IMF の融資制度

2016年10月31日

IMFの主要な責務のひとつに、国際収支上の問題を抱えている、或いはその可能性のある加盟国への融資があります。IMFの金融支援は、根本的な問題の解決を図りながらも、外貨準備の再構築、自国通貨の安定、輸入代金の支払いの継続、また力強い経済成長のための条件の回復を目指す加盟国の取り組みを支えます。なおIMFは開発銀行と異なり、特定のプロジェクトに対する融資は行いません。

IMF融資を受ける

加盟国は国際収支上の実際或いは潜在的な必要に迫られた場合、つまり十分な外貨準備のバッファーを今後も維持しつつ、多国間の純決済(輸入、対外債務の返済など)のための無理のない条件での十分な融資が存在しない・あるいは潜在的に存在しない可能性がある場合に、IMFの金融支援を要請することができます。IMFの資金は、国際収支上の問題の是正並びに強固な経済成長に不可欠な条件の回復に向けた、加盟国の改革や調整政策を緩和するクッションとして機能します。

IMF融資の変化

IMFの融資の規模は時とともに大きく変化してきました。1970年代のオイルショックや1980年代の債務危機の直後に、IMF融資は急激に増加しました。また1990年代には中欧や東欧における変遷のプロセスと新興市場国・地域の危機を受け、IMF資金への需要が更に急増しました。2000年代のはじめには、ラテンアメリカ及びトルコでの深刻な危機によりIMF資金への需要が高い状況が続きました。その後、世界的な金融危機の後、IMFの融資は再び2008年末以降上昇しました。

IMF融資のプロセス

通常IMF資金は、加盟国からの要請を受け、融資「取極」の下で利用可能となります。取極は、利用する融資制度に応じて、加盟国が自国の国際収支上の問題の解決に向け実施すると合意した経済政策及び措置を明記しています。これら取極の基盤となる経済政策プログラムは、各国がIMFとの協議の上作成したもので、大半の場合 レター・オブ・インテント(趣意書)の形で理事会 に提出されます。さらに添付される「覚書」に詳細が記されています。理事会による取極の承認の後、IMF資金は通常、プログラムの実施段階に合わせ分割で支払われますが、一部の取極の下では、極めて力強いパフォーマンスの実績のある国はIMF資金への迅速な一括アクセスが可能であり、この場合明確な政策合意を条件としません。

IMF 融資制度

IMFの様々な融資制度は、異なるタイプの国際収支上のニーズ(実際の、見込まれる、あるいは潜在的な:短期あるいは中期)そして多様な加盟国のそれぞれの環境に合わせ調整されています。低所得国は、「貧困削減・成長トラスト(PRGT:「 IMFの低所得国向け支援」参照)で利用可能な制度を通し、譲許的条件で借りることができます。譲許的融資の金利は2016年末までゼロ金利になっています。

非譲許的融資

非譲許的融資制度は、スタンドバイ取極(SBA)、フレキシブル・クレジットライン(FCL)、予防的流動性枠(PLL)、及び拡大信用供与措置(EFF:中長期的なニーズ)です。また、国際収支上の切迫した問題に直面している加盟国に、ラピッド・ファイナンシング・インストルメント(RFI)を通じて緊急支援を行うことができます。全ての非譲許的なファシリティでは、市場金利に連動した「レート・オブ・チャージ」と呼ばれるIMFの金利で融資が行われますが、(一定の枠以上の)大規模な融資に関してはサーチャージが適用されます。レート・オブ・チャージは、主要国際通貨市場の短期金利を基に毎週改定されるSDR金利に基づいています。IMFからの最大借入可能額、つまり「融資利用限度」は融資の種類により異なりますが、通常加盟国の IMFクォータ の倍数となっています。また特別なケースでは、利用限度を越える融資も認められます。一方、スタンドバイ取極(SBA)、フレキシブル・クレジットライン(FCL)、及び拡大信用供与措置(EFF)ではアクセス上限を事前に設定していません。

スタンドバイ取極(SBA これまで、IMFの非譲許的融資の大半はSBAを通して行われています。SBAは短期的な国際収支上の問題に対処するよう考案されています。プログラムのターゲットはこれらの問題の解決を念頭においており、融資の支払いはこれらのターゲット(「 コンディショナリティ 」)の達成を条件に行われます。SBAの適用期間は通常12~24ヶ月で、返済期間は支払いより3.25~5年となっています。SBAでは、状況が悪化した場合に備え合意された額の利用を留保するなど、予防的な目的での活用も可能です。融資の支払い方法も柔軟になっており、適当と判断された場合は、融資を迅速に受け取ることも可能です。

