世界経済見通し 2020年1月改訂見直し
World Economic Outlook, January 2020
Source details
- Canonical URL
- 世界経済見通し 2020年1月改訂見直し
Other formats
Bibliographic details
- Published: January 20, 2020
要旨と主要見解
- 世界経済成長率は2019年の推計2.9%から2020年の3.3%、2021年の3.4%へと上昇すると予測されている。2019年と2020年は0.1%ポイント、2021年は0.2%ポイント、10月発表の「世界経済見通し(WEO)」から下方修正されている。
- 下方修正の主因は、インドをはじめとする新興市場国数か国における経済活動に対する負のサプライズであり、いくつかの国では情勢不安の悪化が影響している。
- プラス面として、製造業や世界貿易の底打ちの暫定的兆候、金融緩和の拡大、米中貿易交渉に関する好材料の断続的出現、合意なきブレグジットへの懸念の軽減により市場心理は好転しているが、世界のマクロ経済データにおける転換点はほとんど観察されていない。
- 下振れリスクは依然顕著であり、特に地政学的緊張(例:アメリカとイラン)、情勢不安の深刻化、米国と貿易相手国の関係悪化、国家間の経済摩擦の深刻化が懸念される。
- 多国間協調、国レベルでのよりバランスのとれた政策ミックス、および金融政策と財政政策の余力の活用が不可欠である。
最近の動向と予測への含意
- 2019年後半は貿易政策の不透明感、地政学的緊張、主要新興市場国の各国特有のストレスが世界経済に重荷となり、製造業と貿易に特に影響が見られた。
- 気象関連の災害(カリブ海のハリケーン、オーストラリアの干ばつや森林火災、東アフリカの洪水、南アフリカの干ばつ)が新たな課題をもたらした。
- 複数国での金融緩和が2019年後半まで継続し、金融刺激策が講じられていなければ、世界経済成長率の2019年推計値と2020年予測値は両年ともに0.5%ポイント低かった可能性がある。
- 第4四半期の高頻度データは、中国、韓国、アメリカで成長の勢いが緩慢に下げ止まっていることを暫定的に示唆。製造業の一時的要因(新排出基準、テクノロジー製品のリリース頻度低下、在庫蓄積)は後退している兆し。世界貿易の伸びは底を打ちつつある模様。サービス業は多少の減速があるものの、堅調な個人消費に支えられ拡大基調を維持している。
世界経済の見通し(地域別・主要国別の予測)
- 世界:2019年2.9%(推計)、2020年3.3%、2021年3.4%(10月WEO比:2019・2020は0.1%ポイント下方修正、2021年は0.2%ポイント下方修正)。
- 先進国・地域全体:成長率が2020年から2021年にかけて1.6%で安定(10月WEO比で0.1%ポイントの下方修正)。
- アメリカ:2019年2.3% → 2020年2% → 2021年1.7%。2020年は10月WEO比で0.1%ポイント下方修正。
- ユーロ圏:2019年1.2% → 2020年1.3%(0.1%ポイントの下方修正) → 2021年1.4%。
- イギリス:2020年1.4%(安定) → 2021年1.5%(10月WEOから変更なし)。
- 日本:2019年1% → 2020年0.7%(10月WEO比でそれぞれ0.1%ポイント、0.2%ポイントの引き上げ)。2021年は0.5%(潜在成長率近傍)。
- 新興市場国・発展途上国全体:2019年3.7%(推計) → 2020年4.4% → 2021年4.6%(10月WEO比で2020年・2021年ともに0.2%ポイントの下方修正)。
- アジアの新興市場・発展途上国:2019年5.6% → 2020年5.8% → 2021年5.9%(2019・2020は10月WEO比でそれぞれ0.2%ポイント、0.3%ポイントの下方修正)。インド:2019年4.8%(推計) → 2020年5.8% → 2021年6.5%(10月WEO比で2020年と2021年はそれぞれ1.2%ポイント、0.9%ポイントの下方修正)。中国:2019年6.1%(推計) → 2020年6.0% → 2021年5.8%。
- ヨーロッパの新興市場・発展途上国:2019年1.8% → 2020年約2.5% → 2021年約2.5%(2020年は10月WEO比で0.1%ポイント上方修正)。
- ラテンアメリカ:2019年0.1%(推計) → 2020年1.6% → 2021年2.3%(10月WEO比で2020年・2021年はそれぞれ0.1%ポイント、0.2%ポイントの下方修正)。
