Typical street scene in Santa Ana, El Salvador. (Photo: iStock)

写真:Gopixa/iStock by Getty Images

IMF サーベイ・マガジン : 2015年SDRバスケットの見直しを進めるIMF

2015年8月4日

  • SDR の見直し、5年に1回実施
  • スタッフペーパーがIMFの初期的考察を提示:理事会の公式会議は2015年末
  • 元が採用基準を満たしているか否かが焦点

際通貨基金(IMF)理事会は、年末にかけ特別引出権(SDR)バスケットの構成内容と評価の見直しを公式に行う。

IMFは、中国の通貨である元が「自由利用可能通貨」の基準を満たしているか否かについて審査している。SDRバスケットに採用されるためには、広く使用され広く取引されているという基準を満たす必要がある(写真: IMF)

IMFは、中国の通貨である元が「自由利用可能通貨」の基準を満たしているか否かについて審査している。SDRバスケットに採用されるためには、広く使用され広く取引されているという基準を満たす必要がある(写真: IMF)

特別引出権の見直し

このプロセスの一環でIMF理事会は、SDRの構成の見直しに関する第1回目の非公式協議を開催した。SDRとは、加盟国の準備資産を補完するためにIMFが1969年に創設した国際準備資産である。

SDRの価値は現在、米ドル、ユーロ、スターリング・ポンド、及び日本円が構成するバスケットを基準としている。IMFは、SDRの準備資産としての価値を高める目的で、通貨バスケットの評価を世界の貿易及び金融システムにおける主要通貨の相対的重要性を反映するよう5年に1回見直す。

シダート・ティワリ戦略政策審査局長が、SDRの見直しのプロセスについて詳細に説明する。

IMFサーベイ: IMF理事会がIMFバスケットの見直しで非公式会議を開いたばかりです。この会議の目的はなんですか。

ティワリ: IMFは5年に1回、SDRを構成する通貨の状況を審査し、新たな通貨の採用機会を設けます。2015年はその見直しの年です。第一段階として理事会は非公式に、見直しをめぐる初期的考察を示したスタッフペーパーについて意見を交わしました。このペーパーは、それまでの進捗状況を説明するとともに、見直しに適用される法的枠組みや見直しの範囲、実務への影響や次のステップなどテクニカルな側面を明確にしています。

理事会は、年末にかけ見直しに関する公式協議を行います。

IMFサーベイ: SDRバスケットに採用される基準は何ですか。

ティワリ: 現在の基準は2000年に改訂されたもので、SDRバスケットは加盟国或いは通貨同盟が発行する通貨で、過去5年間で財とサービスの輸出額が最も高く、さらにはIMFが「自由利用可能通貨」であると判断した4通貨から構成されるとしています。

輸出基準は、バスケットに採用される通貨が、世界経済で中心的な役割を果たす加盟国・通貨同盟発行の通貨であることを担保するためのものです。SDRバスケットの通貨が自由利用可能通貨でなければならないという要件は2000年に組み込まれたもので、SDRバスケットの価値を計る上で金融取引の重要性を反映させるためのものです。

IMF協定は、「自由利用可能通貨」を「国際取引での支払いに広く使われ、かつ主要な取引市場で広く売買されている」通貨と定義しています。

自由利用可能通貨の概念は、実際に国際的に利用されていることや通貨取引を重視しており、通貨が自由に変動するか或いは完全に交換可能であるかということではありません。言い換えるならば、ある程度の資本規制がかけられていたとしても、通貨は広く使われ広く取引される場合があります。一方で、完全に交換可能な通貨が(国際取引におけるその経済の規模と相対的な重要性により)必ずしも広く使われ取引されているわけではないこともあるでしょう。

IMFサーベイ: 見直しの主な焦点は何でしょうか。

ティワリ: 輸出基準を満たしている通貨でSDRバスケットに採用されていない通貨は、現在中国の元(RMB)のみです。ですから、今回の見直しの主な焦点は、RMBがSDRバスケットに加わるために自由利用可能通貨という基準を満たしているかということになります。

理事会が協議したスタッフペーパーは、理事会の今後の決定のための情報提供源としての役割を果たすなど一定の基盤となります。こうしたことに加え、見直しでは、SDRバスケットの通貨比重を決定する手法や、SDR金利バスケットの金融商品についても見直しを行います。

IMFサーベイ: スタッフが現行のSDRバスケットの延長を提案しているのはなぜでしょうか。

ティワリ: 分かりやすくいうならば、現行のSDRバスケットは今年末に失効となります。我々はこれを、2016年9月30日まで9カ月延長することを提案しています。これは、暦年の末にバスケットの内容の変化を避けること、そしてSDR関連実務が円滑に機能するよう促すことが好ましいというSDR利用者の声を受けてのものです。また9カ月延長することで、理事会がRMBの採用を決定しバスケットが変化する可能性を踏まえ利用者が調整することもできるでしょう。

この延長案は今月中に理事が判断しますが、決して、見直しの最終的なタイミングや結果を予断するものではありません。

IMFサーベイ: バスケットに新たに通貨を加える場合、賛成はどの程度必要になりますか。

ティワリ: 一般的なルールとして、SDRバスケットの評価方法を変えるには70%という大多数の賛成が、そしてSDRの構成の「原則」を変えるなど特定の変更には総議決権の85%という大多数の賛成が必要となります。歴史的に見ると、評価方法を変える決定は、70%の大多数の賛成で行われています。

IMFサーベイ: 見直しプロセスの次のステップはなんでしょうか。

ティワリ: 見直しは順調に進んでいます。理事会の決定の判断を助けるため、幾つかの分野で更なる作業が必要です。スタッフは、2015年末に行われるであろう公式協議に先立ち、中国当局や他の加盟国と密接に連携しながら、データギャップや実務的課題への対処といった技術的な作業を続けていきます。