コロナ後の世界における財政政策
IMF Blog, July 13, 2020
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- コロナ後の世界における財政政策
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- Authors: Vitor Gaspar, Gita Gopinath
- Published: July 13, 2020
緊急対応の現状と規模
- 新型コロナウイルスの世界的な流行を受けて、過去に例を見ない財政政策対応が現在までに講じられており、その規模は世界全体で11兆ドルに迫っている。
- 「財政モニター」の国別新型コロナ対応財政措置データベース(50以上の代表的なサンプル国を対象)によれば、これまでに世界で行われている財政支援は、納税猶予や現金給付など歳出・歳入に直接影響があるいわゆる真水の対策と、公的部門による融資や資本注入、政府保証など予算外の支援とがほぼ半分ずつとなっている。
- 世界全体の公的債務水準は対GDP比で100%を超えて過去最高に達しており、第二次世界大戦後のピークをも上回っている。
「大封鎖」後の活動再開と財政政策の役割
- 公衆衛生は最優先事項であり、保健リスクを軽減する政策は景況感と信頼の回復、経済活動と雇用の後押し、財政の負担軽減につながる。
- 感染拡大防止措置を早期に対象を絞って実施することにより、全国的なロックダウンに比べて経済・財政コストを大幅に抑えることが可能となる。
- 保健と社会・経済的影響に関する正確かつタイムリーで包括的なデータが、流行の発生を監視して迅速に対応し、新たな感染の波への対処可能性を人々に与えるために必要不可欠である。
- 財政政策は、危機からの安全かつ持続的な脱却が確かなものとなるまでは景気を下支えし柔軟であり続ける必要がある。
- 当初の予定よりも早く財政の引き締めに転じることは景気回復の腰折れリスクを高め、将来の財政コストを増加させる。
- 政策担当者は、感染の再流行に伴う保健・経済・財政面でのリスクを管理するために、柔軟な調整が可能な緊急対応計画を準備しておくべきである。
- 対象を絞った支援提供の遅れを防ぐ上では、新世代の自動安定化装置が必要となりうる。
- 危機による構造的変化に対応して、支援は雇用の維持から「人への支援」へと移行すべきである。
- 流動性は不足しているが支払い能力はある企業と、支払い不能に陥った企業を区別する必要がある。
- 各国政府は、転換社債を活用したり、戦略的でシステム上重要な企業を対象に資本注入(さらには一時国有化)を行ったりして追加措置を講じることができる。
- 過剰債務問題を解決し、経済に長期にわたる爪痕が残らないようにするため、法的メカニズムの改善に向けて迅速かつ断固たる行動をとることが必要となる国が多い。
債務持続可能性と中期的財政運営
- 2020年1月の「世界経済見通し(WEO)」における予測と比べて、2020年の財政赤字は先進国では5倍以上に拡大し、新興市場国でも倍以上になると見られている。
- その結果、公的債務の対GDP比も先進国と新興市場国でそれぞれ26ポイント増、7ポイント増と異例の急増となる。
- 危機によって予備的貯蓄が増加し投資需要が低迷する中、借入コストは歴史的に低い水準にあり、今後も長くその状態が続くと予測されているため、各国政府はその恩恵を受けることになる。
- 公的債務は、低金利と景気の力強い回復というベースライン予測を背景として、(米国と中国を除き)2021年には安定化すると見られる。
- それでも注意が必要であり、債務水準と資金調達能力に関しては国によって大きな違いがあり、見通しは高い不確実性を伴っている。
- とりわけ新興市場国とフロンティア市場国にとっては、3月に見られたように、借入コストが急上昇する可能性がある。
- 債務水準が高く成長率が低かった国では、持続可能な財政収支の回復に向けた道筋を確実にすることが重要である。
- 中期的な歳入確保と信頼回復のための政策例:
- 租税回避の最小化
- 一部のケースにおける累進課税の強化
- カーボンプライシング
- 支出の効率性向上(化石燃料補助金の廃止等)
- いかなる計画についても透明なコミュニケーションを行うことが、過渡期にあるソブリン債市場の潜在的なボラティリティを抑制する上で有用である。
- 国際機関は国際流動性へのアクセスが市場の自己実現的なパニックによって寸断されないようにしなければならない。
- 国際社会は、医療システムを支えライフラインを維持するための財源を欠く低所得途上国が、譲許的融資や場合によっては贈与にアクセスできるようにする必要がある。
- すでに72か国がIMFの緊急支援を受けているが、さらに多くの二国間・多国間支援が必要となるだろう。
- より貧しい国に対しては、G20の債務返済猶予イニシアティブを含め、債務救済の継続が必要となりうる。
コロナ後の世界における中長期的な財政の舵取り
- 有効なワクチンと治療法が広く利用可能となった際に「コロナ後の世界」へと移行し、「大封鎖」から真に脱することができる。そのためには、国際的な連帯によって先進国でも発展途上国でもすべての人が治療とワクチンにアクセスできることが前提である。
- その段階で各国政府は強靭かつ持続可能で包摂的な成長へと財政政策の舵を切る必要がある。
- 政策優先事項:
- 貧困と格差の拡大に対処する。
- 危機によって露呈した構造的な脆弱性に取り組む。
- 将来のショックへの備えを固める。
- 医療制度の強化や社会的セーフティネットとデジタル化により多くの資源を充当する。
- よりグリーンで雇用を潤沢に生み出すイノベーション主導型の成長を促進するような、気候に配慮した投資を積極的に支援する。
- 財政政策は、医療と教育への普遍的アクセスを目的とする支出や累進税制を通じて格差にも対処する必要がある。
- 将来の不確実性を認めつつも、構造変革を促進し、格差に対処し、よりグリーンな未来への移行を支援する柔軟な財政政策の重要性は変わらない。
執筆者
- ヴィトール・ガスパール
- ポルトガル国籍でIMF財政局長。
- IMFで勤務する前には、ポルトガル銀行で特別顧問など政策関連の要職を歴任。
- 2011~2013年にはポルトガル政府の財務大臣。
- 2007~2010年に欧州委員会の欧州政策顧問局長、1998~2004年に欧州中央銀行の調査局長を務めた。
- ノーバ・デ・リスボン大学で経済学博士号とポスト・ドクター学位を取得。また、ポルトガル・カトリカ大学でも学んだ。
- ギータ・ゴピナート
- IMF経済顧問兼調査局長。ハーバード大学経済学部を公職就任のため休職中。
- ハーバード大学では国際学と経済学のジョン・ズワンストラ教授を務めている。
- 最新の『Handbook of International Economics』の共同編集者。
- 2016年から2018年はインド南西端ケララ州の州首相経済顧問。G20関連問題に関するインド財務省賢人諮問グループのメンバー。
- アメリカ芸術科学アカデミーと計量経済学会のフェロー。ワシントン大学よりDistinguished Alumnus Awardを受賞。2019年にフォーリン・ポリシー誌が選ぶ「世界の頭脳100」に選出。
- 1971年にインドで生まれ、現在はアメリカ市民と海外インド市民。デリー大学で経済学学士、デリー・スクール・オブ・エコノミクスとワシントン大学で修士、2001年にプリンストン大学で経済学博士号取得。
出典: IMF(ページ本文の内容に基づく)