JISPA提携大学4校から座談会に参加した教授は以下のとおりです。

• GRIPS (政策研究大学院大学): ロベルト・レオン・ゴンザレス教授、マクロ政策プログラム (MEP: Macro Economic Policy Program)
• 一橋大学 : 有吉章教授、アジア公共政策プログラム (Asian Public Policy Program: APPP)
• IUJ (国際大学): 小谷浩示教授、 マクロ政策プログラム (Macroeconomic Policy Program:MPP)
• 東京大学 : 西沢利郎教授、公共政策修士・国際プログラム (Master of Public Policy/International Program: MPP/IP)

4. 提携大学はどのような生活環境をJISPA奨学生に提供していますか？

レオン教授 (GRIPS): JISPA奨学生はGRIPSが所有する寮に滞在します。寮には日本人スタッフが常駐しており、病院に行く時など必要に応じて学生を支援します。GRIPSの事務スタッフは全員英語に精通しており、入居から日本での生活ガイダンスまでのサポートを提供します。学内には常駐の看護婦一名のほか、非常勤医師が健康問題の相談に乗っており、必要がある場合には母国に住む奨学生の家族に報告も行います。またGRIPSのスタッフは日本に住む奨学生の家族にも支援を行っています。

小谷教授 (IUJ): JISPA奨学生をはじめとするIUJの学生は様々な国の出身ですが、キャンパス内の寮で生活しており学生間の交流は緊密ですから孤立することはありません。孤立するのは不可能とも言えます。IUJのある浦佐周辺地域の地元住民は外国人留学生とその家族の対応に慣れており、とくに保育園や小学校は留学生の子供たちが入園・入学することに慣れています。ですから家族も通学や生活面で問題を感じることはないでしょう。さらに、けがなど問題が起きた場合には日本人学生1名が留学生１名に付いてサポートを行います。当校は留学生受け入れに30年の経験があることから事務面の対応はテーラーメイドに行われています。

西沢教授 (東京大学): 東京大学はJISPA奨学生向けの寮はありませんが、留学生アドバイザーから家探しのサポートが得られます。また先輩の留学生が新規留学生に大学生活と日常生活のアドバイスを行うという仕組みもあります。東大には優れた言語研修プログラムもありますから、それによっても留学生が日本の生活に適応することがサポートされるでしょう。日本人学生によるチューターや経験豊富な留学生も奨学生をサポートしていますし、もちろん教員も常時学生をサポートしています。

有吉教授 (一橋大学): 当校はJISPA奨学生に大学が所有する寮の部屋を提供しています。寮では留学生は他のプログラムの留学生や日本人学生と交流しながら互いに助け合えます。何度か申したとおりAPPPは小規模なプログラムですから、当校のプログラムマネージャーは奨学生の快適な暮らしのために広範なサポートを提供し、入居をはじめとする様々な問題に対応しています。APPPは英語のプログラムですが、当校は奨学生が日常生活を送りやすくするためにサバイバル日本語コースを設けています。最も重要なことは、同級生同士の相互扶助・相互協力によって奨学生は活発な生活を送り交流活動や休暇中の旅行を計画しています。

5. 上記の通り提携大学ではJISPA奨学生に対してマクロ経済に重点を置いたプログラムを提供していますが、各大学の強みや特徴は様々です。貴校の特徴と強みについてお聞かせ下さい。

レオン教授 (GRIPS): GRIPSの3つの特徴をご説明します。GRIPSの強みは政策立案に携わるリーダーを育成するという明確なビジョンと目的を大学全体が有しているという点です。この目的に沿ったGRIPSの教育には2つの側面があります。技術研修、そして応用と政策立案者とのコミュニケーションを通じたより実務的な課題への取り組みです。JISPAで言えば、こうした2つの側面は強化されています。JISPA奨学生にGRIPSが提供するMEPは、マクロ•ミクロ経済学、計量経済学、金融をはじめとする分野での経済理論の厳密な基礎に基づいています。これらのコースに加え、政策立案に関する経験豊富な教員による応用コースとケーススタディがあります。もう一つの側面は、GRIPSがアジア地域に持つ幅広い同窓生ネットワークです。あらゆる国に「GRIPSファミリー」の一員がいます。最後になりましたが、GRIPSは留学生に最適な環境を提供するということにかけては30年の経験があり、スタッフは全員英語を話します。GRIPSの環境は極めて国際的なのです。

