クリスティーヌ・ラガルドIMF専務理事、 世界経済成長が減速し、リスクが増加する中、 G20首脳による断固とした協調的行動を呼びかけ

2018年12月4日

 国際通貨基金(IMF)のクリスティーヌ・ラガルド専務理事は、アルゼンチンのブエノスアイレスで開催された20か国・地域(G20)首脳会合の閉幕にあたり、以下の声明を発表した。

「昨日から2日間にわたって行われたG20首脳との会合において私は、世界経済の成長は堅調であるものの、そのペースは落ちつつあり、ばらつきが増しているという点を強調しました。さらに、新興市場国にかかるストレスが高まり、貿易摩擦がマイナスの影響を及ぼし始めている中で、下振れリスクが増えつつあります。したがって、適切な政策を選ぶことが、各国経済、世界経済、世界中の人々にとって、非常に重要になっています。

貿易に関しては特に厳しい選択に迫られています。私たちの試算によると、最近引き上げられたか、脅しがなされた関税がこのまま実行され続け、予告されている関税が実際に導入されたならば、世界のGDPが2020年までに0.75%失われる恐れがあります。一方で、その代わりにサービス貿易の規制が15%緩和されたならば、世界のGDPには0.5%の拡大が見込まれます。したがって、行うべき選択は明らかです。貿易摩擦を和らげること、関税が増えている最近の傾向を逆転させること、規則に基づいた多国間貿易システムの近代化を図ることが急務となっています。

過剰に膨れ上がった全世界の債務もまた、緊急課題のひとつです。IMFの試算では、世界全体の債務総額は約182兆ドルにのぼります。バッファーを再構築し、景気循環増幅的な財政政策を反転させることは、大規模な債務を抱える新興市場国と低所得国にとって特に重要です。融資の規模と条件について、借り手と貸し手の両方が債務の透明性を高めていくことも必要不可欠で、債務持続性を支えることと同じくらい重要です。

世界経済が直面する課題に取り組むために、私はG20に向けて次のとおり政策提言をまとめました。

第一に、貿易の状況を改善することで、これは成長と雇用を推進するための最優先課題です。

第二に、金融政策正常化の継続です。周知を徹底したうえで段階的に、かつデータに基づいて、スピルオーバー効果の可能性に十分に配慮しながら継続していくべきです。

第三に、金融のリスクに対処することです。ミクロ・プルーデンスやマクロプルーデンスのツールを利用して、レバレッジドローンや、信用の質の低下、外貨や対外負債の高いエクスポージャーに関連した問題に取り組む必要があります。

第四に、為替レートの柔軟性を活用して外からのストレスを緩和し、関税など市場の信頼を弱めかねない政策を避けることです。

最後に、女性の経済活動参加を妨げる法的障害を取り除くことです。これは深刻で慢性的な不平等の解決を図るための鍵であり、G20のすべての国において潜在成長力を高めることになります。

十分な資金基盤を有する強固なIMFを中心としたグローバル金融セーフティネットの強化についてG20が強い意志を持って取り組み続けてくださっていることを心強く思っています。G20の首脳たちから、2019年の春季会合までに、遅くとも同年の年次総会までに第15 次クォータ一般見直しを完了する意志が表明されたのは重要なことです。

マクリ大統領とアルゼンチン当局に向けて、今年のG20開催の非常に効果的なリーダーシップと、素晴らしい都市ブエノスアイレスでの首脳会議の開催に対する心からの称賛の意を表明したいと思います。

また、アルゼンチン当局の経済改革計画の実施における決意を私は称えたいと思います。この計画によって、全アルゼンチン国民に利益をもたらすさらに包摂的で持続可能な成長への道が開かれるでしょう。IMFは当局の努力を引き続き支援していきます」

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