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世界経済危機へのIMFの対応

2016年7月27日

国際通貨基金(IMF)は世界的な経済危機に対しあらゆる手段を取り加盟国を支援しました。IMFは融資能力を強化・これを駆使し、国際社会での様々な経験に基づき政策面での解決策を提示するとともに、加盟国のニーズにより良い対応ができるよう様々な改革を行いました。

危機に対する防火壁を構築。 世界金融危機の打撃を受けた加盟国の拡大を続ける資金調達ニーズに対応するとともに、世界の経済および金融の安定性の強化を支えるため、2008年の世界危機の発生当初よりIMFは、融資能力の大幅強化に取り組んできました。IMFの主要な原資である加盟国が振り込む クォータ(出資割当額) を増額するとともに、加盟国との大規模な借入取極を確保するなどの手段が講じられました。

危機関連融資の拡大。 IMFは融資枠組み 全般の見直しを実施し、危機予防をこれまで以上に重視しながら加盟国のニーズにより合った枠組みの構築を目指すと共に、プログラムのコンディショナリティを合理化しました。また、危機当初より、7,000億ドルを優に超える加盟国向け融資にコミットしました。

世界最貧国への支援。 IMFは過去に例をみない規模で、低所得国に対する政策を改革しました。譲許的融資はそれまでの4倍増となりました。

IMFの分析と政策助言を強化する。 世界経済危機に起因する課題や波及的効果の克服に取り組む加盟国を支援するために、IMFはリスク分析や政策助言を提供しました。また、危機からの教訓を考慮しながら、よりグローバル化が進み相互連関性が高まった世界にマッチしたサーベイランスを行うために、 サーベイランス を強化・改革するための大規模なイニシアティブを複数立ち上げました。

IMFのガバナンス改革。 2008年4月と2010年11月、IMFは新興国の重要性が増していることから、IMFの正当性の強化を目指した広範なガバナンス改革を承認しました。改革は、より小国の途上国のIMFでの影響力も確保しました。

危機のための防火壁を構築する

IMFが加盟国支援に使うことができる資金基盤の強化が、世界金融危機の克服のための取り組みの重要な側面でした。2009年と2010年に、加盟国はIMFに対し、二者間借入取極を通し、約1,700億SDR(現在の為替レートで約2,500億米ドル)の追加的資金を提供しました。この資金は拡大された新規借入取極(NAB)に組み入れられ、その規模は340億SDRから3,700億SDR(約5,100億ドル)へと拡充しました。2012年、世界の金融環境の悪化を受け、複数の加盟国が新たな二者間取極を通しIMFの資金基盤をさらに強化することにコミットしました。2015年末までに、35の合意・総額約2,800億SDR(3,900億米ドル)がまとまりました。

2010年12月に承認された第14次クォータ一般見直し により、IMFの恒常的資金は4,770億SDR(約6,630億ドル)へと倍増しました。この増額を実現するための条件が2016年1月に揃いました。その後、NABの信用取極は、14次見直しのクォータ増額のための支払いに合わせ3,700億SDRから1,820億SDRへと縮小されました。NABは引き続き重要なクォータ資源のバックネットの役割を果たしています。

現在、IMFの総融資能力(クォータ、NAB、2012年の借入取極-ある程度の流動性を確保するために一部取り置きした後)は、6,900億SDR(約9,500億ドル)となっています。

IMFの融資能力の拡充に加え、2009年には、加盟国は、2,500億ドル(当時)相当の SDR の一般配分にも合意しました。結果、SDRは約10倍増となりました。これは、低所得国をはじめとする多くの国の外貨準備高が大幅に増えたことを意味します。

IMF融資枠組みの改革

世界的経済危機の中、加盟国により良い支援をおこなうため、IMFは融資能力の増強を行うとともに、より大規模な融資の提供やこれまで以上に融資の早期実行を行い、その条件も要請国の様々な状況や特徴を考慮するなど、融資手法の抜本的な見直しを承認しました。