有吉教授 (一橋大学): 一橋大学は社会科学における我が国で最高峰の大学の一つであり、質の高い教員を擁しています。JISPA奨学生が履修する当校のAPPPは、先程から何度か申し上げているとおり大変小規模なプログラムです。大きな大学やプログラムには多様な講義があり、多くの専門性を持つ大人数のスタッフがいます。しかし、当校には小規模なプログラムだけにしか提供できないユニークな利点があります。当校の教育は極めて中身が濃く、各講義の受講生の最大人数はわずか15名程度なので、さまざまな交流ができます。先ほど申した通りプログラムの2年間を通じてアカデミック・アドバイザーが各奨学生に付きます。アドバイザーは修士論文作成から研究方法まで学業上の課題についてガイダンスを与えます。こうした緊密な交流と指導体制により、学生は理論基礎から、応用・出身国への政策インプリケーションの見地まで質の高い論文が書ける環境に置かれます。恐らくプログラム期間中の学生の勉強時間の四分の一から三分の一は論文作成に当てられ、それにより一橋大学における勉強の極みに達すると言えます。他の大規模プログラムと違い当校は沢山の科目を提供せず、経済学のコアとなる科目と経済学の政策立案への応用に関する特定の科目に絞っています。教えるのは当プログラム教員と外部の専門家ですが、その誰もが確固たる理論的背景を有しこの分野で経験を積んだ専門家です。

当校のプログラムは規模が小さいおかげで学生の間には生涯続く強く深い絆が生まれます。こうした国を超えた絆は中央銀行や政府の国際会議では極めて大きなメリットとなります。一橋大学の特徴は学業と経験の濃さと言えるでしょう。

小谷教授 (IUJ): IUJの特徴と強みはその立地にあると言えるでしょう。宿舎をはじめとする全施設はキャンパス内にあります。その結果、学生は教員の一日24時間の予定ですら全て知っているほどです。夜11時、あるいは真夜中でも学生は相談するために私を訪問できます。これは学生がいかに緊密かつ柔軟に教員とコンタクトできるかの一例に過ぎません。さらに、JISPA奨学生の１人から、IUJ留学時は生涯で最も勉強した時間だったと聞いたことがあります。浦佐周辺地域はいわゆる雪国であり、豪雪地帯として有名です。雪が降ると学生にできるのは勉強と交流活動しかなく、こうしたIUJのユニークな環境のおかげで奨学生は勉学に集中できるのです。

教育という見地で見ると、JISPA奨学生は定量分析や解析のスキルに関心を持っています。教員の指導のもとに、奨学生は難易度の高いトピックを選び、質の高い論文を書きます。論文の中には博士課程の水準に到達しているとみなされるものもあります。当然のことながら当校は定量分析と解析のコースを多く用意しています。

西沢教授 (東京大学):東京大学の強みを3つの側面からお話したく思います。まずJISPA奨学生が学ぶMPP/IPの教員は、経済学、法学、政治学のトッププラスの研究者で構成されており、その多くは政府の主要な諮問委員会や、あるいは政府高官として政策立案に携わった人々です。プログラムは学術科目から政策問題まで幅広い科目を提供しています。もう一つの強みは教育スタッフとして多くの外部実務者がおり、より実務的な知識と経験を教えています。3番目の点は、将来、官民いずれかの分野で働きたいと考えている、当研究科に在籍する日本人学生との交流です。JISPA奨学生には、官民両分野で将来キーパーソンとなる可能性がある人々との人脈作りの機会が与えられるのです。

