第9回 IMF・日本共催                                                   アジアハイレベル税コンファレンス開会挨拶

2018年4月10日

IMF副専務理事 古澤満宏

東京

第9回IMF・日本共催アジアハイレベル税コンファレンスに皆様をお迎えすることができ、とてもうれしく思います。この会議に対して多大なご支援をいただいた、共催者の財務省に謝意を申し上げます。この会議を含めた、我々の技術支援に対して、JSAを通じて行われた日本の貢献に、IMFは深く感謝しております。また、この会議の実現に向けて努力したIMF財政局及びアジア太平洋事務所のスタッフに対して、謝意を申し上げます。このように多くのアジア地域の政府の代表、そして、アジア開発銀行、OECDの友人達とここでお会いでき、欣快に堪えません。

現在、投資と貿易によって、世界的に経済活動の好調が続いています。新興国に対する資本の流入も堅調ですし、米国の税制改正は一時的に経済成長をさらに高めると予想されています。

現在の好調な経済は、潜在的な生産力を高め、経済の回復力を作り、そして、成長の恩恵がより幅広く共有されるようにするための改革を行うのに理想的な機会です。そのためには、財政の持続可能性と金融回復力を確実にする戦略が必要です。

IMFは、長年にわたり、各国における歳入増加のための努力をサポートしてきました。我々のこの仕事については、今日ここにおられる多くの方がすでに直接知っておられます。この会議のような行事は、我々のメンバー国における歳入増加の取組みを強化することにも資する重要な方法です。我々は、他の国際機関や地域機関との協力にも努めております。

この努力の一環として、IMF、 OECD、 国連、及び世界銀行が参加して、「税に関する協力のためのプラットフォーム(Platform for Collaboration of Tax)」を創設しました。このプラットフォームは、「税と持続可能な開発目標」をテーマにした最初の会議を2月に国連本部で開催したところです。会議ではプラットフォームが開発した概念で、会議の議題の一つでもあった、「中期的歳入戦略」策定の潜在的価値が注目を集めました。

それでは、今回の会議の議題の中から、2つの問題、「国際課税」と「デジタル化と税」を取り上げたいと思います。

国際課税

まず、国際課税です。この問題は、国際的な金融危機以来、G20や他でも、政策論議の中心になってきました。これは、重要な進展と劇的な発展の両方があった分野です。

多くの国が税源浸食利益移転(BEPS)プロジェクトと自動的情報交換の2つのイニシアティブの成果の実施を約束、開始しています。国際的に合意された原則を順守することは、国際課税に取り組む上で極めて重要です。しかし、それぞれの国においては、歳入増加努力を進めていく上での独自の優先順位があります。

国際的な法人課税における最近の進展には、「デジタル法人」に対する課税のあり方及び画期的な米国の税制改正があります。今回の会議では、これらの進展に関連する政策論争及びアジア太平洋地域の税制改正の努力について現状分析します。また、税の確実性を向上させる手段及び国際的な税の紛争を解決するための能力育成に当たってのベストプラクティスと課題についても検討します。さらに、自動的情報交換や国別報告書など、税の透明性の分野での進展から、各国がいかにすれば最大限の恩恵を受けることができるかについても取り上げます。

税とデジタル化

私が取り上げたい2つ目の議題は、税と、我々の生活を変えようとしているデジタル化の問題です。デジタル化は、政府が情報を収集し、処理し、それに対応する方法に革命的な変化をもたらそうとしています。デジタル化は、税制の立案・執行、歳出、そして、マクロ財政政策のあり方も変えようとしています。デジタル化には、納税コストを下げ、所得扶助プログラムの効率性を高める可能性もあります。デジタル化は、我々の仕事をどのように向上させるべきかの分析も可能にします。たとえば、自動的情報交換は、数年前までは、技術的には可能でなかったかもしれません。そしてデジタル化は、根本的に新しいことも可能にするかもしれません。大都市の渋滞に関する、より効果的な費用化も今や現実になりつつあります。

しかしながら、デジタル化は同時に、不正を働く機会をもたらしたり、政府の脆弱性を高めることにもなりかねません。たとえば、自動的な付加価値税還付システムは、不正還付申告に悪用されるかもしれません。また、詳細な個人や法人の情報の収集については、プライバシー上の懸念もあります。

新しいビジネスモデルは、税制の設計・執行に課題も突き付けます。多くの国では、勃興しつつある、共有型(P2P)経済にどのように課税すべきか模索しています。そして、デジタル化は国際課税制度に難問を提示しています。我々IMF財政局は、関連する広範な問題を扱った「公共財政におけるデジタル革命(Digital Revolution in Public Finance)」に関する本を昨年公刊しました。来週発表される、2018年4月版のFiscal Monitorでも、デジタル政府の好機とリスクについて議論しています。

ここで挨拶を終ります。

本日、18の国・地域から48名の参加者をお迎えしております。これは、東京における税の会議では過去最大規模のグループです。そして、毎年、皆様が議論する問題は、ますます時宜にかなった、そして、急を要するものになっているようです。今年も例外ではありません。皆様がすべての問題を解決することはできないかもしれません。しかし、皆様が今日から2日間で、これからの課題に取り組むための生産的な議論をされることを祈念しております。

最後に、今年のIMF・世銀総会は、10月にインドネシアのバリ島で開催されます。総会をホストするインドネシア政府に対して謝意を申し上げるとともに、皆様にバリで再会できることを楽しみにしています。

ありがとうございました。

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