優れた実績を有する国を対象とした信用枠。 2009年4月に導入されたフレキシブル・クレジットライン (FCL) は、翌年8月に一段と強化されました。極めて強固なファンダメンタルズを備えた加盟国を対象とした融資制度であるFCLは、主に危機予防の保険としての機能を果たすもので、IMF財源への早期かつ大規模なアクセスが可能です。FCLの信用枠が承認された場合、政策条件に一切縛られることはありません。これまでに、コロンビア、メキシコそして ポーランドに対し、FCLの下で合計約1,000億ドルまでのアクセスが承認されています(これまでこれらの合意の下では、引き出しは行われていません)。FCLの承認は、借入コストの低下と政策余地の拡大に資することが分かっています。

柔軟な条件で流動性にアクセス。 地域的または世界的な緊張の高まりにより、危機のリスクと無縁と思われる国が影響を受ける可能性があります。こうしたストレス時に、危機の第三者に対して十分な短期流動性を迅速に提供すれば、市場の信認が増し、波及を抑制し、危機の総体的コストを削減することが可能となるでしょう。2011年に設立された予防的流動性枠は、経済のファンダメンタルズは健全な一方で、依然として脆弱性を抱える加盟国の流動性ニーズに応えることを目指しています。マケドニアおよびモロッコがこれまでにこれを活用しています。

改革後のIMF融資条件。 構造的パフォーマンス基準は、低所得国向けプログラムを含むあらゆるIMF融資において廃止されました。構造改革は引き続きIMF支援プログラムに含まれますが、加盟国の回復にとり不可欠な分野に一段と焦点を絞ったものとなりました。

社会的保護を重視。 IMFは、社会扶助をはじめ、社会支出の保護 や増額で各国政府を支援しました。特に、社会の最脆弱層への危機の影響を緩和する、ソーシャル・セーフティ・ネット・プログラムへの支出の拡大と、対象の絞込みの向上に向けた施策を推進しました。

危機プログラムのレビュー。 IMFは、2008年の世界危機後に始まったIMF支援プログラムから教訓を導き出すために、幾つかの見直しを行いました。この一連の見直しにより、IMF支援プログラムが、世界金融危機を切り抜けるための道を描く上で有効だったことが分かりました。これにより、当初多くの人が懸念していた、世界の経済システムに大変動を引き起こすようなメルトダウンといったシナリオが回避されました。2008年の危機とそれまでの危機との劇的な違いを踏まえ、ショック、伝播経路、そして政策対応をめぐる不確実性が極めて高いなかで決定が下されました。プログラムの結果はその後のプログラムのデザインに生かされ、枠組みを強化しリスクの波及を減らすことで、後に政策の選択肢を広げる一因となりました。

世界の最貧国への支援

世界金融危機を受け、IMFは過去に例をみない規模で対低所得国政策の改革を実施しました。この結果、コンディショナリティが簡素化され、譲許性が向上し、社会支出の保護を一層重視するなど、IMFプログラムは、一段と柔軟で低所得国の各々のニーズに合ったものとなりました。

資金へのアクセスを拡大。 2009年、低所得国が貧困削減・成長トラスト(PRGT)を通し利用することができる譲許的資金が大幅に拡充しました。これは、G20首脳の要請に見合ったもので、IMFの譲許的融資制度のもとでの平均的な利用限度額は倍増となり、低所得国のための金融のセーフティネットが強化されました。

IMFの分析及び政策助言の強化

IMFは、一段とグローバル化が進み相互に結びついた世界に対応するために、サーベイランスを強化する重要なイニシアティブに着手しました。これらイニシアティブは、波及効果をカバーするため(ある国の経済政策が他国に与える場合)にサーベイランスの法的枠組みを改革する、リスクと金融制度の分析をさらに深める、加盟国の対外ポジションの評価を強化する、および加盟国の懸念に対してより速やかに対応するなどとなっています。

