機管理計画の質に左右されるが、そのような計画はほとんど未検証のままである。

• インフレは引き続き抑制されており、2006年のインフレ率は平均3%と予測される。しかしながら、状況は地域内でも異なり、価格圧力はASEAN4カ国が最も強力である。国内石油価格調整の影響が徐々に弱まり、最近の金融引き締めの効果が浸透するにつれて、ASEAN4カ国でもインフレは年間を通じ減速するものと考えられる。

• 原油輸入額増加の圧力と、一部の国では内需の拡大もあって、対外経常収支の黒字はほとんどの国で減少している。中国を除く新興アジア諸国では、今年の黒字は国内総生産(GDP)の2.75%と、2004年の水準からほぼ半減するとみられる。これに対し中国では、輸出の増加により昨年の経常黒字は2倍を超える増加となり、GDPの7%に達した。今年もこの水準が維持されるものと予測される。

• 同時に、米国金利に対するアジアの金利スプレッドが縮小し、人民元切り上げへの期待が減退したことから、資本流入もおおむね減少した。これを受け、為替レートの上昇及び外貨準備高の累積は減速した。今後の資本流入は、上記の傾向が続くかどうか、また、世界金融環境の変化次第であろう。このような状況変化によっては、新興市場資産に対するリスクプレミアが上昇する可能性もありうる。

• こうした環境の中、新興アジア諸国の政策立案者は3つのマクロ経済上の課題に直面している。第一に、中央銀行は国内需要の最近の改善を脅かさずに、国際原油価格の高騰から生じるインフレ圧力に対処する必要がある。第二に、政府は人口高齢化及び公共インフラ改善に伴うコスト負担を捻出すべく財政状況の改善を図る一方で、政府債務の削減に努めている。

• 第三に、政府は成長を支えて対外不均衡を削減するために、国内需要の活性化も試みている。過去2年間に為替レート柔軟性が増し、韓国ウォンや中国・台湾省ドルなどいくつかの通貨は特に急激に上昇し、家計の購買力を高め、消費を刺激することとなった。中国は新為替レート体制のもとで可能となった柔軟性をもっと充分に活用して、より均衡の取れた堅調な成長を促進し、多大な対外不均衡の是正に役立てるべきである。

• 中国を除く新興アジア諸国では、需要の構造転換のために投資の回復が必要となる。1997年の危機後、投資はGDPのほぼ10%近く減少しており、それ以降回復していない。この落込みの一部は1997年以前の持続不可能なブーム(特に建設ブーム)に対する調整であるが、この要因を考慮しても、投資は過度に落ち込んでいると言えよう。10年近く経った今、投資減少は企業のリストラによる過渡的な現象であると言う事はできない。むしろ地域での生産活動が電子機器など高度産業に移行していく過程で、輸出や生産が見込みにくくなり、増加したリスクに企業が対処したためと見られる根拠もある。

• この事は、投資を活発化するために2つの方向で改革を推し進める必要があることを示している。金融セクターは、企業部門から幅広い投資主体へリスク移転させる能力が向上できるよう更に発展する必要がある。また、不確実性を低減し、投資収益率を高めるような投資環境の改善も必要である。

• これに対し、中国では消費をいかに促すかが重要課題である。1980年以来、消費のGDP比は10%以上低下し、40%程度となっているが、その大部分は家計の可処分所得(対GDP比)の下落を反映するものである。これは増大した企業収益が、家計に移転されなかったためである。加えて、年金支給や医療、学校教育への先行き不安の高まりを主な要因として、家計は高い貯蓄率を維持してきた。

• これらの問題の解決には、マクロ経済面での政策変更及び市場の歪みを是正する構造改革が必要となるであろう。特に為替レートをより柔軟にし、歳出を社会的支出に振り向けていくことで消費を刺激できるであろう。また銀行及び金融市場改革を推進すれば、与信制度を拡充し、投資収益を引き上げ、また予備的貯蓄を低下させるため、消費の拡大を後押ししよう。