輸出制限の課題
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- Authors: Chad P Bown
- Published: June 13, 2023
概要
- 発展途上国は今後、制裁措置と輸出制限の拡大に対処するための支援を必要とする。
- 世界貿易機関(WTO)は、地政学的変化の中で役割を定めることに苦闘しており、貿易自由化の推進は当面後回しになる可能性がある。
- 輸出制限(禁止、管理、制裁を含む)の再燃は、規則に基づく貿易体制にとって重要な懸念であり、制限の連鎖による悪循環のリスクがある。
豊富な事例(過去の経験)
- 2007年から2011年に一次産品価格が急騰した際、各国が広範な農産物に輸出制限を課し、世界の物価上昇と食料不安を招いた。
- これに対する政策成果の一つが、主要20か国・地域(G20)による農業市場情報システム(AMIS)の立ち上げであり、世界の食料在庫のモニタリングを改善した。
- 中国は国内の物価圧力等に対処するため原材料や重要材料に輸出制限を課し、WTO加盟時の誓約に抵触。中国はこの問題でWTO紛争に2度敗訴し、2016年に3度目の紛争に直面していた。
- 2021年4月、インドは新型コロナワクチンの輸出を禁止。COVAXに対する1億回分の誓約が影響を受け、国際的支援の活用が阻害された。
- 2022年、ロシアは天然ガス輸出を武器として利用し、欧州へのエネルギー輸送を停止。これに対し、国々は「懸念国」からの調達を縮小する政策を採用した。
- 同年、アメリカは「インフレ抑制法」で電気自動車バッテリーの材料調達をロシアと中国から移行することを狙った差別的な税額控除インセンティブを設けた。
- アメリカや他の先進工業国は国家安全保障を理由にハイテク製品への輸出制限を課し、日本とオランダは米国と合意して先進的ノード半導体の製造機材の輸出を制限した。
拘束力の弱いルールとWTOの可能な役割
- GATT第11条は「食糧その他輸出締約国にとって不可欠の産品の危機的な不足を防止し、又は緩和するために一時的に課す輸出の禁止又は制限」に例外を認めるが、「不可欠の産品」は定義されていない。
- 第21条は国家安全保障上の例外を定めており、各国が政策発動を正当化できる余地がある。
- 冷戦期に発展した多国間貿易体制は、輸出制限や関連制裁を本格的に扱う経験が乏しいまま時代が進んだため、今日の問題が顕在化している。
- WTOが取るべき対応例:
- AMISのような市場監視と透明性に関する追加イニシアティブを促進し、情報不足による輸出制限導入の機会を減らす。
- 国家安全保障関連の争点では、通常のWTO訴訟手続きより迅速な仲裁手続きを通じて「非違反」申立てのような対応を検討する(アメリカからの提案の紹介)。
- 仲裁により迅速に「貿易のバランスを取り戻す」ための譲許を行えば、国家安全保障を口実とする乱用を抑止するインセンティブが高まる可能性がある。
新たな脆弱性と具体的課題(発展途上国への影響)
- 制裁と輸出制限は「非同盟国」である発展途上国に深刻な影響を与えている。能力に制約のある国は、意図せず違反して二次的制裁の対象となるリスクがある。
- 事例別の課題:
- 第1:ロシア産の食料と肥料を世界市場から締め出すと世界の食料安全保障に悪影響。食料や人道支援物資には制裁例外が設けられているよう努められている。
- 第2:原油・石油製品では複雑性が高く、G7は上限価格を下回る取引に限定して購入を促す計画を策定。遵守は情報維持や価格水準変動の管理が必要で、参加国間の経済的格差や他調達源との価格差が存在する。
- 第3:デュアルユース物品(半導体等)は小型で民生・軍事両用途。米国の輸出制限対象産品を第三者国が輸入する場合、米国法の下で当該産品を再輸出できないことが多く、第三者国企業には経済的インセンティブがあるが、当該国の政府や企業が影響を完全に把握していない恐れがある。
- 支援ニーズ:
- 発展途上国は、自国の権利と選択に伴うトレードオフを理解するための支援を必要とする。
- 国内審査手続きや法的助言を欠く国は、過剰な遵守(合法な取引を控える)によるコストを負うリスクがある。
最脆弱国への配慮と実務的対応
- WTOが活用できる取り組み:
- 貿易円滑化協定を通じて手続き上の障壁を軽減し、発展途上国の貿易を後押しする。
- 国境管理官と協力して加盟国の制裁遵守を支援すれば、遵守した国は二次的制裁の罰則を避けつつ残りの貿易を継続できる。
- WTO法アドバイザリーセンター(ACWL)の教訓:
- ACWLは豊富な補助金に基づく法的支援を貧困国に提供し、過去20年以上にわたり数十件の公式WTO紛争で貧困国の代理を務めてきた。
- ACWLは利益相反の懸念を解決する統治ルールを確立しており、政治から距離を置いた法的助言を提供する枠組みがある。
- 政治的にデリケートであっても、補助金に支えられた法的支援は能力の乏しい国々にとって重要であり、無視すれば深刻な経済的影響が生じ得る。
- 制裁と輸出制限が拡大する世界では、新興市場国はますます法的助言を必要とする。
結論・政策含意
- WTOは国家安全保障の名のもとでの政策には干渉できない制約があるが、無実の第三者国が不当に被害を受けないよう支援する余地は残っている。
- 推奨される方向性:
- 市場監視と透明性の強化(AMISの拡張に類する取り組み)。
- 発展途上国、特に最脆弱国向けの手続き支援と法的助言の充実(ACWLの枠組みを踏まえた支援)。
- 国家安全保障関連の紛争では迅速な仲裁や「非違反」申立て等の代替的手続きの検討により、乱用抑止と二次的被害の軽減を図る。
出典: チャド・P・ボウン, ファイナンス&ディベロップメント, 2023年6月