特別引出権 (SDR)

2016年10月5日

特別引出権( SDR)は、加盟国の準備資産を補完する手段として、IMFが1969年に創設した国際準備資産です。2016年3月現在、2,041億SDR(約2,850億ドルに相当)が発行され加盟国に配分されています。SDRは自由利用可能通貨と交換することができます。2016年10月1日付けで、SDRの価値は、主要5 通貨(米ドル、ユーロ、人民元-RMB-日本円、スターリング・ポンド)からなるバスケットに基づいて決められます。

SDR の役割

SDRは1969年に、ブレトン・ウッズの固定為替相場制の枠組みの中で補完的な国際準備資産としてIMFが創設しました。この制度に参加している国は、為替相場を維持する必要性に合わせ、外国為替市場で自国通貨の購入に使用できる準備資産―政府または中央銀行が保有する金及び広く受け入れられている外貨― を必要としていました。しかし、二大準備資産の と米ドルの国際的供給は、世界貿易の拡大及び当時発生しつつあった金融フローを支えるには、不十分であることが判明しました。このことから、国際社会はIMFの監督の下、新たな国際準備資産を創設することを決めたのです。

SDRの創設からわずか数年後、ブレトン・ウッズ体制は崩壊し、主要通貨は変動為替相場制に移行しました。その後、国際資本市場の成長により、信用力のある国の借り入れが促進され、多くの国で外貨準備の蓄積が進みました。これらを背景に、国際準備資産としてのSDRへの依存度が低下しました。 しかし、最近になって、2009年に配分された合計1,826億SDRが、世界的な金融危機の際に世界の経済システムに流動性を与え、加盟国の外貨準備高を補完するうえで重要な役割を果たしました。

SDRは通貨ではなく、またIMFに対する請求権でもありません。むしろ、SDRは、IMF加盟国の自由利用可能通貨に対する潜在的な請求権だといえます。SDRの保有者は、二通りの方法で保有するSDRと引き換えに、自由利用可能通貨を入手することができます。ひとつは、加盟国間での自主的な交換取極を通した方法、もうひとつは、IMFに指定された強固な対外ポジションを有する加盟国が、弱い対外ポジションの国からSDRを購入するというやり方です。また、SDRは補完的準備資産としての役割に加え、IMF及び他の一部の国際機関の会計単位としての側面も有しています。

SDR の価値を決める通貨バスケット

SDRの価値は当初、純金0.888671 グラムに相当し、また当時の1米ドルに相当すると決められていました。1973年のブレトン・ウッズ体制の崩壊に伴い、SDRは通貨バスケットとして再定義されました。2016年10月1日現在、SDRバスケットは、米ドル、ユーロ、人民元、日本円、 及びスターリング・ポンドから構成されています。

ドルに換算したSDRの価値は、毎日決定され、IMFのウェブサイト に掲載されます。これは、毎日ロンドン市場の正午の為替相場を基に、バスケットの各通貨の特定の額の合計を米ドルに換算したものです。

通貨バスケットの構成は、世界の貿易及び金融システムにおける通貨の相対的重要性を反映したものであるよう、5年毎に、或いは状況の変化により5年以内での見直しが正当と判断された場合はそれ以前に、IMF理事会が見直しを行ないます。2015年11月に終了した直近の見直しで、2016年10月1日に自由利用可能通貨(IMF協定30条(f))として人民元がSDRバスケットに加わりました。

2015年の見直しでは、通貨構成比重を算出する新たな計算式も採用されました。これは、通貨発行体の輸出額と複合的な金融指標に同等の役割を付与しています。金融指標は、関連通貨の発行体ではない他の金融当局が保持する加盟国(もしくは通貨同盟)通貨建ての外貨準備高、関連通貨の外国為替市場での売買高、及び関連通貨建ての銀行の対外負債と国際債券の総額を、等しく考慮しています。

各構成通貨の比重は、米ドル-41.73% 、ユーロ-30.93% 、RMB-10.92% 、日本円-8.33% 、英ポンド-8.09% となっています。これら比重は、2016年10月1日に発効した新規SDR評価バスケットに含まれる5通貨それぞれの通貨量を決定する際に用いられました。新しい通貨量は、今後5年間のSDR評価期間を通じて固定されたままとなります(毎日発表される SDR値 を参照)。通貨量が固定されていることから、SDRバスケットの通貨の相対的比重は評価期間中に変更されることがあります。この期間中に他の通貨と比較して価値が上昇(下降)すると通貨の比重が上がる(下がり)ます。