6. JISPAはどの程度目的を達成したとお考えですか？

西沢教授 (東京大学): この20年の歴史を通じてJISPAは大きな成功を収めたと考えています。アジア諸国を訪問すると、どこに行っても政府高官として大きな責務を果たしているJISPA同窓生に出会うことができます。この事実そのものがプログラムの成功を物語っています。

小谷教授 (IUJ): ええ、確かに当校IUJで学んだJISPA同窓生の多くが早いスピードで昇進していると聞きます。

西沢教授 (東京大学): もう1つ。それぞれに強みを持つJISPA提携大学という取り組みのおかげで約600人の奨学生がJISPAプログラムの下で学び、同窓生はアジア地域の主要な政策立案者として域内に広がっています。こうしたことを個別の大学のみで成し遂げることはできなかったでしょう。提携大学が共同して取り組むことで達成され恩恵が生まれたのです。

レオン教授 (GRIPS): 母国でマクロ経済の政策立案の大きな責務を担うJISPA同窓生の例は数多くあります。一例は旧ソ連諸国です。ここではプログラム創設20周年がテーマになっていることから市場経済への移行国を支援するためにJISPAが創設された時のことを振り返ってみると、同窓生は計画経済から市場経済への移行に貢献しました。最近の一例は、2012年に東京で開催されたIMF-世界銀行の年次総会に、多くのJISPA同窓生が来日して母国代表として参加したことです。そのうちの何人かはオープニング•セレモニーでスピーチを行い、日本で得られた勉学の機会に大いなる謝意を表しました。

有吉教授 (一橋大学): JISPAに関与する日本国内の提携大学が限られていることで、奨学制度に一貫性を与え奨学生の強固な人脈作りに寄与します。他の奨学金プログラムの多くは奨学生に学校選択の自由が与えられることから帰属感は希薄になることが多いのです。JISPAは奨学金制度そのものが一貫性と団結を生む数少ない制度であり、大学の同窓生だけでなく奨学金プログラムの同窓生が生まれているのです。

目的ということで言いますと、JISPAの精神は母国でのより良い政策立案に寄与できる人材を育成するというものです。この点について出身組織や国際会議におけるJISPA同窓生の姿を見ますと、こうした目的や狙いは達成されたという感覚を持って良いのではないかと思います。

7. JISPA候補者にメッセージをお願いします。

小谷教授 (IUJ): 伝えたいメッセージはシンプル。日本の発展史に関心があるならJISPAを受けて欲しいというものです。日本と母国の状況を比較することは皆さんの将来、そして皆さんの国に役立つでしょう。

西沢教授 (東京大学):　JISPAネットワークに加わって、マクロ経済の専門家となり、JISPAコミュニティの専門家としてのアイデンティティを分かち合おうではありませんか！

有吉教授 (一橋大学): もし皆さんが自分の国、そして国民の福祉を向上させたいと強く望み、この目的を果たすために尽くしたいのであれば、JISPAに応募して下さい。JISPAは容易なものではありません。勉強は大変ですが、必ずその努力は後で報われます。JISPAでの1年、あるいは2年にわたる勉強・研究は、後で振り返れば人生で最高の時間と経験となり、また、生涯にわたる友情も築くことでしょう。日本での生活はとても大切なものになると思います。心積もりをして準備しておいてください。

レオン教授 (GRIPS): JISPAに応募しましょう。強い理論的背景を得て今の政策論議を理解し、政策立案におけるベスト•プラクティスの方法を身につけ、母国の人々と国際社会に寄与する発展と福祉により有効な貢献ができるようになります。JISPAは知識と人的資本を高めるための、有意義で必要な投資です。それを通じて我々は政府職員の業績向上に貢献できるのです。

