作用する力
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- Published: March 13, 2023
概要
- 先進国は、金融政策の進め方に影響を与えるいくつかの主要な長期的構造の変化に直面している。
- こうした進行中の変化は、自然利子率(インフレ率と産出量が最適になる水準)と、金融政策の伝わり方に影響する。
グリーン経済への移行
- 主要事実・統計:
- 2050年までに排出量正味ゼロを達成するためには年間のクリーンエネルギー投資が2030年までに4兆ドルに達する必要がある。1
- 影響:
- 化石燃料から再生可能エネルギー(風力と太陽光)への大幅なリソース再配分が必要。
- 投資需要が増えると自然利子率が上昇する傾向があるため、中央銀行がより高い政策金利を支持しなければならない可能性がある。
- 政策含意(要点):
- 移行を促進する補助金等の政策が投資需要を後押しする可能性がある。
- 中央銀行は自然利子率上昇に対応した金融政策の設計を検討する必要がある。
在宅勤務
- 主要事実・統計:
- 過去5年間で、在宅勤務は44%増加した。2
- 影響のチャネル:
- 労働供給:在宅勤務は家計が提供できる労働時間を増やす傾向があり、労働者は在宅で働ける場合に給与の削減を受け入れる可能性がある(供給増)。
- 労働生産性:在宅勤務環境では効率的でない仕事があり、労働時間あたりの生産性が低下する傾向がある(生産性低下)。
- 金融政策への影響(相反する力):
- 生産性低下が労働供給増を上回ると、企業の限界費用が増え、インフレ圧力がかかる。
- 逆に生産性低下が家計の需要を減らす場合は、物価の押し下げ圧力がかかる。
- 政策含意(要点):
- 在宅勤務がどのように展開するかにより、金融政策の要求が左右されるため、需給両面の動向監視が重要。
脱グローバル化
- 主要事実・統計:
- 貿易開放度は2008年に60%でピークに達し、それ以降は減少している。3
- 影響:
- 脱グローバル化により貿易障壁が生じ、非効率的な産業への資源再配分が進み、国家の所得を押し下げる傾向がある。
- 生産量低迷に伴う歳入減は、政府が歳出削減や増税を行うことにつながり、財政主導型のインフレが発生する可能性がある。
- 輸入国と輸出国での差:
- 輸入国:国外からモノを購入することが困難になり、国内でインフレ圧力が高まる。
- 輸出国:国外からの将来の収入が減る見通しから家計の需要が縮小する可能性がある。
- 政策含意(要点):
- 貿易構造の変化に対する政策対応は、国の貿易立場に応じて異なる。
人口動態
- 主要事実・統計:
- 世界の 60 歳以上の人口が2050年までに倍増する。4
- 影響:
- 需要面:高齢化で個人が退職に備えて貯蓄するため需要が減り、自然利子率が一時的に低下する可能性。
- 供給面:労働参加率低下で潜在的産出量が減り、所得伸びが鈍化し、さらなる貯蓄を促す可能性。
- 長期効果の不確実性:移行が完了した後は退職者が貯蓄を消費する傾向から貯蓄圧力が弱まる可能性があり、労働参加率が安定するため、実質金利やデフレの恒久的な低下につながるかは明らかでない。
- 政策含意(要点):
- 年齢構成の変化が需給と政治圧力を通じて金融政策に与える影響を評価する必要がある。
中央銀行デジタル通貨(CBDC)
- 主要事実・統計:
- 現在、100か国以上がCBDCを模索している。5
- 影響:
- 中央銀行はCBDCの金利を直接設定できるようになり、銀行を通さずに家計へ金融政策を直接伝達できる可能性がある。
- 銀行は金利変化を家計に完全には転嫁しない傾向があり、特に金利上昇時にその不完全な伝達が問題となる。
- CBDC導入により中央銀行のバランスシートは恒久的に拡大する可能性がある。
- 投資オプションとリスク:
- 中央銀行は拡大したポートフォリオを国債に投資して財政政策を支えるか、民間部門に融資して特定産業への投資を促進するかを選択できる。
- 投資判断が政治に左右されるリスクがあり、中央銀行は独立性に関する信頼を注意深く確立する必要がある。
- 政策含意(要点):
- CBDCは金融政策の伝達メカニズムと中央銀行の役割を大きく変える可能性があるため、設計とガバナンスが重要。
出典: ファイナンス&ディベロップメント(2023年3月)「作用する力」