IMFの概要
2018年4月19日
国際通貨基金(IMF)は、国際金融の安定を促進し、国際通貨協力を推進しています。また、国際貿易や雇用、持続的な経済成長を促進し、貧困削減に貢献しています。IMFは、加盟国190か国によって運営され、加盟国政府に対して責任を負っています。
IMF設立の経緯と機関の役割
IMFは、1944年7月にアメリカ合衆国のニューハンプシャー州ブレトン・ウッズで行われた国際連合の会議にてその設立が提案されました。会議に出席した44か国は、国際経済協力の枠組みの構築と、1930年代の世界恐慌の一因となった通貨切り下げ競争の再発回避を目指しました。IMFが担う一番重要な役割は、国際通貨制度の安定性を確保することです。国際通貨制度とは、世界の国々や人々が相互に取引を行う上で不可欠な為替相場制度や多国間決済制度を指します。
サーベイランス
国際通貨制度の安定を維持し、危機を防止するために、IMFは各加盟国の政策や、国・地域、そして世界的な経済・金融の状況を、サーベイランス(政策監視)と呼ばれる制度を通じてモニタリングしています。IMFは加盟国に対し政策助言を行い、経済の安定性強化、経済・金融危機に対する脆弱性の軽減、さらには生活水準の向上を目指す政策を推奨します。またIMFは、世界的見通しについては世界経済見通し(World Economic Outlook)で、金融市場に関しては国際金融安定性報告書(Global Financial Stability Report)で、国家財政の動向は 財政モニター(Fiscal Monitor)で、そして主要経済国の対外資金ポジションについては対外セクター報告(External Sector Report)で定期的に分析を行っており、また一連の地域経済見通しも発表しています。
金融支援
国際収支の問題が生じている加盟国、また、生じる可能性がある加盟国に融資を提供することは、IMFの根幹をなす役割です。当該政府当局は、IMFとの密接な協力の下、IMFが金融支援を提供する調整プログラムの計画立案を行い、これらプログラムの効果的な実施に基づいて金融支援の継続可否が判断されます。世界経済危機を受けて、IMFは2009年4月に融資能力を強化し、金融支援メカニズムの大幅な見直しを承認し、その後の数年間にさらなる改革を採択しました。こうした改革によってIMFの危機予防手段が拡充され、システミックな危機発生時に伝播を緩和するIMFの能力が向上し、また、各加盟国の個別ニーズに応えるために各種制度をさらに調整できるようになりました。
低所得国向けの融資財源が2009年に大幅に拡大された一方で、IMFの譲許的融資ファシリティの平均限度額は倍増しました。そして、2016年には、第14次一般クォータ見直しで合意されたクォータ増額を実施する条件が整い(下記参照)、IMFの非譲許的融資ファシリティの利用限度が再度見直され、その増額が行われました。加えて、譲許的融資のゼロ金利が2018年末まで延長され、緊急融資の金利は恒久的にゼロに設定されています。最後に、IMFの譲許的融資活動を支えるため、融資財源をさらに確保するための取り組みが2014年に行われ、これまでに約160億ドル(110億SDR)の資金が集められました。
能力開発
加盟国がより良い経済制度を構築し、関連分野で人的能力を強化できるように、IMFは技術支援と研修を提供し支援を行っています。こうした支援は、例えば、税制や行政、支出管理、金融・為替政策、銀行・金融システムの監督と規制、法的な枠組みや統計などの分野で、より良い政策を設計し実行するために提供されます。
特別引出権(SDR)
IMFは加盟国の準備資産を補完する手段として、特別引出権(SDR)と呼ばれる国際準備資産を配分します。世界でのSDR配分の累積総額は、約2,040億SDR(約2,960億ドル)に達しています。SDRは加盟国間で任意で通貨と交換することも可能です。
財源
IMFの主な財源は加盟国からのクォータであり、それは世界経済における各加盟国の相対的な経済規模を概ね反映しています。IMFは定期的にクォータの一般見直しを行っており、最近では2010年に第14次クォータ見直しが行われ、この見直しで合意されたクォータ増額を実行する条件が2016年に満たされました。第14次クォータ見直しによって、クォータ財源が2倍となり、その総額は約4,770億SDR(約6,920億ドル)となっています。これに加えて、IMFと一部加盟国と諸機関の間で信用取極が締結され、これによってIMFは最大で1,820億SDR(2,640億ドル)の借り入れを行うことが可能になり、これはクォータを補完する主な予備財源となっています。また、第3の防衛線として、加盟国は国別借入取極を通じてIMFの財源を確保することを約束しており、この総額は約3,160億SDR(約4,600億ドル)となっています。
ガバナンスと組織
IMFは各加盟国政府に対して説明責任を負っています。IMFは総務会を組織の頂点に置いていますが、この総務会は一般的に各加盟国の中央銀行総裁や財務大臣である総務1人・総務代理1人によって構成されています。総務会は年に1度、IMF・世界銀行の年次総会の際に開かれます。さらに、総務のうち24人は国際通貨金融委員会(IMFC)に出席し、国際通貨金融システムの監視と管理について理事会に助言を行います。IMFの日常業務は、24か国により構成される理事会の指揮の下で行われますが、この理事会が全加盟国を代表し、IMF職員の支援を受けます。IMF専務理事は、IMF職員を統括するとともに理事会の議長を兼任します。また、専務理事を4人の副専務理事が補佐します。
IMFに関する基本情報
- 現在の加盟国数 : 190カ国
- 本部 : ワシントンD.C.
- 理事会 : 国もしくは国のグループを代表する理事24人
- スタッフ : 150カ国より約2,700人
- 出資割当額(クォータ)総計 : 4,770億SDR(6,920億ドル)
- 借入取極額: 4,980億SDR(7,230億ドル)
- 現在の融資取極に基づく合意済融資 : 1,300億SDR(1,890億ドル)。そのうち、未融資実行残高920億SDR(1,340億ドル)。
- 最大借入国 : ギリシャ、ウクライナ、パキスタン、エジプト
- 予防的融資の最大相手国 : メキシコ、コロンビア、モロッコ
- サーベイランス協議 : 2014年に132か国。2015年に124か国。2016年に132か国。
- 能力開発支出 : 2016年度に3億3,200万ドル。IMF総予算の25%超。
- IMFの主な役割 :
- 国際的通貨協力の推進
- 国際貿易の拡大とバランスの取れた成長の促進
- 為替安定の促進
- 多国間決済システム確立の支援
- 国際収支上の困難に陥っている加盟国への (適切なセーフガードを伴う) 財源提供