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OAP主催セミナー:2014年3月13日から14日にかけてOAPキャパシティ・ビルディングセミナーの一環として、IMF金融資本市場局 とOAPによる共催セミナー「銀行のストレステスト」が東京で開かれました。同セミナーの目的は、金融セクターの監督だけでなく、オペレーションの知識や規制・監督フレームワークのストレステストの役割について理解を深めることでした。同セミナーには以下4名のJISPA同窓生が出席しました‐リ・シデス氏（カンボジア国立銀行）、アロウン・ブンヨン氏（ラオス中央銀行）、ヴィソン・サイソングカム氏（ラオス中央銀行）、ブイ・ヴァン・ハイ博士（ベトナム国立銀行）。さらに現役のJISPA奨学生たちも招待され、グループディスカッションに参加する機会が与えられ、積極的に議論に加わりました。

JISPA奨学生たちはさまざまなOAP主催セミナーに招待されました。OAPによるカントリー・セミナーは以下の2回行われました：（1）2014年3月26日開催、IMFアジア太平洋局アドバイザー・対インドネシア経済審査団団長デイヴィッド・カウェン氏による「インドネシア：発展と展望」、（2）2014年4月3日開催、IMF北京駐在上級代表アルフレッド・シプキ氏による「中国経済見通しと改革」。また、2014年5月8日はIMFアジア太平洋局地域研究課長ロマン・デュバル氏による「アジア太平洋地域経済見通し：リスクと機会」と題されたセミナーが開催されました。さらに、 2014年5月30日はAPD-OAP共催セミナー「ビジネスセクターの活性化に向けて」が開催されました。同セミナーでは日本の企業部門の活性化に向けた方策について議論されました。IMF財政局課長補佐ルード・デ・ムージョ氏とOAPシニアエコノミストジョバンニ・ガネリ氏によるプレゼンテーション、IMFアジア太平洋局日本担当課長ステファン・ダニンジャー氏を含むパネルディスカッションが行われました。

JISPAセミナーに対する奨学生のコメント: 2014年3月に2つのIMF-OAP主催セミナー、「金融サービスへのアクセス」と「銀行のストレステスト」に参加しました。

3月12日、金融資本市場局課長補佐マーティン・チハック氏は「金融サービスへのアクセス」を講演しました。この講演によって金融サービスへのアクセスとは何か、何故意味があるのか、どのように測定されるのか、そして金融イノベーションとの関連性だけでなく金融安定性との関連性／トレードオフについて基礎的な知識を多く学ぶことができました。私たちが理解を深められるよう丁寧に議論し、辛抱強く質問に答えてくださったチハック氏には大変感謝しています。

3月13日、14日は「銀行のストレステスト」と題されたキャパシティ・ビルディングセミナーに参加しました。このようなタイプのセミナーに参加したのは初めてでしたが、私にとって知識や理解を深めるだけでなく、人的ネットワークも広げることのできるユニークな機会となりました。まず初めにIMF、日本銀行、韓国銀行の専門家たちによる講演を聞きました。次に実践的な課題が与えられ、ストレステストを実施する上で必要な知識や技術をすぐに試すことができました。そしてベトナム、カンボジア、ラオス、ミャンマー等の中央銀行の行員の方々とのグループディスカッションにも参加し有意義な議論ができました。またこのセミナーを通じて興味深いアイデアも提起され、それらは私の論文でもさらに展開させたいと思っています。またセミナーでは多くの専門家や同僚と交流し連絡先を交換する機会があり、今後私が助けを必要とした際に彼らのサポートを得られると信じています。

（ドアン・ゴック・タング氏、2013年～15年、GRIPS、ベトナム国立銀行）

提携大学訪問: JISPA中間評価事業の一環として、4月下旬から5月中旬にかけて委員会メンバーが各提携大学を訪問しました。訪問の目的は大学が同意書の通りに責務を全うしているかを確認し、今後より一層JISPAを向上させるために教員と奨学生双方からそれぞれの見解やフィードバックを得ることでした。奨学生たちは委員会に対し建設的な意見を述べました。

