2023年対日4条協議終了にあたっての声明
IMF News, January 26, 2023
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- Published: January 26, 2023
最近の経済動向と見通し及びリスク
- 回復の要因:
- ペントアップ需要とサプライチェーンの改善、国境再開、政策支援により日本経済の回復は支えられている。
- 国境は10月に再開された。
- 物価動向:
- 物価上昇率はここ数か月で加速。コア物価上昇率(生鮮食品を除く)は40年ぶりの高水準を付けた。
- コア物価上昇率は、2023年第1四半期にピークとなり、輸入物価の上昇が和らぐにつれ、2024年末までに2%を下回る水準へ徐々に低下する見込み。
- 成長見通し:
- 需給ギャップは2023年に解消する見込み。
- サービス消費はパンデミック中に蓄積した貯蓄により下支えされる。
- 輸出は受注残の解消と供給制約の緩和で増加見込み。
- 企業投資は事業計画の後ずれ解消と円安による企業利益増加で支えられる見込み。
- 基礎的財政赤字は2022年10月の財政政策パッケージの導入を受け、2023年においても引き続き高水準。
- 経常収支黒字は、2022年においては対GDP比1.8%と推計。
- リスク評価:
- 下振れリスク(例): 1) 更なる地経学的分断と地政学的緊張の高まり、2) 世界経済の急減速、3) 致死率と感染率が高い新型コロナウイルスの変異株の流行、4) 長引く供給側の制約、5) 自然災害、6) 債務の持続可能性、7) サイバー攻撃の脅威、および金融政策枠組みの突然の変更に伴うリスク。
- 上振れリスク(例): サービスを中心に消費がこれまで以上に力強く持ち直すこと、訪日観光客の予想以上の回復。
経済政策(短期・中期の優先課題)
- 主要課題:
- 短期: 金融安定を維持しつつ、2%の物価目標を大幅にオーバーシュートさせない形で持続的に達成すること。
- 中期: 財政の脆弱性を低減し、より動的で強靭で包摂的な経済へ移行すること。
- 短期政策の示唆:
- 総じて緩和的な金融政策が引き続き適切。ただし、需給ギャップの縮小と低位の実質金利の下で物価に関する上振れリスクが大きい。
- リスク管理強化のため、更に柔軟な長期金利の変動を検討すべき。
- 金融政策設定の変更については十分なコミュニケーションが必要。
- マクロプルーデンス政策その他の政策は金融部門の脆弱性を抑えることを念頭に置くべき。
- パンデミック関連の財政支援策はより迅速に縮小し、新たな政策は脆弱な世帯に対象を絞った限定的な措置とするべき。
- 賃金を押し上げ、所得と成長の好循環を生み出す対策が必要。
- 中期政策の示唆:
- 成長に配慮した形の信頼できる財政再建が必要。
- 金融支援策の対象は存続可能な企業に限定。
- 潜在成長率を押し上げ、男女格差を解消し、財政再建による重しを相殺するための労働市場と財政の改革が必要。
- グリーン計画やデジタル分野への投資は有益。
財政政策
- 総論:
- 経済回復、物価上昇、労働市場の引き締まり、需給ギャップの縮小の下で、財政政策支援は迅速に縮小されるべき。
- 2022年10月の大規模な財政政策パッケージにより財政余地は一段と縮小。
- 同パッケージは物価を押し上げる可能性があり、金融政策のさらなる引き締めを招く恐れがある。
- 財政再建の必要性:
- 現行政策では公的債務の対GDP比は中長期的に上昇し続ける。
- 財政バッファーを再構築し債務の持続可能性を確保するため、財政再建が必要。
- 財政再建は信頼性のある財政枠組みに裏打ちされるべき。
- 財政枠組み強化の提案:
- より現実的な予測の採用(内閣府の予測は歴史的に楽観的過ぎた)。
- 財政枠組みの強化(拘束力のある支出上限、年間予算と中期財政目標の整合性)。
- 債務の持続可能性と成長促進の均衡を図りつつ、2025年度の基礎的財政収支目標に向けた進捗を評価。
- 財政再建に含めるべき具体策:
- 医療費と長期介護費を抑える政策:
- (i) 支出の効率化、(ii) 高所得高齢者の自己負担額を引き上げ等による政策の的を絞る。
- 歳入を増やす政策:
- 選択肢例: 消費税の標準税率の引き上げ、法人税の引き上げ、住宅用地に係る優遇措置の廃止を通じた資産課税の強化、個人所得税制における所得控除の合理化、資本所得税率の引き上げ、社会保険料の引き上げ。
- セーフティネット強化:
- 勤労所得税額控除(EITC)の検討等、低所得労働者向けの的を絞った給付制度。
金融政策
- 基本判断:
- 緩和的な金融政策スタンスが引き続き適切だが、2%の物価目標を持続的に達成するためには生産性と実質賃金を改善する政策等と併せて行う必要がある。