フレキシブル・クレジットライン(FCL)。 FCLは極めて強固なファンダメンタルズと政策、そして政策実施の実績を備えた国を対象としています。FCL取極は、加盟国からの申請を受け、事前の資格基準を満たしていると判断された場合承認されます。適用期間は1年または2年で、1年後、定期的な中間レビューを実施します。アクセスはケースごとに設定され、融資利用限度は適用されません。また分割払いではなく一括で迅速な融資を受け取ることが可能です。融資の支払いに関しては、FCLを受ける資格がある国は適切なマクロ経済政策を実施してきたことから、SBAと異なり特定の政策合意を条件とされることはありません。また信用枠は柔軟に活用でき、承認と同時に引き出しもしくは予防目的での活用も可能です。FCLの返済条件はSBAと同じです。

予防的流動性枠(PLL 。PLLは、健全なファンダメンタルズ及び政策を実施している、或いはその実績を有する国を対象としています。PLLを受ける資格があっても一定の脆弱性を抱えていて、FCLの適格基準に達しない国でも、IMFの融資制度であるSBAに通常伴うような、大幅な政策調整は求められません。PLLは、特定された残る脆弱性の解決に焦点を絞った条件に資格基準(FCLと同様ですが、低く設定されています)を結びつけています。PLLの適用期間は6カ月もしくは1~2年です。1~2年のPPL取極は、6カ月に1度レビューが行われます。6カ月PLLへのアクセスは平時においてはクォータの125%ですが、この限度は国際収支上のニーズが外生ショックに起因するなど例外的な場合(地域的あるいはグローバルな緊張の高まりなど)には、クォータの250%に引き上げることもできます。1~2年PLLにおいては、年間アクセスの限度はクォータの250%、全てのPLL取極で累積でクォータの500%が認められます。信用枠を引き出す、或いは予防目的で活用することを柔軟に決めることができます。PLLの返済期限はSBAと同じです。

拡大信用供与措置(EFF EFFは、抜本的な経済改革を必要とするような大きな歪みに起因する、中・長期的な国際収支上の問題の解決に取り組む加盟国を支援します。EFFの利用は最近の危機の間に大幅に増加しました。これは、一部加盟国が抱えている国際収支上の問題の構造的な性質を反映しています。EFF取極の適用期間は通常SBAより長くなっていますが、承認の段階で3年を超えることはありません。しかし、3年を超える国際収支上のニーズが存在する場合、マクロ経済の安定性を回復するための調整に時間がかかる場合、そして当該国が徹底した持続的な構造改革を行う能力と意欲を持っていると十分に認められる場合には、最長4年の期間が認められます。返済期限は融資支払い日から4.5~10年となっています。

ラピッド・ファイナンシング・インストルメント(RIF 。RIFは、従前の緊急支援策にかえて、その範囲を拡大するために導入されたものです。RIFは切迫した国際収支上の問題に直面している全てのメンバーに一定の条件で迅速な金融支援を与えるものです。RFIへのアクセスは、年間でクォータの37.5%、累積でクォータの75%です。

譲許的融資

2010年、IMFのPRGTの低所得国(LICs)向け譲許的融資制度 の改革が行われました。また、2013年にはIMFの金融支援の柔軟性を高めLICsの多様なニーズにより良く対応したものとするためのより広範な取り組みの一環で、さらに改善されました。譲許的融資制度の基準と限度は、生産、貿易、資本フローの拡大に応じその水準を維持すべく2015年に拡大されました。融資条件の譲許性が拡張されました。金利は2年1回見直されます(現在は2018年末までゼロ金利です)。全ての制度が、力強く永続的な貧困削減及び成長と整合的な持続可能なマクロ経済状況の達成を目標とした、加盟国が主体となったプログラムを支えます。より良い状況にあるPRGT適格国は、非譲許的融資と譲許的融資を組み合わせた「混合型の」IMFの金融支援を受けることもあります。

拡大クレジット・ファシリティ(ECF) は、慢性的な国際収支上の問題を抱える低所得国向けの中期的支援の主要な制度です。現在ECFの下での融資はゼロ金利となっており、支払猶予期間は5年半、最終満期は10年となっています。

スタンドバイ・クレジット・ファシリティ(SCF) は、 短期的あるいは潜在的な国際収支上のニーズを抱える低所得国へ金融支援を行います。SCFは、予防的な目的での運用も含め、様々な状況下での支援が可能となっています。現在SCFの下での融資はゼロ金利となっており、支払猶予期間は4年、最終満期は8年となっています。

ラピッド・クレジット・ファシリティ(RCF) は、 緊急を要する国際収支上の問題に直面している低所得国に対し、限定的なコンディショナリティの下で、迅速な金融支援を行います。RCFは、低所得国向け緊急支援を合理化したもので、様々な状況下で柔軟に活用することができます。現在RCFの下での融資はゼロ金利となっており、支払猶予期間は5年半、最終満期は10年となっています。

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