アジアのための日本-IMFマクロ経済セミナー: 2014年3月10日から14日にかけてGRIPSがOAPと共催し第三回「アジアのための日本-IMFマクロ経済セミナー（JIMS）」を開催しました。JIMSは毎年一週間にかけて行われるアジア政府幹部職員向けのセミナーで、現行の政策に関してディスカッションするフォーラムとして機能しています。本セミナーではOAP所長オッド・パー・ブレック氏が世界経済とアジア経済の見通しに関するプレゼンテーションも盛り込まれました。今年は20ヶ国から30名の当局者が参加し、そのうち2名:ラシュファ・マリヤム氏（モルジブ金融管理局）とマームドフ・ウルグベク氏（ウズベキスタン中央銀行）はJISPA同窓生でした。

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1. JISPA修了後の経歴を簡単にご紹介下さい。JISPAの体験はキャリア形成にどのように役立ちましたか？

私は1996年に日本-IMFアジア奨学金プログラム（JISPA）で埼玉大学大学院政策科学研究科（GRIPSの前身機関）にて政治学修了 した後、ラオス中央銀行に再び入行し調査局で働きました。当時の主な仕事は、関連省庁との調整を通じて、IMFがラオス政府に対し供与した拡大構造調整ファシリティー（ESAF）の導入をモニタリングすることと金融政策の策定に貢献することでした。

フルブライト奨学金プログラムで米国のブランダイス大学国際経済大学院にて国際経済・金融学修士号を取得した後、2000年から2004年までワシントンD.C.にある国際金融公社（IFC）中小企業局でオペレーション・アナリストとモニタリング・オフィサーとして従事しました。この間に私は、中小企業のキャパシティ・ビルディング強化のためIFCが資金提供をしている技術支援（TA）プログラムの設計やモニタリングをする仕事に携わりました。「中小企業能力開発ファシリティ」と「インドネシア企業開発ファシリティ」といったTAプログラムです。世界銀行グループの中小企業データベース・システムを設計するチームを指揮しました。

ラオス中央銀行に戻った後、2004年から2007年の間3つの部署に配属されました。銀行業務局では外貨準備管理課長を務めました。国際関係局ではASEAN、EU、WTOとの銀行協調プログラムを担当しました。金融局では副局長として外国為替の監視とラオスキープの利用の推進を任されました。

2008年から2010年はラオス中央銀行の主要職員10名の1人として特命を受け、ラオスの資本市場の創設準備に携わりました。2009年にラオス証券取引所（LSC）とラオス証券委員会（LSCO）が開設・設置された後、私は2010年にLSCの事務局局長に任命され、2011年からはLSCOの最高責任者を務めています。

JISPAプログラムは、私のキャリアパスの第二ステップへと導くもので、市場経済メカニズムに触れる最初の扉であったと考えています。JISPAで学んだ市場経済の概念を踏まえ、私はその次の修士課程で学ぶべき分野を特定し、ラオス中央銀行の経営陣の支援を受けながら自分のキャリアパスを見出すことができました。これらの経験は証券市場の監督と発展に取り組むという現在の私の職務に活かされています。

¹ JISPAプログラムは設立当初学位プログラムではなかったため、1993年から1995年の入学者には修士号は授与されませんでした。

2. 日本に関係がある仕事やアジア地域の協力関係の仕事をされたことがありますか？その場合にはその仕事の内容と、あるいはそれがどんな経験だったかをお話下さい。

国際関係局ではASEANとASEAN+3との協調、とりわけ「アジア債券市場育成イニシアティブ」に大変な努力を注ぎました。ラオス資本市場の開設準備期間中、私はJICAの支援による研修のためのTAプログラムを通して日本と協力する仕事に携わりました。私の当時の職務は日本人の専門家たちと共に研修のニーズやトピックを特定し、研修プログラムを組むことでした。

