歳出の改善と歳入の増加により、アジアで強靭性を構築する
2025年9月24日
おはようございます。第14回IMF・日本共催アジア諸国向けハイレベル税カンファレンスに皆様をお迎えすることができ、非常に光栄です。
本イベントを共催していただいた日本財務省に、そして日本政府の多大なるご支援に御礼申し上げます。また、この年次イベントの開催に協力してくれたIMF財政局とアジア太平洋地域事務所の同僚に感謝しています。
まず、世界経済の先行きに触れたいと思います。世界経済はこれまで、関税の引き上げをはじめとする大きな政策転換を前に強靭性を発揮してきました。しかしこの強靭性は、基礎的な経済の強さではなく、大部分が一時的な要因によるものであり、今では景気減速の兆候が見られ始めています。
成長の鈍化は、すでに債務水準が高いこの時期に債務リスクを増幅させる可能性があります。一方で支出圧力の方は、防衛の必要性や、人口動態とテクノロジーの変化によって高まりつつあります。発展途上国は、援助の流れが断ち切られる中で、今も大きな開発資金ニーズを抱えています。
こうした下で、アジアの短期的な成長は貿易摩擦に持ちこたえてきました。この地域の成長モデルは、貿易の自由化とバリューチェーンへの参画を基盤として成功してきましたが、ここに来て課題が山積みとなっています。多くの国は、高額な利払いと借り換えニーズに苦しんでいることから、重要な開発支出に資金を提供して強靭性を築く能力が限られています。
今日のような、財政が限られた環境では、各国政府はバリュー・フォー・マネー(VFM)を改善しなければなりません。改善するひとつの方法は、財政支出の効率性を上げることです。
1980年代以降、多くの国々で進歩が見られましたが、現在も著しい効率ギャップが残っています。各国政府は、公共投資や教育のような成長分野に支出を振り分けることで、優先順位付けをさらに徹底できるでしょう。IMF・世界銀行年次総会で近日公表する「財政モニター」では、制度的枠組みの強化と支出内訳の改善がいかに成長を促進するかについて、新しい所見を示します。
歳入動員も重要であり、公平で優れた税制でこれを達成することができます。
IMFが間もなく公表する研究は、税収の対GDP比に転換点があることを示しています。経済成長率を上昇させ、政府の実効性や金融の発展を改善するために、各国は税収対GDP比として少なくとも15%を目指さなければなりません。この数値を下回ると、政府は、経済を運営して適切な公共サービスを提供するための国家としての能力不足に悩まされるのです。
今週のカンファレンスでは、付加価値税の設計と運営や、AIの役割など、効果的な歳入確保に不可欠ないくつかの課題を議論します。また、国際課税や税制優遇措置における最近の動向、そしてアジア地域の早期採用国に基づいた中期歳入戦略の枠組みの応用についても意見を交わします。さらに、アジアの固定資産税に関する特別セッションも行う予定です。
本カンファレンスの最大の強みは、ピアツーピア形式のイベントだということです。この知見の共有は、成功や失敗について学ぶと同時に、政策当局者間の協力を育むための専門家ネットワークを築く絶好の機会になるでしょう。こうした知識を世界中の国々と共有するIMFにとって、この機会には計り知れない価値があります。
アジアにおいてIMFは、フィジー、タイ、インド、中国、シンガポールのIMF地域センターを通じて地域諸国に実践的な支援を提供してきました。そしてここ東京を拠点とするアジア太平洋地域事務所では、今回のようなイベントを開催することで、アジア地域におけるピアツーピア学習の促進を支えています。
IMFは、国の事情を踏まえた政策助言や能力開発という形で、各国が将来の財政課題に対処できるように支援します。力を合わせることで、私たちはIMF加盟国に寄り添いながら、バッファーの構築と未来への投資に欠かせない租税政策、財政支出、そして歳入管理の改善を支援できるのです。
ご清聴ありがとうございました。
IMFコミュニケーション局
メディア・リレーションズ
プレスオフィサー:
電話:+1 202 623-7100Eメール: MEDIA@IMF.org

