減速する経済成長、再加速は不確実
World Economic Outlook, April 2019
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- Published: April 8, 2019
総括(要旨)
- 2017年に約4%でピークを迎えた世界経済の成長は、2018年に3.6%に鈍化し、2019年には3.3%にさらに鈍化すると予測されている。
- 世界経済の70%を占める国々で2019年に成長率が落ち込むと見込まれる。
- 2019年前半は伸び悩みが続くと見られるが、後半には成長の再加速が期待される。ただし再加速は不確実である。
成長見通し(短期〜中期)
- 主要数値(出所のまま)
- 2017年:約4%
- 2018年:3.6%
- 2019年:3.3%
- 2020年:3.6%
- 「2020年以降、世界経済の成長率は約3.5%で安定するだろう。」
- 「2020年以降、世界経済の成長率は中期的に約3.6%で頭打ちになると見られる。」
- 回復の根拠(2019年後半〜2020年)
- 主要国での大幅な緩和的政策
- GDPギャップ縮小にもかかわらずインフレ圧力が弱い点
- 米連邦準備制度理事会の利上げ停止示唆や主要中銀のより緩和的スタンス
- 中国の財政・金融刺激策強化
- 米中貿易摩擦での貿易協定可能性の具体化に伴う見通し改善
- 地域別見通し
- 先進国:米国の財政刺激効果の減衰と高齢化・生産性伸び悩みで成長率は潜在成長率へ回帰。
- 新興市場国・発展途上国:成長率は約5%で安定化すると予測されるが、国ごとのばらつきが大きい。
- 中国・インド:世界経済を下支えする主な牽引役。中国はペースダウンが予想されるが依然として主要な成長源。
要因と現状の課題
- 成長を鈍化させた主な要因
- 米中貿易摩擦の激化
- アルゼンチンやトルコでのマクロ経済ストレス
- ドイツ自動車産業の混乱(新排出基準の導入)
- 中国における与信引き締め(シャドーバンキング抑制のための規制強化)
- 金融環境のタイト化、主要先進国での金融政策正常化
- 金融市場と実体経済の非同期
- 新興市場国への資金流入再開、通貨上昇、政府の資金調達コスト低下が見られる一方で、実体経済(工業生産、投資、世界貿易)は依然として弱い。
- 長期的課題としての三大変化(第2章)
- 格差の拡大
- 投資の不振
- 貿易における保護主義の台頭
- 追加利益率(マークアップ)の分析(第2章の要旨)
- 2000年以降の追加利益率全体の増加はさほど大きくないが、ばらつきが大きい。
- 追加利益率の上昇は一部の生産性・技術で卓越する少数企業によるものであり、「勝者大取り」的な力学が影響している。
- 将来的には市場参入障壁の低減と競争法の改革・強化が重要。
貿易と投資(第3章・最終章の要旨)
- 資本財製造の生産性向上と貿易統合により、過去30年で機械設備の相対価格は世界的に低下し、投資比率の向上につながった。
- 貿易摩擦の激化はこの価格低下の流れを逆転させる可能性があり、貿易対立の早期解消が重要である。
- 二国間貿易関税と貿易不均衡の関係(最終章)
- 二国間貿易関税と二国間貿易不均衡の間には確たる関係はない。
- 1990年代半ば以降の二国間貿易収支は主にマクロ経済的要因を反映しており、二国間関税の影響は薄い。
- 関税措置は貿易転換を引き起こすにすぎず、国レベルでの貿易収支への影響は限定的。
- グローバル・サプライチェーンの重要性が増した現在では、関税がGDPに与える悪影響がより深刻。
下振れリスク(優勢なリスク)
- 主な下振れリスク
- 貿易摩擦の再燃・激化
- 市場心理の急激な悪化(安全資産への資金移動、金利差拡大)
- 英国の合意なきEU離脱
- イタリアでの財政不安の長期化や国債利回り高止まりによるユーロ圏波及
- 米国の金融政策姿勢の市場による急変認識
- 中期的リスク:気候変動、格差拡大を巡る政治対立による潜在成長率の下押し
- リスク実現時の影響
- ストレス下にある国や輸出依存国、多額債務国では回復が実現しない可能性。
- 従来型の金融政策・財政政策による対応余地は限定される。
政策提言(優先課題)
- 総論
- 経済活動を阻害する政策誤りを回避することを最優先とする。
- 各国は共同で行動し、政策の不確実性が投資を抑制しないよう確実を期すべき。
- 金融政策
- データに基づき、周知徹底して実施し、期待インフレ率を安定的に保つこと。
- 成長が潜在成長率を下回る場合にはより緩和的に対応する余地を検討。
- 財政政策
- 需要の下支えと公的債務の持続可能性のバランスを管理する。
- 財政再建が必要で金融政策が制約される場合は、短期成長を損なわないよう再建のペースを調整。
- 同時に複数国が財政刺激を行うことの効果が高い点を重視(シグナリング効果と輸入による漏れ低減)。
- 金融部門政策
- マクロプルーデンス施策を活用して脆弱性に積極対処すること。
- 途上国・一次産品輸出国
- 一次産品価格の低迷を踏まえ、歳入の多様化を推進すること。
- 構造改革と多国間協力
- 潜在成長率の引上げ、包摂性向上、強靭性強化のための改革が不可欠。
- 貿易摩擦の解消、サイバーセキュリティや気候変動への対処、国際課税の改善など多国間協力を強化すること。
- 市場参入障壁を減らし、競争法を新しい経済に適合させる改革が重要。
出典: IMF 世界経済見通し(2019年4月)、国際通貨基金 経済顧問 ギータ・ゴピナート