証券規制当局を代表して、最近私はラオスの証券を海外の証券規制当局と関係付けるため地域協力に積極的に取り組んでいます。その結果、LSCは中国、ベトナム、タイの証券規制当局と協力および情報交換に関する覚書（MOU）に署名しました。私たちはマレーシア証券委員会と密接に連携しており、香港の金融当局とも協調し始めました。そして時々私たちは韓国金融監督院（FSS）や韓国法務部による研修や助言を受けます。また私はASEAN資本市場フォーラムに参加し、金融商品がよりクロスボーダー化し専門家が他のASEAN諸国の証券規制当局とより協力し合えるよう、金融商品やビジネス慣習の調和について考察しました。

地域内で債券市場の育成を促進させるASEAN+3のイニチアティブの一つに、ラオス政府への債券市場を育成する技術支援（TA）があります。このTAプロジェクトでは野村総合研究所主導により社債発行に関するLSCの規制を起草しており、今年中にLSCの承認を得る予定です。私の役割は職員が野村総合研究所と連携するために必要な分野を特定し、導入を監督し、TAチームにフィードバックすることです。

3. ラオス証券取引所事務局局長に就任されました。局長の仕事を簡単に説明し、（もしあれば）直面している懸案事項について教えて下さい。

証券法によると、LSCはラオス管轄権内での証券取引の開発政策と監督施策を策定するための証券規制当局であると定義されています。LSCは日々機能している機関ではなく、LSCOによって提案される主な課題や規制を承認するため四半期毎に関係者が集います。したがってLSCOが日々証券市場を監督しています。現在LSCOは6部署で構成され約50名の職員が働いています。LSCOの任務は、証券の発行承認とモニタリング、証券仲介業者設立のライセンス供与および監督、証券取引所の業務のモニタリング、証券取引上で発生した争議の対応、証券取引に関連する調査の実施等があります。LSCOが有効な監督機能を保つために、私たちは証券市場の公平性、透明性、効率性を確保しながら市場の発展、成長を促進できるよう監督手段に関する規制をたくさん作らなければなりません。これらの任務を踏まえ、LSCOはこの4年間で資本市場が取引可能となる基本的な開設条件を整えました。ラオス資本市場は以下のように構成されています‐証券規制当局としてLSCとLSCO、ラオス証券取引所（株式市場）、証券会社4社と海外の証券会社1社の駐在員事務所（野村證券）、現金決済のための国内商業銀行3行、証券市場取引に関連する監査業務を行うためLSCに登録された監査法人3法人（E&Y、PwC、KPMG）、上場会社3社。私たちは証券法を整備し20を超える規制やガイドラインを策定しました。

それに応じて私はLSCO最高責任者、LSC事務局局長としてLSCOの全活動における責任を負い、オフィスで指揮を執り、LSCOの年間活動計画を立ててLSCの承認を得られるようLSCに提案することに重点的に取り組み、計画の導入のためにLSCOの職員を率い、LSCに報告し、他の関連省庁や機関と連携し、他の証券規制当局や国際機関との連携を先導しなければなりません。

私たちは人材不足、資本市場の概念に対する理解不足、企業が証券を発行できる条件の不足、支援者からの技術支援不足等さまざまな課題に直面しています。これらの課題に加え、私が感じている最大の課題は、国内資本市場が経済発展と貧困削減に効果的に貢献するために健全に持続的に成長できるよう、発展の牽引役として且つ監督機能として証券規制当局の役割のバランスを図ることです。

4. ラオス経済の見通しと政策課題について教えて下さい。

政府の政策に基づき、私は今後5年間のラオスの経済成長率は7-8パーセントを下回ることなく成長し続け、ラオス人民民主共和国は後発発展途上国から脱すると予測しています。エネルギー業、金融業、製造業、農業、建設業、観光業等多くの経済部門が前向きな見通しを示しています。WTO加盟国として、またASEAN経済共同体加盟への準備を通じてラオスの生産者が拡大し生産物を輸出する機会が増えてきています。しかし同時に多くの課題、とりわけ競争力を高めることに取り組まなければなりません。