現在次回の見直しは、2021年9月30日までに行う予定です。

SDR 金利

SDR金利 は、借り入れを行う加盟国に課す金利や、通常の(非譲許的な)IMF融資 で使う加盟国の資金の利用に対し加盟国に払われる金利の計算の基礎になります。また、保有するSDRに対し加盟国に支払われる金利、またSDR配分の際に課される金利にもなります。SDR金利は、SDRバスケットの構成通貨国・地域の、短期市場における代表的な短期債務証券の金利の加重平均を基に 毎週決定されます。

IMF 加盟国に対する SDR 配分

IMF協定 (第15条1項及び第18条)にしたがい、IMFは加盟国に対し各国のクォータ に応じ、SDRを配分することができます。SDRの配分により各国は、コストのかからない無条件の国際準備資産を受け取ることになります。SDRのメカニズムは資金を自己調達する仕組みになっており、配分額に手数料を課し、その手数料は保有SDRの金利の支払いに使用されます。加盟国が配分されたSDR保有額を全く使用しなかった場合、手数料は受け取る金利と同額となります。しかし、加盟国のSDR保有額が配分額を上回る場合には、実質的に超過分に対し金利を得ることになり、逆に、保有額が配分額を下回る場合は、不足分に対し金利を支払うことになります。IMF協定はSDRの消却もできると定めていますが、これまで行われたことはありません。IMF協定は、IMF加盟国以外のBISやECB、地域開発銀行といった一定の公的機関をSDR保有者として規定できるとしています。規定された保有者は、SDRを得て他のSDR規定保有機関やIMF加盟国との取引や活動に用いることができます。IMFは、IMF自身や規定保有機関にSDRを配分することができません。

SDR の一般配分 は、既存の準備資産の補充の世界レベルでの長期的な必要性を基に、判断される必要があります。一般配分についての決定は、最大5年(最新の報告は2016年6月 のもの)と定められている基本期間ごとに行われますが、実際に一般配分が行われたのは、これまで僅か3回となっています。最初の配分は、1970年から1972年にかけ行われたもので合計93億SDRが配分されました。その後、121億SDRの第2回目の配分が1979年~1981年に、2009年8月29日に第3回目の1,612億SDRの配分が行われました。

また、IMF協定の第4次改正が2009年8月10日に発効となり、これにより215億SDRの一度限りの特別配分 が行われました。第4次改正の目的は、現在のIMFの加盟国の5分の1以上にあたる1981年以降にIMFに加盟した国が、2009年までSDR配分を一度も受けていないという状況を是正し、全てのIMFの加盟国が、公平にSDR制度に参加できるようにするというものでした。

2009年のこの一般配分と特別配分により、SDRの累積配分額の合計は2,041億SDRとなりました。

SDR の売買

IMFに対する責務を遂行するため加盟国がSDRを購入する必要性がたびたび生じます。また準備金の構成を調整するために、IMF加盟国がSDRの売却を希望する場合もあるかもしれません。IMFは加盟国とSDRの規定保有機関との間の仲介者となることができ、これによりSDRと自由利用可能通貨の交換を確保します。20年以上に渡り、SDR市場は自主的な交換取極の下で機能しています。この取極の下、一部の加盟国とSDRの1規定保有機関が、各々の取極で定められた限度内でSDRの売買を自主的に行なってきました。2009年のSDR配分の後、引き続きSDRの自主的交換の市場の流動性が確保されるよう、自主的取極の数と規模が拡大されました。 現在、自主的なSDRの交換取極として、2009年のSDR配分以降の新規19取極を含め、32取極が結ばれています。

1987年9月以降、自主的な取引がSDRの流動性を確保してきました。しかし自主的な交換取極が十分に機能を発揮しない場合、IMFは指定制度を起動することができます。このメカニズムの下では、IMFに指定された十分に強固な対外ポジションを有する加盟国が、弱い対外ポジションを有する加盟国から、一定の額を限度に自由利用可能通貨でSDRを購入することになっています。この取極は、SDRの流動性及び準備資産という性質を保証するバックネットとして機能します。