- 中東・中央アジア:2020年2.8%(10月WEOから0.1%ポイントの下方修正) → 2021年3.2%。
- サブサハラアフリカ:2019年3.3% → 2020年3.5% → 2021年3.5%(2020年が10月WEO比で0.1%ポイント、2021年が0.2%ポイントの下方修正)。
見通しに対するリスク(下振れ優勢)
- ポジティブ側:景気下げ止まりの初期兆候の持続、個人消費と企業支出の改善、各国特有の要因の解消、金融緩和の効果継続、米中貿易交渉「第一段階」合意に伴う関税の一部撤回・新関税の一時停止によりセンチメント改善が見込まれると、回復が予測より強くなる可能性。
- 下振れリスクの主因(抜粋):
- 地政学的緊張(例:アメリカとイラン)による石油供給不安定化、景況感悪化、企業投資悪化。
- 米国とその貿易相手国(中国等)間の関税・技術摩擦の深化によるグローバルサプライチェーンへの影響。
- 情勢不安の深刻化による経済活動の混乱と改革努力の阻害。
- 金融市場心理の急変、安全資産への資産再配分、脆弱な借り手の借換リスクの高まりによる金融環境のタイト化。
- 気候変動に伴う熱帯暴風雨、洪水、熱波、干ばつ、森林火災等の頻度・規模拡大による直接的・間接的な経済・人道的コストの上昇。
政策上の優先事項
- 総論:多国間協調の強化と国レベルでの政策によるタイミング良い景気支援が、持続的で包摂的な回復を促進する。社会の包摂性向上、セーフティネット強化、統治の改善が重要。
- 多国間協調の重点項目:
- ルールに基づく貿易制度に対する不満の速やかな対処、WTO上級委員会の膠着解消。
- 関税・非関税障壁を高めずに意見の不一致を解決する努力。
- 国際的なサイバー攻撃抑制、知的財産権・技術移転の現行課題への協力。
- 温室効果ガス排出抑制に向けた国際協調と適切な負担分配の設定。
- 国際的な脱税・腐敗削減、金融規制改革の後退防止、十分資金確保された国際金融セーフティネットの維持。
- 先進国向け政策優先:
- 財政余地のある国は研究、人材育成、物理インフラ等の生産性向上投資を増やすべきである。
- 高債務国は、次の景気後退と将来の社会保障給付増大に備え財政健全化を進めるが、景気後退時には財政再建ペースを緩める余地も考慮。
- 金融政策の効果が限られる中、必要時には需要を下支えするため財政政策を活用可能。
- 気候変動緩和、教育・医療・技能・インフラへの投資を戦略に組み込み、包摂的効果を重視。
- マクロプルーデンス政策の強化、積極的監督、銀行バランスシートの健全化を推進。
- 新興市場国・発展途上国向け政策優先:
- マクロ経済的ストレス下の国は信頼回復のための政策調整を実行し、脆弱な人々を守る十分なセーフティネットを確保すること。
- 高債務国は財政健全化を目標としつつ景気急減速を避けるためにペース調整を行う。補助金の対象設定改善、歳入ベースの拡大、法令遵守徹底が健全化手段として推奨される。
- 低所得国では開発ニーズに応じた投資(SDGs達成に向けた支出)が重要。
- 物価上昇率低下を活かし、実質金利が高い国は金融政策で支援する余地あり。通貨と満期のミスマッチを最小化し、十分な資本と流動性バッファーを維持して金融の耐性を確保すること。
- 人的資本強化(医療・教育)と高付加価値雇用の創出を通じた包摂的成長の実現。
ボックス1:緩和的な世界金融環境の継続(要点)
- 緩和的な金融環境が世界的に続いている。過去3か月で金融政策と投資家の貿易摩擦認識が市場を左右。
- 具体的な政策変更例:米連邦準備制度は政策金利を0.25%ポイント引き下げ、欧州中央銀行(ECB)は月200億ユーロのペースで資産買い入れを再開、中国人民銀行は中期貸出制度(MLF)の金利を0.05%引き下げ、トルコは政策金利を4.5%ポイント引き下げ、ロシアとブラジルはそれぞれ0.75%ポイント、1.0%ポイントの利下げを実施。
- 市場動向:過去3か月間で世界の株式市場は約8%上昇。ユーロ圏、日本、アメリカの長期金利は0.15〜0.30%ポイント上昇。新興市場のソブリン債スプレッドは平均で約0.25%ポイント低下。
- 全体評価:金融環境は依然として緩和的であり、アメリカでは総合的に変化がない一方、ユーロ圏は緩和継続。その他の新興市場(ブラジル、インド、メキシコ、ポーランド、ロシア、トルコ)では総合的に金融環境の緩和が進んでいる。
出典:世界経済見通し 2020年1月改訂見直し(IMF)
Content in this bundle
- 暫定的な安定化、わずかな回復?IMF世界経済見通し; 2020年1月 改訂見通し