5. 日本での学生時代、専門や研究上の関心、生活体験について簡単に教えて下さい。

太陽が昇る国、日本は私が人生で最初に市場経済について学んだ国でした。最も興味深かった授業はミクロ経済、マクロ経済、産業開発に関する日本の教訓でした。埼玉で過ごした約10ヶ月間、私は充実した日々を送り生活環境や文化に問題なく馴染むことができました。多国籍なたくさんの友人と共に、学業面で助け合うだけでなく互いに仕事経験を共有し、日本の文化に触れました。私はホームステイ・プログラムに参加し、いくつかの史跡や京都を訪れ、日本食を楽しみ、着物を着てみました。また日本語の授業も楽しみ、『花』等日本の歌も習いました。

6. 現在のJISPA奨学生と奨学生志望の人たちにメッセージをお願いします。

全てのJISPA志願者が選ばれ入学できるわけではありません。ですからもしプログラムに参加できたのであればどうか最大限学ぶことを心掛けてください。経済学、ファイナンス、ビジネス理論を学ぶことは必須ですが、それらを日本の経験や実践に当てはめることはあなた自身のキャリアパスを開くだけでなく自国のためにもなります。なぜなら日本の開発的側面は自国の状況に応用することができると考えるからです。

7. 日本に対するメッセージをお願いします。

今日の私の職務上、資本市場の発展に関してラオスと日本の協力関係が今後も継続することを望んでいます。現在日本人投資家はラオス証券市場の外国人投資家のトップ5に入っており、今後この流れは拡大すると期待しています。ラオスの経済発展には、2020年までに後発開発途上国から脱することを目指すラオス政府の正しい政策と断固たるコミットメントと共に、かなりの財源が必要です。日本を始めさまざまなところで得た強みや知識を踏まえ、私はラオスの資本市場の発展を促進できるよう国際基準に照準を合わせながら規制体制を改善させることに尽力します。この目標を実現するために、日本は証券ビジネスや格付機関、証券保管（カストディー）サービス、証券商品開発などの面でラオスの資本市場の発展に大きく貢献できると信じています。

8. 他に伝えたいコメントがあったらお願いします。

このニューズレターの発行を継続し、もし可能であれば同窓生が集い経験を共有できるような同窓生イベントをもっと開催してほしいです。

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1. 日本に留学する前の職務内容について教えて下さい。

私はウズベキスタン国家税務委員会の監査人として7年間従事し、日本に来る前の直近3年半は同機関の部署の責任者を務めていました。主な職務は企業監査を担当するチームの調整と管理でした。私自身も監査を行い、税金の計算や免除に関して関連文書やデータを審査しました。さらに私は納税者や他の金融機関に対し、広報活動や税金に関するカウンセリングや教育、監査、審査について紹介し説明するためにセミナーを開催しました。

2. 日本で勉強しようと思ったきっかけは何ですか？また、JISPAへの応募動機は何ですか？

私のキャリアがある程度までのところに達した時、政府や企業が直面している問題を自分で分析するにはもっと学術的な知識が必要であるという結論に至りました。JISPAを選んだ理由は、将来母国の政策を立案する際に有用となる経験や知識を深めるためにはJISPAが海外の学位を取得し学問を学ぶ機会を得る最良の場であると考えたからです。

3. 何を勉強していますか？

現在私は日本企業の運転資金管理、収益性とソルベンシーの関係、需要・供給ショックに対する反応について研究しています。さらに今後、ウズベキスタン企業について同様の研究を行うつもりです。