- リスクと政策余地:
- 物価見通しは大きな不確実性があり、リスクは上方に傾いている(為替レート下落の遅延影響、国境再開、輸入インフレの二次的影響、財政支援策、予想を上回る賃金伸び等)。
- 日本のインフレ期待は主として後ろ向きであり、一旦高インフレが発生すると長期化し得る。
- 日本銀行の市場関与と示唆:
- 日本銀行は近時大量の国債を買い入れ、現在では5年物・10年物国債の発行残高の70%近くを保有している。
- これにより国債市場の流動性低下、イールドカーブの歪みが生じ、市場機能が急激に低下している旨の調査結果あり。
- 12月の金融政策決定会合でYCCの枠組み修正が行われた。
- 推奨される選択肢(日本銀行が検討し得るもの):
- 10年物金利の変動幅の拡大かつ/または10年物金利の目標水準の引き上げ。
- 金利目標の年限の短期化。
- 国債金利目標から国債買入れの量的目標への移行(量ベースのアプローチ)。
- 各戦略のメリットとデメリットを慎重に見極める必要あり。
- 債券市場・金利の文脈:
- 長期金利の一層の柔軟化は将来の急激な金融政策変更を回避する助けとなり得る。
- 重大なインフレ上振れリスクが現実化する場合、より早期に中立的金利水準を超える短期金利引上げが必要になり得る。
- 為替介入の評価:
- 2022年に為替介入を実施(円の変動を抑制する目的)。
- 2022年3月以降の円の減価は主に金利差を反映するが、6月以降は根底の変動要因以上の減価が示唆される。
- 為替介入は効果はおそらく一時的であり、原則として無秩序な市場環境や金融安定リスク等の特殊な状況下に限定されるべき。
金融安定性
- 銀行部門の状況:
- 2022年の世界的逆風に対し金融部門は概して強固。
- 銀行の自己資本比率と流動性比率は規制要件を上回る。
- ただし、海外有価証券の評価損と外貨資金調達・ヘッジコスト上昇が銀行とノンバンクを圧迫。
- 海外ドル流動性:
- 国際的に活動する主要銀行が安定的な外貨調達源への依存を高める中、未使用のコミットメントラインに起因するリスク評価を含め、米ドルの流動性逼迫への強靭性を高める取り組みが必要。
- イールドカーブのスティープ化:
- 中期的には銀行に利益をもたらし得るが、短期的コストに注意が必要。
- 信用リスク監視:
- 海外与信ポートフォリオの質は概して高く、投資適格ローンが大部分で不良債権割合は低い。
- しかし、負債比率の高い海外借り手や世界経済減速時の国内大口借り手への影響、円安リスクにさらされる非輸出企業向け与信等には注意が必要。
- 住宅ローン・信用蓄積の脆弱性:
- 住宅価格の上昇は緩やかだが、所得に対する住宅ローン比率の上昇、債務返済比率が高い借り手割合の上昇、変動金利住宅ローンの大部分占有に起因する潜在的脆弱性に警戒。
- マクロプルーデンス政策の検討や公的信用保証の縮小が必要。
「新しい資本主義」の支援 — 所得と成長の好循環、イノベーション、GX、デジタル化
- 所得の伸びを押し上げる三つの側面:
- 1) 労働供給の拡大(女性・高年齢者の参加促進、テレワーク等の働き方改革、被扶養配偶者に関する社会保障と税制の歪みの解消)。
- 2) 構造改革で賃金上昇を促進(労働市場の二重構造是正、移動性向上、ジョブ型雇用と能力給への移行)。
- 3) STEM人材の強化(訓練や技能再教育の強化、女性のSTEM進学奨励、能力に基づく昇進や柔軟な就労形態)。
- スタートアップとオープンイノベーション:
- 労働市場制約の対処、資金調達の選択肢拡充、起業家教育の改善、大学のスタートアップハブ化が重要。
- ベンチャーキャピタル支援、創業時の個人保証制約の認識、税制優遇による企業投資・イノベーション奨励。
- IMF職員分析は、企業が無形資産割合の増加を理由に現金保有を増加させていることを示唆。
- 投資を促すためICTや研究開発中心の税制優遇策の活用が有効。
- 低炭素経済(GX)への移行:
- 現行GX戦略はGX債を財源とする公共投資を軸とし、グリーンプロジェクトに民間資金へのインセンティブを予定。
- 政府は2028年度以降、カーボンプライシングを拡充することにコミットしているが詳細は未決定。
- 電力と運輸の脱炭素化を伴うグリーン投資、カーボンプライシングの漸次引上げ、補助金の的を絞る改革、気候政策における脆弱層保護が必要。
- 日本銀行は気候対応支援のため銀行に対してGDPの約0.6%に相当する貸付を行った。
- デジタル化と公的改革:
- デジタル庁は公共部門のデジタル化を調整・実施すべき。マイナンバーカード普及拡大の進展を歓迎。
- 政府機関間のデータ共有は依然限定的であり、地方自治体のITシステム標準化や中央・地方間の情報共有円滑化が重要。