こうした取り組みのひとつとして、2012年7月にIMF理事会は、サーベイランスの基礎となる法的枠組みを強化するために、新たに統合されたサーベイランス決定を採択しました。2012年9月には、金融部門のサーベイランスを一段と強化するための具体的かつ優先的な措置を含めた金融部門サーベイランスに関する戦略を新たに承認しました。さらに、国際通貨制度における資本フローの重要性がますます増していることから、理事会は、IMFのサーベイランスと加盟国への助言の指針として資本フローの自由化と管理に関するIMFの組織としての見解を承認しました。

世界の経済大国の対外セクターに関する幅広い多国間的視点で一貫した分析を提示する対外部門の安定性に関するパイロット報告書 が、理事会で毎年協議されるようになりました。さらに、国際的な観点を取り入れるなどリスク分析は強化され、金融安定理事会(FSB)と共同で、早期警戒演習を行っています。実体経済、金融部門、及び対外安定性の連関性の分析も強化されました。また、 金融と貿易の結びつきの強化が、サーベイランス(波及効果報告書を含む)や国際金融のセーフティネットの強化に向けた融資に及ぼす影響の特定と理解を図るための作業も進められました。その他、サーベイランス(波及効果報告書など)や国際金融セーフティネットを強化するために、金融及び貿易の連関性の上昇の影響をマッピングし理解する作業も行われました。

2014年9月に完了した2014年の「3年ごとのサーベイランス・レビュー」は、こうした最近の改革を足場に、IMFのサーベイランスが今後も危機後の極めて連関性が高まった世界において、持続可能な成長を最良な形で確実に支援することに重点を置いています。 ここでは今後の業務上の優先課題として5点が挙げられています。すなわち、リスク分析と波及効果分析を一体化し深化させる。マクロ金融のサーベイランスを主流に組み込む。労働市場問題など構造政策をより注視する。一貫した専門家による政策助言を提供する。サーベイランスでは、明瞭かつ率直なコミュニケーションに支えられた加盟国を重視したアプローチを採る。その後発表された「専務理事のサーベイランス強化にむけた行動計画」は、こうした優先分野で前進するための具体的な措置の概要を示しています。第1段階の措置は既に導入過程にあります。金融セクター評価プログラムの見直しも2014年9月に終了しました。

全世界の失業者数が2億人を超え、多くの国で所得格差が広がるなか、IMFは内部向けの「雇用と成長に関するワーキンググループ」を立ち上げました。これは、加盟国の成長、雇用創出、所得分配に関連した目標達成を支援するにあたってのIMFの実効性を高めるための手順及び指針を提言しています。

世界経済をより良く反映したIMFガバナンスを目指して

IMFのガバナンス改革完了が、IMFの正当性と実効性に関する最優先事項です。

2010年12月15日、総務会は第14次一般クォータ見直しの下での広範なガバナンス改革を承認しました。クォータの倍増も合意されました。これにより最も貧しい加盟国の議決権を保護する一方で、ダイナミックな新興市場及び途上国へ、クォータシェアが6パーセントポイント以上移行します。改革は代表性の向上のための措置も含まれています。理事会は完全選任制となり、欧州先進国は理事会の総議席を2議席減らすことにコミットしています。

この一連の改革は2016年1月26日に実施されました。総議決権の85%に相当する加盟国の5分の3にあたる国々(188加盟国中113カ国)が批准したことで、全選任制の理事会が誕生するIMF協定の改正案が発効しました。

2010年の改革は、2008年4月の クォータ及びボイス の改革に基づき策定されたもので、2011年3月3日に施行になりました。これにより、最大の増加幅を見た中国、韓国、インド、ブラジル、メキシコをはじめ、54加盟国のクォータが増加しました。低所得国を含む他の135カ国については、基礎票が増加したことで議決権が拡大しました。基礎票の総投票権数に対する比率は一定に保たれています。また、第14次一般クォータ見直しと合わせると、ダイナミックな新興市場と途上国へクォータシェアの移行幅は9パーセントポイントです。