4. 日本での体験話（楽しかった／悲しかった／驚いた／感動した、から好きなエピソードをひとつ）

価値のあるものを発見したり、日本の親切な人々の支援を受けたりなど、これまで嬉しく感じたことはたくさんあります。その多くは日本の教育や安全性、日本の人々の誠実さや規律に関連することです。最も興味深かったのは、以前に一度私の家の近くの交番から電話を受けたときのことです。私の名前を確認した後、電話口の警察官が私の息子が一緒にいるからすぐに交番に来られるかと聞きました。なぜ息子が交番にいるのかと大変心配に思いました。当時日本語を電話で聞き取る自分の能力が乏しかったことは認識していたので、理由も聞かずにすぐに交番へと急ぎました。私を電話で呼んだ警察官と息子は、50代の日本人男性と一緒に私を待っていました。そしてその警察官は、息子が公園で遊んでいる最中に携帯電話を見つけて交番に届けてくれたことを話してくれました。そのおかげで警察は携帯電話の所有者を見つけることができたので、そのお礼を言うために私を呼んだのでした。私は息子のとった行動にとても嬉しく思いました。このような場面は以前にもたくさんありましたが、唯一の違いと言えば私たちはいつもその「50代の日本人男性」の立場にいたことでした。この機会に、日本で驚かされることをもう一つ申し上げたいと思います。それは食事の前と後に「いただきます」、「ごちそうさまでした」を言う日本の習慣に関して、これまでそれらを言わない日本人に出会ったことがないということです。

5. JISPA関連の体験話・感想（Orientation Program、セミナーやIMF/OAPエコノミストとの交流イベント等）をお願いします。

私はJISPAセミナーや他のOAP主催セミナーがとても好きです。なぜならセミナーには通常学者と政府関係者の両方が招待されているからです。私は先進的な考えを持つ学者たちがどのように問題にアプローチするか、そして政策立案者たちは政策を導入する際にどのように彼らの考え方を解釈するのかを学ぶためにセミナーに足を運びます。JISPAセミナーは、実際の経済実態に対する学術的アプローチと実践的アプローチを区別する大変良い機会となりました。もう一点、私が学んだとても重要なことは、先進的な考えを持つ大勢の聴衆の前で明確に理解しやすく有益なプレゼンテーションをする方法です。

6. JISPAで学んだことを将来どのように本国での業務に活かしたいですか。

私が日本で学生生活を送っている間に学んだ最も重要なことは、いかなる経済、社会、財政問題も学術的アプローチで解決すべきだということです。いかなる新しい政策も実証的分析と理論的分析を経て導入されるべきです。ウズベキスタンには途上国として解決、発展すべきさまざまな課題が山積しています。私がまず貢献できることは、私の部署が内外の学術機関と強力な関係を構築するよう急がせることでしょう。

7. 将来の夢、キャリアビジョンは何ですか？

私は将来ウズベキスタンの政治に関わりたいと思っています。もし前職に戻ったとしても、私が貢献できる範囲は自分の部署ないし同僚のみでほぼ限られています。政治に進むことを選べば、私の経験をウズベキスタン経済全体に活かせる機会が広がると考えています。私はウズベキスタンが先進諸国や国際機関とより高いレベルで接触し、自国がこれらの国々や機関との二国間関係を享受できるようになってほしいのです。私の夢は自国のトップリーダーの一人になることです。私が貢献できるもう一つの機会として、しばらく国際機関で勤務しその経験を活かし自国の政策立案を強化することも考えられます。

8. 好きな言葉は何ですか？

「五つのことの前にある五つのことを生かしなさい：歳をとる前の若さという有益なものを生かしなさい、病気になる前の健康という有益なものを生かしなさい、富を失う前の裕福という有益なものを生かしなさい、多忙になる前の余暇という有益なものを生かしなさい、死ぬ前に、人生という有益なものを生かしなさい。」

¹ 訳文は以下のウェブサイト（イスラミックセンタージャパン）を参照：http://islamjp.com/library/jitkh140228.htm

9. 日本へのメッセージ

勤勉な日本の人々は素晴らしい人生を送って当然です。私は彼らの能力が海外にも向けられることを願います。

10. 他に伝えたいことはありますか？

誰かに感謝の意を表するのはいつも最後になります。私の日本での生活は全面的にJISPAが支援してくれています。JISPAの支援なくしてはこの機会を得ることはできませんでした。 とても感謝しています。私が日本と母国ウズベキスタンとの経済連携をより深めることができれば、その時こそが日本に対して私が最大限謝意を表するべき時だと考えています。

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