- 民間部門の安全かつ包摂的なデジタルトランスフォーメーション支援(ITスキル訓練、データプライバシー、デジタルリテラシー、消費者保護、サイバーセキュリティ)。
- コーポレートガバナンスや貿易政策の改革継続も必要。
日本:主な経済指標(2019–2024)
- 名目GDP: 5,006 十億米ドル (2021)
- 一人当たりGDP:39,883米ドル(2021)
- 人口:1億2,600万人(2021)
- クォータ:308億SDR(2021)
- 実質GDP(%変化)
- 2019: -0.4
- 2020: -4.3
- 2021: 2.1
- 2022: 1.4
- 2023予測: 1.8
- 2024予測: 0.9
- その他主要成長項目(年平均%変化等、抜粋)
- 国内需要(年平均)例: 2020: -3.4
- 民間消費(年平均)例: 2020: -4.7、2022: 2.2
- 企業投資(年平均)例: 2020: -4.9、2022: 3.6
- 財・サービスの輸出(年平均)例: 2020: -11.6、2021: 11.7、2022: 4.7
- 需給ギャップ(%)例: 2019: 0.7、2020: -2.9、2021: -1.6、2022: -0.9
- 物価(%変化、年平均)
- 消費者物価指数(CPI)総合指数 2019–2022の個別数値は本文表に記載。
- 財政(対GDP比)
- 一般政府歳入(%対GDP)例: 2019: 34.2、2020: 35.5、2021: 36.6、2022: 36.8、2023: 35.6
- 一般政府歳出(%対GDP)例: 2019: 37.3、2020: 44.6、2021: 42.8、2022: 44.8、2023: 42.2、2024: 39.7
- 財政収支(%対GDP)例: 2019: -3.0、2020: -9.1、2021: -6.2、2022: -8.0、2023: -6.6、2024: -4.2
- 基礎的財政収支(%対GDP)例: 2019: -2.4、2020: -8.4、2021: -5.6、2022: -7.7、2023: -6.5、2024: -4.1
- 公的債務(グロス、%対GDP)例: 2019: 236.4、2020: 258.7、2021: 255.4、2022: 258.3、2023: 255.7、2024: 256.4
- マクロ金融指標(年変化等、抜粋)
- マネタリーベース(%変化)例: 2019: 19.2、2020: 8.5、2021: -5.0、2022: 3.8
- ブロードマネー(%変化)例: 2019: 7.4、2020: 2.9
- 民間部門への信用供与(%変化)例: 2019: 3.2、2020: 6.1、2021: 4.0
- 非金融機関債務(対GDP比)例: 2019: 139.3、2020: 152.1、2021: 155.7、2022: 154.6、2023: 153.6、2024: 152.6
- 国際収支(10億米ドル、抜粋)
- 経常収支(10億米ドル)例: 2019: 176.3、2020: 147.9、2021: 197.3、2022: 76.7、2023予測: 129.9、2024予測: 159.5
- 対GDP比(%)例: 2019: 3.9、2020: 3.1、2021: 3.7
- 財輸出(FOB)例: 2019: 695.0、2020: 630.6、2021: 748.6、2022: 758.1、2023: 779.4、2024: 802.9
- 財輸入(FOB)例: 2019: 693.6、2020: 604.0、2021: 732.9、2022: 874.6、2023: 850.5、2024: 844.3
- エネルギー輸入(10億米ドル)例: 2019: 131.9、2020: 89.1、2021: 127.8、2022: 177.3、2023: 147.4、2024: 135.8
- 外貨準備高(年平均、10億米ドル)例: 2019: 1286.3、2020: 1348.2、2021: 1356.2
- 為替・実効為替・人口動態(抜粋)
- 円・ドル(年平均)例: 2019: 109.0、2020: 106.8、2021: 109.8
- 実質実効為替相場(2010=100, ULCベース)例: 2019: 75.1、2020: 74.1、2021: 70.7
- 人口増加率(%)例: 2019: -0.3
- 老年人口指数(例): 47.6、48.3、48.7、48.9、49.3、49.8(年別は本文表参照)
出所: 出所:Haver Analytics、経済開発協力機構(OECD)、日本政府当局、IMF職員の試算と予測。